ハロウィン ハロウィン前日、リヒトは琥珀と遼貴に教えられながらクッキーを作っていた。作品内でもリヒトは料理ができない描写がされていたせいか、この世界に来ても料理ができなかったが、最近サクリにお世話になっているからと、琥珀と遼貴に頼んで教えて貰っていた。
「でもまさか渡したいとは思わなかったな……」
「えっと、サクリさんはよく手助けしてくれるんです」
「フレイの事は容赦なく無人島に飛ばしてるけどな……」
遼貴は意外そうに言ってリヒトの手元を見た、琥珀と遼貴がみても、リヒトの手つきは危なかっしかった。なんとか生地を作り寝かせた後、型抜きをしていく。
「オバケのでいいだろう?」
「いいと思いますよ」
「可愛いですね」
流石に型抜きは出来るらしく、楽しそうにぬいていく様子を微笑む二人。ふと、琥珀が別の型抜きでぬいている様子に遼貴が気づき、聞いた。
「あれ、それ誰かに渡すんですか」
「ん? あぁ、これはメリーさんに。ほら魔女の帽子っぽいだろ? 遼貴の分もあるから。こっちのコウモリのはエリーさんに。まぁこの前カボチャのクッキーあげたけど……いいかなって」
「なるほど」
そんな会話をしつつ、クッキーをオーブンに入れていく。リヒトはちゃんと出来るか不安そうだったが、オーブンから取り出したクッキーはちゃんと焼けており、三人一緒に味見をした。
「わ、おいしい……」
「ちゃんと焼けてるし、これなら大丈夫だろ」
「後は冷えたらラッピングするか」
「サクリさん受け取ってもらえるといいですけど……」
不格好だし、とリヒトが不安そうに言ったのを二人は大丈夫だから、と励ました。
ハロウィン当日、フレイとリヒトはハロウィンに彩られたら街中を歩く。今日だけは普段の格好でも違和感なく溶け込めるだろうと、特にリヒトの格好はどう見ても仮装だ。リヒトはいつサクリに渡そうか悩んでいた、相手は敵派閥のニジゲンのため、あまり目立たないように渡したい。やはり琥珀の家だろうかと思いつつ、お菓子をくばっていく。
琥珀の家に戻り、フレイは満足そうにお菓子を食べ始めた。
「沢山貰えたな〜! あ、リヒトのクッキーも食べたいや」
「え、う、うん」
「リヒト」
リビングに琥珀が入ってきた、その時琥珀の影からサクリが出てきたのをみてフレイはまたいつものように絡んできた。
「あ! 今日ばかりはお前の格好も違和感ないよな」
「あ……」
リヒトは慌ててラッピングしたクッキーの袋を取り出す。だが渡すのに緊張してしまって吃りそうになった、フレイはまさか、とリヒトに聞いた。
「え、それもしかしてあいつに……?」
「え、えと……」
「なんで!?」
しまった、と琥珀とリヒトは後悔し始める。こうなるとフレイはやんやとサクリに絡むのは目に見えていた。そんな時、サクリが何かをする。すると、フレイがパッ、と消えた。また無人島に飛ばされたな、と琥珀は頭を抱える。
「……サクリ」
「どうせ戻ってくるだろ」
沈黙が走る、リヒトは恐る恐る近づき、クッキーをゆっくりと差し出した。
「あ、あの、えと……ハロウィンなので、あの……クッキー、えっと。……こ、琥珀さんと遼貴さんと作ったので、あの……いつも手助けしてくれる、あの、お礼です……」
ビクビクとしながらも緊張した様子でクッキーを差し出したリヒトに、何も言わずに受け取ったサクリ。受け取ったかと思えば、そのまま琥珀の影の中に消えていった。
「……琥珀さん……」
「大丈夫だから、受け取ったってことは嬉しかったって事だろ。もし嫌ならまず受け取らないだろ」
「……そうだといいですけど」
不安そうなリヒトの頭を撫でる、それでも不安な様子が消えないリヒトに、何か暖かい飲み物を入れるかと琥珀はキッチンへと行った。