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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
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    ちょこ

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    エガキナ
    よその子さんお借りしてます

    とある夢と、懸念した思い  創はここは夢だろうな、とぼんやり思っていた。だが、先程自分がどこにいたのか何故か思い出せない。思い出そうとすると、頭の中に白い霧のような真っ白なモヤが包むのだ。
     まるでそんな事思い出さなくていい、と言っているようで。

     創は周りを見る、どうやら路地裏のようだった。落ちている空き瓶やゴミ、コンクリートで舗装はされているが、所々剥がれている。
     陽の光も入らず、今の時間が昼間なのかわからなかったが、少しの先も見えないほどの闇がそこにあった。

    「あー……?  どこだろここ」
     創は頭をかきつつ改めて周りを見る、そして違和感を覚えた。自分はここに来たことがないはずなのに、どこか知らないとは思えなかった。
     でも、自分は路地裏など歩かない。ならなんで、こんな気持ちが生まれているのだろう。

      ふと、路地裏のとある所を見た。そこは何の変哲もない場所だったが、なにやら赤いシミが壁についていたのだ。そして、脇に置いてあるマントを見て、創は一瞬だけ眉をひそめた。
    「……え、このマント……。カインの?」
     創はマントを手に取る、どこにでもあるようなマントだったが、創は直感的にカインのだと気づく。カイン、自分の作品のニジゲンだ。そのマントは所々赤黒いシミがついていた。
    「……これ、血?」
     なんでこんなものが、と創は目を見開く。カインに何かあったのか?  と。
     ふと、その時、ぼんやりと創は"なにか"を思い出した。カインが自分のマントを脱いで、自分の胸元にあてていた様子を。

    「……?」
     なんだ今の、と創は頭を押さえそうになる。今のは、もしかして三年前の事か?  と。もしかして、この路地裏は。
     あの時は自分はほぼ意識がなかったため、正直に言えばよく覚えていない。けれど、もし自分が考えていることが当たっているとするなら、この路地裏に覚えがあるのは納得がいく。
    「……カインはいないのか?」
     カインがいる様子はなかった、そもそも、ここが夢の中だとするなら、いまここにカインがいないのは納得がいくが、自分一人がここに居るというのは些か不安でもある。

     すると、その時誰かの視線を感じた。創は咄嗟に顔を目線の方へむける。すると、そこに居たのは創が知っているニジゲンだった。
     自分よりも背の低い、青髪で、露出の高い服を着ている女性。いつもだったらヘラヘラとナンパをするのだが、今の状況が状況のためそんな気にはなれなかったが、創はヘラリ、と笑って話す。
    「あれ、こんなところに居るなんて運命?」
    「まだそのような事を言うのだな」

     女性のニジゲン───オプスキュリテは創の事をどこか軽蔑するように見る。創は相変わらずヘラヘラと笑う。
     笑いつつも、どこか背筋が震えるような感覚がまとまりついていた。声が震えてなければいいが、と思いつつ口を開く。
    「えー、酷いなぁ。こんなところに呼んだの、貴方じゃない?」
    「戯言を」

     創は反応が遅れていた、そのせいだろう。突如、創の腹に衝撃と、この世とは思えない痛みが襲いかかった。
     そっと、腹に手を添えると手は血で赤く染っていた。相手に腹を突かれた、とわかった時口からも血が出たが、創はそれでも口角を上げる。ふるふる、と口は震えていたが笑いながら話す。
    「いやー……美女からの熱い抱擁はきついねぇ」
     そんな冗談をいいつつ、腹を手でおさえた。さりげなくそっと、右手は万年筆を取り出して。想像力はないが、夢の中ならレイピアは出せるだろう、なんて根拠の無いことを思って。

     そもそも、こんな痛み屁でもない。あの三年前の痛みに比べれば、耐えれるのだ。そんな様子の創に対して、無表情でオプスキュリテは口を開く。
    「こりないようね。それじゃあ闇へそのまま送ってやろう、もう二度と日の出が見れないように。そうだ、三年ではなく三百年先まで」
    「なになに?  そんなところまで俺と一緒に来てくれるんだ。……あれ、それどういう意味」

