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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
    よその子さん多め

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    ちょこ

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    エガキナ

    よその子さんお借りしてます

    ##エガキナ
    ##認可信号組

    これからもよろしくね 創が見つかった。あの【回想死因】が終わって少しだけ落ち着いた頃、琥珀は高校時代からの友人である鈴鹿に連絡をする。電話越しの鈴鹿は、琥珀の言葉に驚いていた。
     琥珀はその声を聞いて目を伏せる。創がいなかった三年間、鈴鹿は琥珀の事を支えてくれていた。琥珀が創が残したコートを羽織って、没討伐をしながら手がかりを探していた時も、創の手がかりが見つからなくて、一度だけ鈴鹿に弱音を吐いた時も、鈴鹿は傍で支えてくれていた。
     【友人】という括りでおさまるのには少し違う気がした、普通の友人ならここまでしない。出会いは確かに創よりも遅かった。けど、腕の虐待の跡を見ても、自分が女性恐怖症だと打ち明けた時も、鈴鹿はそれらを受け入れてくれた。何も言わなかった、創と同じように受け入れてくれて、なおかつそれでも琥珀は琥珀だと言ってくれた。

    ───あぁ、なんだ、創と同じなのか。

     ストン、と何か胸の引っ掛かりが消えたような気がする。琥珀は鈴鹿に約束の日にちを決めて電話を終わらせた。やっと、三人でまたあの日のように顔を見合わせれる。

     約束した日にち、その日はとても良く晴れていた。琥珀と創は約束した場所へ行くと、既に鈴鹿がいた。少し緊張した創は、軽く深呼吸をすると笑顔で駆け寄ると、鈴鹿に話しかけた。
    「鈴鹿! ……ただいま」
     三年振りに見た鈴鹿は、少し体つきが変わったように見えた。あの頃よりも、変わったように見えたのだ。あの時の鈴鹿の顔は、少しだけ泣きそうな顔をしていた。そらそうだ、酷なお願いをしたのだから。
     そして、話しかけられた鈴鹿の表情は、目を少し見開いていた。少しだけ目元が下がり、口元も緩む。まるで迷子の子供が、親を見つけた時に安心しきった顔のように。数分の沈黙が流れる。琥珀が心配そうに鈴鹿を見たと同時に、鈴鹿はやっとの思い、と言わんばかりに口を開く。
    「……なにしてたんだよ、今まで……。それに、創……髪……」

     恐らくもっと言いたいことがあったのだろう、三年間なにしてたのだ、とか、なんでもっと早く連絡を寄越さなかったのか。沢山言いたいことはあっただろう。けれど、色んな感情が混ざって、いえなかったのだろうな、と琥珀は口を閉ざす。
     鈴鹿の言葉に、創は二人をベンチに座らせる。座ったのを確認したからか、創は口を開く。
    「……まずは、ずっと連絡できなくてごめん。琥珀には全部話したけど……。……俺はあの日、怪我が原因で記憶喪失になってた」
    「……は!? 記憶喪失……!?」
     鈴鹿は驚いて思わず立ち上がる、琥珀はそんな鈴鹿に落ち着いて、とそっと手を握った。その手は少しだけ、震えていた。その様子を見たからか、ゆっくりと座り直す。
    「……予想以上にあの没が強くてさ、頭とか胸とか……とにかく、たくさん怪我した。その後の事は実はあんまり覚えてなくて……目が覚めたら、俺は全部忘れてた。お前らの事も、カインの事も……自分の事も」
     創はあの日の出来事を思い出していた。血まみれで倒れて、その後の事は本当にあまり覚えていない。誰かが自分を助けてくれて、目が覚めたらなにもかも覚えてなくて。どれほど不安で心細かったことか。
     創は二人の顔を見て安心させるように笑う。この話を知ってると言うのに、泣いている琥珀の頭を優しく撫でる。

    「そんな顔するなって、琥珀……もう泣かなくていいから。……鈴鹿、ごめん。本当にごめん、怪我の具合とか……記憶喪失の事で連絡どころじゃなかったんだ。俺を助けてくれたニジゲンから、治療とか……ちょっとしたリハビリとか色々してて」
    「……衝撃すぎて、腰抜かした……」
    「ははっ! ベンチに座らせてよかったわ! あ、髪はその時の血で結構染まっちゃってさ、切ったんだ」
    「……そっか……。創を助けてくれたニジゲンって誰だ?」
    「……」
     創は言うか迷った。そのニジゲンは創務でもなければ認可でもない。同人地下帝国のニジゲンなのだから、鈴鹿が無免に対していい感情を持っていないのは知っていたが、同人地下帝国───同帝のニジゲン対してどう思うか、分からなかったからだ。
     そんな時、琥珀は創の腕を掴む。その目はまだ涙を溜めていたが、話しても大丈夫じゃないか、とも言ってるように見えた。そんな琥珀の表情を見て、創は口を開く。
    「……俺を助けてくれたニジゲンは……。……CQ×2っていうニジゲン。同人地下帝国にいて、変な実験させようとするけど……死の淵にいた俺を必死に助けてくれた。あいつには恩義を感じてる。……だから鈴海、この事は他言無用で頼む。創務は同帝を捜査してるから、不利になるような事はさせたくないんだ」
    「……そっか。……無免じゃなければいい」
    「……うん」

