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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
    よその子さん多め

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    ちょこ

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    エガキナ

    よその子さんお借りしてます

    琥珀はゆっくりと目を開けた、目に映ったのは白い天井につんと鼻に入った薬品の匂い。窓からは青空ではなく夕焼けの光が入り、腕には点滴が繋がれていた。ゆっくりと起き上がるとそこは病室で、四人部屋だったがその部屋には琥珀しか居なかった。
    なぜ病室にいるのか、それは分かりきっていた。没討伐の時発作を起こし、その時に居たツクリテから連れ出され、いつの間にか気を失ったのだ。そして病院に運ばれここにいるのだろう。あの場所で一人で置き去りにさせてしまった親友の背中を思い出して思わず口元を押さえた。親友──創はどうなったのか、慌ててベッドから起き上がろうとした時、病室のドアからノックの音が聞こえた。
    「……はい」
    看護師だろうかと思い、琥珀が恐る恐る返事をするとゆっくりとドアが開く。開けた相手は三十代後半のスーツを着た男性だった。面識がない男性で琥珀は怪訝な顔をするが、相手の手に持っていたある物をみて思わず固まった。
    それは創のコートだった、いつも創がよく着ており、どこにでもあるようなデザインだが創のために作られたように思えるくらいよく似合っていた。あの時確かに着ていたコートだ、自分が親友の着ていたコートを見間違えるはずがない。
    なぜこの男性が持っているのか。ふと、頭の中で嫌な予感が頭を過ぎってしまった。その嫌な予感を振り払いたかった、けれど、一度考えてしまった脳では中々消えてくれなかった。男性は琥珀のそばまで来るとコートをそっとベッドに置いて話し始める。
    「……初めまして、僕は創務省の猫柳八重って言います。君が灰野琥珀くん? 気分はどうですか?」
    「……大丈夫、です。あの、このコート……創は……!? 創はどうなったんですか!?」
    琥珀は思わず八重に掴みかかるように腕を掴み大声を出した、先程から嫌な予感が消えないのだ。無事だと相手の口から聞きたかった、けれど八重の口から出た言葉は琥珀が一番聞きたかった言葉ではなかった。
    「……我々創務が来た時には没と一人で戦闘していた江波戸創、そして彼のニジゲンの姿は無かったんです。その没の被害状況はそれ以上聞かなかったので、彼が討伐しただろうという状況判断をしました」
    「………」
    「……そのコートしか残ってませんでしたよ。……なので……」
    「嘘だ!」
    彼とそのニジゲンはもう居ないでしょう、残念でしたね。と八重が言おうとした時、琥珀が叫んだため八重は琥珀の顔を見る。琥珀は涙を溜めて睨みつけるように八重を見ていた、掴んでいる腕を震わせながら。声を張り上げるように叫びながら言った。
    「嘘だ、嘘だ! 死んでない! ……アイツが死ぬわけ、ない……」
    「……ですけど」
    「誰もアイツが死んだ所見てないんだろ! 姿はなかったってことは死体も見つかってないってことだろ! 死んだ所を見ていないのにコートしかなかったからって勝手に決めつけるな! ……もし、もし死んだって言うなら……俺のせいだ……」
    琥珀は肩を震わせながら泣いた、脳内に創の顔が思い浮かぶ、最後に見た背中もだ。自分が見殺しにさせてしまった、罪悪感が身体中を蝕む。八重がそう言いかけたと言うことは、恐らく認可も創は死んだと考えているだろう。死んでるわけがない、嘘だ。悔しくて唇を噛み締めた時、八重がボソリと言った。
    「生きてますよ」
    「……え……」
    「確かに俺は君の親友くんの死体も何も見ていない。君の言うことも最も、まぁ他の人からしたら現実を見れない奴と思われそうですけど……。……生きてると信じるなら、俺も信じてみますよ」
    「……」
    なぜ初めてあった相手の言葉を信じるのだろう、琥珀は猫柳八重という人物がどんな相手なのかまだわかったわけではない。正直今何を考えているのか読めない、けれど、先程の言葉は嘘だとは思えなかった。同情で言ったようには聞こえなかった。琥珀はそっと手を離し、ベッドに置かれたコートをそっと手に取る。琥珀が何も言えずにコートを見ている隣で仕事が終わったと思ったのか病室を出ようとする八重、琥珀は思わず八重の腕をまた掴んだ。
    「え、なんです?」
    「……お願いがあります、俺に剣術を教えてください。貴方、マキナは刀とかそこらあたりでしょう」
    「えっなんでわかったの……そういう事なら僕よりもっといい人居ますよ……?」
    創のコートを受け取る時、八重の手のひらにタコがあったのをたまたまみたのだ。丁度剣を握る辺りにできる所、琥珀のマキナは剣のため大体同じところに出来るのだ。もしかしたらこの人も、と琥珀は思った。それに、この人なら教えてくれる、そう確信があった。
    「貴方が創のコートを持ってきたんだ。……はいって言うまで離すつもりはありません」
    「……はぁ、分かりました。僕でよければ」
    琥珀がそう言って数秒、八重は観念した表情で返事をした。琥珀はそっと手を離す、お礼を言ったその時勝手に涙が流れてきた。突然涙を流し出した琥珀にぎょっとした表情で八重は思わず慌てだした。
    「え、ちょっ……!? 大丈夫ですか!? えっ!? これ俺が泣かしたってことになります!?」
    「……あ、いや、大丈夫、です……。……すみません」
    琥珀は涙を拭うようにゴシゴシと手で擦る。こうやって泣くのも自分が弱いからだ、と琥珀はそう感じた。そう、自分が弱いから、あの時発作を起こしたから、母親を思い出して没討伐がままならなかったなんて言い訳にもならない。そう、これから自分は強くならなければならない、強くなって、創を見つけるために。こうやって泣いてる暇なんてない、泣くのは弱い証拠なのだから。
    琥珀は突然ベッドから降りて立ち上がる、立ち上がった時勝手に点滴の注射を引き抜き、そして創のコートを羽織った。サイズが少し大きくてすっぽりといった感じに納まったが、袖を通す気にはなれなかった、袖を通すにはこのコートは重すぎる。そして八重に向き合う琥珀、起きてわかったことだが相手は自分より身長が高かった。
    「突然泣いてすみませんでした、では早速お願いします」
    「えっ!? ダメですよまだ!? 休んでくださいよ! というか勝手に点滴抜いて怒られますよ!?」
    そう言って琥珀をベッドに戻そうとする八重を止める琥珀。休んでる暇なんてないのだ、そもそも自分は怪我なんてしていない。その時間すら惜しいくらいには早く何とかしたかった。
    「休んでる暇ないので、お願いします」
    「……悪化しても知りませんよ、はぁ……病院の先生には伝えておきますから。準備終わったらロビーに来てくださいね……それにしても点滴抜くなんて若い子ってすごい……」
    そう言ってブツブツと何か言いながら病室をでる八重。その後ろ姿を見送った後、病室の窓を見た。窓の外の風景はすっかりと夕日が綺麗に街を染めていた。その外を見ながら琥珀は呟く。
    「……絶対見つけるから」
    コートをそっと握り、ベッド横にあった自分の荷物を持って病室を出た。
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    ちょこ