     三年、その単語に創は思わず反応した。三年なんて、先程思い出していた三年前の出来事と一致してしまう。彼女には三年前の事など一度も話したことがない。
     目の前の相手は、自分の事をどこまで知っているというのだ?  創の反応をよそにオプスキュリテは言葉を続けた。
    「お前がまた居なくなったらどう思うだろうな? それを理解して私に声をかけてきたのだろう?」
    「……その言い方……」

     その言い方は、まるで琥珀の事を知っているような言い方に創は聞こえた。
     もしかして琥珀と知り合っているのか?  と創はどこか嫌な予感を覚えた。この場所といい、相手の行動といい。無免連らしいといえばらしい、自分より無免連と交流のある琥珀の事が心配になってしまった。

    創は腹を押さえていた手を離す、手で止めていた血が溢れ、衣服とコンクリートの地面を赤黒く染めたが、血で真っ赤になった手で万年筆のキャップを取る。
     すると、そこから万年筆のペン先ではなく、ペン先がレイピアになった。よかった、使えると創はほっとした。
    「……また居なくなるってなんで決めつけてる訳?  もう俺は居なくならないけど」
     自分がいなくなったら、琥珀がまた悲しんでしまう。もう悲しませないと決めたのだ、琥珀の傍で、相手を見守って、一緒にいると決めたのだ。

    「それはこれからのお前次第だな」
     そうオプスキュリテは言うと、男の姿になったかと思えば剣を取り出した。手負いの状態で戦闘か、と創はどこか冷や汗を流しつつ。笑った。
    「ふふーん、俺結構やるんだよ?」
     そう言ったのはいいが、相手の方が体格もある。口では言えるが、と創はそっとまた腹をおさえた。
    「なら手を合わせてもらおうか。まぁそのレイピアを持つ腕があるのなら」
    「……っ!」

      創は咄嗟にレイピアを奮った。レイピアは相手の剣に当たり悲鳴をあげるようなキィン、と音を出した。
     既で、の所でなんとか止めたが、一瞬でも反応が遅かったら腕を切り落とされていた。ドッと冷や汗が流れる、無茶なことをしたせいか腹に鈍い痛みがはしり思わず蹲る。
    「……っ、い、た……」
    「ほう、止めたか。少しはやるようだな。けれど、もう終わりだ」
     そう言ってオプスキュリテは剣を奮う、奮った先はレイピアをもつ腕へと下ろされ、そして。腕は落ちた。

    「……あぁ!」
    「創!  起きたか!」
     創は声を出して飛び起きた、目の前には心配そうに自分を見るカインが。創は慌てて周りを見る、先程の路地裏ではなく、自室だった。
     汗をびっしょりとかき、思わず片腕と腹を触る。オプスキュリテから斬られた腕はかわりなく動く。腹の方も穴が開いた様子はない、創の行動を不審に思ったカインは声をかける。
    「ずっと魘されてたんだ、いくら名前を呼んでも起きなくて、なにがあったんだ?」
    「……あー……いや、なんでもない」

     ここで夢の事を言ったらますます心配されてしまう、夢でよかった、とかわりない腕を触る。安易に無免連と関わるな、というメッセージだろうか。それなら、自分より琥珀が一番心配なのだが。
     それにしても、相手の言葉がぐるぐると回る。あの口振りでは、どう考えても三年前の事を知っているような感じだった、もし琥珀と知り合っていたとするなら、琥珀が喋ったのか?  と。

    「……いや、まさかな」
     琥珀が相手と知り合ったという確証もない。だとしても、創は頭を抱える。
    「……琥珀、大丈夫かな」
     自分の親友は、無免連のニジゲンとバディを組んでいた。フレイらが顕現した今でも、そのバディを解く様子はない。
     今まではどこか大丈夫だろう、なんて思えたが、こんな夢を見てしまっては、いやでも心配してしまう。
     せめて、何事もなければいいが、なんて思いながら。
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