十四時になる少し前、約束のカフェに行くと相手──巳神はもうテーブル席で座っておりお冷を飲んでいた。遅刻しないように来たつもりだったが、一体何時頃に来たのかと思いつつ巳神と対面するように座る。
「……すみません遅かったですかね」
「いえ、先程来たので」
巳神はにっこりと琥珀を見て笑う、これ以上なにも聞かないでおこうと思いお互いに店員に注文をした。相手が巳神なのでなにか薬を盛られたら困るためお冷をずっと自分のそばに置いていた。先に頼んだ飲み物が来て、飲みながら巳神と話す。話すと言っても琥珀の親友の話だが、ふと、巳神が前漏らした彼の親友の話を聞こうか迷っていた。が、聞いてもいいものか、と考えていると巳神が口を開く。
「なにか俺に聞きたいんですか?」
「……。………巳神先生の親友さんの話聞いてもいいものかと思いまして」
「聞いてもいいですよ」
まさか相手からそう言ってくるとは思わなかったが、相手の性格などを考えるとそうでもないのか、と琥珀は思いそのまま話を聞くことにした。目の前で死んだと淡々と話す巳神をじっと見る琥珀。前、琥珀は巳神が寂しそうだと言ったことがあるが、今思うと寂しいという言葉では納まらない気がした。もしかしたら、自分を許せないのかもな、なんて思ったが的はずれな気がしたため黙った。
「……巳神先生はその親友さんの事、好きだったんですね」
「……今は嫌いですけどね」
琥珀はもし親友が死んでると分かった時、相手と同じように嫌いと言うのだろうか、と考え込んだ。多分その時がきたら悔しい気持ちや憤り、色んな感情が出てくるのだろう。恐らく相手もそう思ったかもしれないなと琥珀は思った。
「残された人達の事を考えない大馬鹿者ですよ」
「……それは分かります、探すこっちの身にもなって欲しい」
アイツも分かってるだろうかと必死に探している親友の顔を思い浮かべる。その時、注文した軽食が運ばれてきた。琥珀が受け取ろうと飲み物から目を逸らした、逸らしたと言うが一瞬だったが、巳神がなにか琥珀のコーヒーに入れたが琥珀は気づかなかったが、軽食を受け取った後、思わず相手を睨む。
「……なにかしました?」
「いえ別に」
巳神はそう笑っていうとコーヒーを飲む。琥珀は怪しんだが流石に一瞬で薬を盛るのは無理だろうと軽く考えそのままコーヒーを飲んだ。コーヒーも味が変わってる様子がなかったため、やはり何もしていないのかと琥珀は思った。
琥珀は気づかなかった、琥珀がコーヒーを飲んだ時、巳神の口元がニヤリと笑ったのに。そしてカフェを出る頃に体に痺れが起こることも今の琥珀は気づくはずもなく、ついでに薬をもらっておこうなど呑気に考えていた。