    DONEダミアさんお誕生日小説
    ダミアさんお借りしました!お誕生日おめでとうございます!
    モンブラン「ダミア、お誕生日おめでとうございます」
    「おー! ありがとな!」
     レイフが借りている拠点と言っていい住まいにダミアを呼び、目の前にケーキを出す。ダミアと前もって連絡を取っていたため、こうして呼べたのだ。ケーキはレイフの手作りだ。本当なら、料理も出そうかと言ったのだが、間髪入れずに断られてしまった。今度こそ上手く作れるような気がしたのにな、とレイフは残念そうに思いながらも、ダミアを見た。
    「このケーキ……モンブランか?」
    「そうです、アマロンを使ってます」
    「へー! 王様って呼ばれてるやつじゃん!」
     ダミアは感心したようにケーキを眺めた。アマロン、様々な栗の中で特段に甘い栗の事だ。身も大きいのだが、育てるのが難しく、しかも、大きく育てようと魔力を使うと、すぐに枯れるという性質を持っていた。なので、完全な手作業、時間をかけてゆっくりと育てる。そのため、栗の中の王様、という意味で【アマロン】と呼ばれるのだ。一粒だけでも驚くほどの高額で取引される。その高額さに、一時期偽物のアマロンが出回るほどだった。偽物のアマロンと区別を測るための道具すら開発されるほどに。
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