     鈴鹿の言葉を聞いてホッと胸を撫で下ろす。そう、CQ×2は自分の事を救ってくれた。記憶のない自分を診療所におかせてくれ、不安で寝れない時はお香を焚いてくれた時もあった。献身的に、創の事を治療して、見守り、そして地上に送ってくれた。それが伝わったのは安心したのだ。
     同帝から助けてもらったと告白したのは、琥珀とたった今話した鈴鹿にだけだった。創の両親にすら言っていない。創の両親は創務のため、話せられないと判断したからだ。
     そして、創は鈴鹿に抱きついた。突然の事で驚く鈴鹿だったが、創は力強く抱きしめて、ずっと伝えたいと思っていた言葉を話す。
    「……鈴鹿。ありがとう、あの時……琥珀を連れ出してくれて。酷なお願いをさせて本当にごめん。すぐに戻って来れなくて、本当にごめん」
    「……違う、お礼を言われるような人間じゃない、俺は。……俺は臆病者だから」
    「何が臆病者だよ、鈴鹿は臆病者じゃない」
     そう言って創は少し離れて、鈴鹿の顔を見る。鈴鹿の顔は泣くのを我慢しているように見えた、この三年間、泣かなかったのだろう。我慢しなくていいのにな、と思いながら。目の前の光景が滲んで見える、どうやら自分も涙ぐんでるらしい。

    「鈴鹿は臆病者じゃない。お前がいなかったら、俺と琥珀は死んでたから……。……ありがとう、俺の大事な親友を連れ出して助けてくれて。お前の事を俺は誇りに思う、お前も無事でよかった……」
    「……っ」
     そう言うと、鈴鹿の両目から涙が溢れてくる。三年間我慢したからか、ボロボロと泣いていた。琥珀はハンカチを出しつつ、鈴鹿に言う。
    「ごめん、俺がずっと泣いてたから、泣けなかったんだよな。鈴鹿、ありがとう……三年間俺の事……支えてくれて。あの時は、本当にありがとう。連れ出したお前に俺は酷い事を言ったのに……それでも支えて見守ってくれてありがとう……」
     そう言って琥珀は鈴鹿を抱きしめた。泣きじゃくりながら抱きしめる。そんな二人に、創はまた抱きしめた。
    「琥珀、ありがとう。俺の事生きてるって信じてくれて。ずっと探してくれて、コートも大事にしてくれて……。鈴鹿、ありがとう……琥珀を助けてくれて、琥珀のそばに居てくれてありがとう……。二人とも、ありがとう……俺はちゃんと帰ってこれた……」
     ありがとう、創はずっとその言葉を言った。創も泣きながら抱きしめる。どのくらい泣いたか分からなかったが、少ししてそっと離れる。三人とも目は真っ赤に腫れていた。

    「三人揃ったし……どっか飯食いいくか」
     そう言って笑う創。二人もベンチから立ち上がると、歩き出す。鈴鹿の前には琥珀と創が歩いている、いつもの光景。鈴鹿は一、二歩下がって二人の背中を見ていた。違うところは、二人の服装と、髪の短くなった創だけだ。すると、創が立ち止まり後ろをむく。そして鈴鹿の腕を掴んだ。
    「創?」
    「何お前後ろにいるの、お前はここ!」
     そう言って創は鈴鹿の腕を引っ張ると、真ん中に歩かせた。状況が飲み込めていない鈴鹿に創は笑った。
    「もうお前はここだろ?」
    「そうだな、鈴鹿はここ」
     そう言って笑う琥珀と創。そして琥珀は鈴鹿の手をそっと握った。
    「もう鈴鹿はここにいないとダメだから」
    「そーそー、もう後ろにいるなよー?」
    「……お前らなぁ……」
     そう言ってまた泣きそうになっている鈴鹿を見て、二人は背中を撫でた。

    ───歩く足並みは、揃ってる。
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    ちょこ

    DONEダミアさんお誕生日小説
    ダミアさんお借りしました!お誕生日おめでとうございます!
    モンブラン「ダミア、お誕生日おめでとうございます」
    「おー! ありがとな!」
     レイフが借りている拠点と言っていい住まいにダミアを呼び、目の前にケーキを出す。ダミアと前もって連絡を取っていたため、こうして呼べたのだ。ケーキはレイフの手作りだ。本当なら、料理も出そうかと言ったのだが、間髪入れずに断られてしまった。今度こそ上手く作れるような気がしたのにな、とレイフは残念そうに思いながらも、ダミアを見た。
    「このケーキ……モンブランか?」
    「そうです、アマロンを使ってます」
    「へー! 王様って呼ばれてるやつじゃん!」
     ダミアは感心したようにケーキを眺めた。アマロン、様々な栗の中で特段に甘い栗の事だ。身も大きいのだが、育てるのが難しく、しかも、大きく育てようと魔力を使うと、すぐに枯れるという性質を持っていた。なので、完全な手作業、時間をかけてゆっくりと育てる。そのため、栗の中の王様、という意味で【アマロン】と呼ばれるのだ。一粒だけでも驚くほどの高額で取引される。その高額さに、一時期偽物のアマロンが出回るほどだった。偽物のアマロンと区別を測るための道具すら開発されるほどに。
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