漢字 琥珀は原稿の合間にカナタの所に行きリインに勉強を教えていた。この前は算数を教えたため、今日は国語だった。リインはカナタから文字の読み書きを教えて貰っているからか、簡単な読み書きは出来ていた。カナタから漢字を教えてあげて欲しいと言われていたため、琥珀は漢字ドリルを取り出して机に広げた。
「今日は漢字を教えるからな」
「琥珀とカナタの世界って凄いな、色んな文字があるなんてな!」
「そうだな、簡単な漢字から教えるから」
やる気に満ち溢れていたリインは鉛筆を取り出してお手本通りに書いていく。小学一年生の範囲だからかすんなりと書いていくリイン、それをみて微笑む琥珀。何ページか進んだ時、リインは琥珀に質問した。
「琥珀! カナタと琥珀の漢字知りたい!」
「え? ならまずカナタさんから……」
そういうとノートに琥珀はカナタの名前、【彼方】と書いた。恐らく郵便物で何度か見たことがあるのだろう、リインはまじまじとカナタの漢字を見ていた。
「これ、何度か見た事あるぞ」
「それで【かなた】って読むんだよ。漢字にも意味があって、この漢字の意味は離れた場所や方向の意味でよく使われる」
「んー……?」
「例えば……山の彼方……とか、この意味だと山の向こうって意味合いで取ればいい」
「へぇー……」
この漢字ならリインも簡単に書けるだろう、と思っていた琥珀。琥珀の思惑通り、すぐにリインはカナタの漢字を書けるようになっていた、琥珀に笑って見せてくるリインの頭を優しく撫でる。
「上手くかけてる」
「へへー! カナタに見せるんだ! 琥珀のも教えて!」
わくわくした様子で見てくるリインの隣で自分の名前を書いていく琥珀。琥珀の漢字をみて難しかったからかむむ、と怪訝な顔をした。やはりリインには難しかったようだ。
「これでこはくって読むのか?」
「あぁ、例えば琥の字は虎が死んだ後に石になった……って信じられてた意味がある」
「え! 凄いな!」
「まぁ俺はそんな大層な意味は似合わないが……ほら、これが琥珀」
そう言って琥珀はスマートフォンをとりだし、画像検索でリインに見せた。リインは宝石としての琥珀を見るのは初めてだったからか、興奮したように琥珀に言った。
「すごく綺麗だな!」
「あぁ、厳密には化石だけどな。琥珀は」
リインは琥珀が書いた字を見よう見まねで書いたが難しかったからか最後まで納得のいっていない顔をしていた。
「はい、今日の勉強はここまで」
「また教えてくれよな!」
「あぁ、そろそろご飯作ろうか」
カナタはまだ原稿をしているのだろう、琥珀とリインは片付けをした後に、ご飯作りのためにキッチンへと行くのであった。