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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
    よその子さん多め

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    ちょこ

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    エガキナ

    よその子さんお借りしてます

    ##認可信号組
    ##すずこは
    ##エガキナ

    人の声が一番綺麗に聞こえるのは 学校の授業が終わり、部活動に行く生徒、他の生徒と雑談をしている生徒、そのまま帰り支度をして教室を出る生徒、様々だ。琥珀と創も、帰り支度をすすめていた、お互いに高校生でありながら認可作家組合に所属しているため、学校中のちょっとした有名人だった。二人はそんな事気にせずに雑談をしながら教室を出ようとすると、二人に声をかける生徒が居た。二人の友達である鈴鹿であった。
    「今から帰んの?」
    「鈴鹿も帰ろうぜ」
     創がそう笑って言うと、廊下から教師が創を見つけて呼んだ。
    「おい江波戸、先生と面談って言ったろ?」
    「げぇ! 忘れてた!」
    「……相変わらずだな……」
     教師は呆れつつ笑うと、準備したら来るように、と言ってそのまま忙しそうに廊下を歩いていく。一方、創は鈴鹿と琥珀に手を合わせると、頭を下げて謝る。
    「ごめん! そういうことで!」
    「別にいいよ」
    「というか面談忘れてたのかお前は……」
    「えへー」

     そう創はヘラヘラと笑うと、鈴鹿に向けて片目を瞑る。いわゆるウインクというやつだ、顔立ちがいいからかそれすらも様になる。それをした後にさっさと廊下を小走りするように去っていった。二人ポツン、と残った鈴鹿と琥珀。お互い顔を見合わせると、琥珀が口を開く。
    「……帰る?」
    「……そうだな」
     二人が昇降口までいくと、外で雨が降っているのに気づく。そう言えばテレビで雨が降るかもしれない、と言っていたのを思い出した。けれど降水確率は低かったし、日中は晴れていたためほとんど傘を持ってきていた生徒はいない。その光景を見ていた鈴鹿はしまった、と言う。
    「傘持ってきてない」
    「折りたたみあるから一緒に入る?」
    「いいのか?」
    「俺は寮までだし、その後は鈴鹿が使っていいから」
     靴を履き替えつつ、琥珀は鞄の中から紺色の折りたたみ傘をとりだす。一応普通の折りたたみ傘より大きめらしい、二人が外に出て傘をひらく。もちろん、琥珀より身長の高い鈴鹿が傘を持つことになった。
     夏に入る前だからだろう、やや湿度の高いムッとした空気。春の時は綺麗なピンク色に染まっていた桜の木も、緑色の葉が雨に濡れていた。梅雨は過ぎたはずだというのに、珍しい雨だ。雨足はそこまで強くなく、本降りになる前に早く行こう、と歩く。

     琥珀の歩幅に合わせて歩く鈴鹿、雑談しながら歩くと琥珀はふと、いつもより鈴鹿の声が綺麗に聞こえた気がした。いつもより、耳に心地よく入る。それがどこか、もっと声を聞きたい、と思わずほんの少しだけ鈴鹿に引っ付く。ふと、鈴鹿の肩が濡れていることに気づいた。
    「鈴鹿、濡れてる」
     そういって傘を鈴鹿の肩が濡れないように持ち替えさせる、すると鈴鹿は少し眉をひそめて言った。
    「琥珀が濡れるだろ」
    「俺より鈴鹿が濡れるのが嫌かな。……あ、もう寮着くから、それ鈴鹿使って」
    「わり、明日返す」
    「うん、それじゃ」
     琥珀はそう笑って、鈴鹿と別れて寮まで走る。ぱちゃり、ぱちゃり、と耳に雨音がはいる。けれど、先程の心地の良い鈴鹿の声と比べると、なんて思ってしまった。

     そんな高校時代のふとした日常から何年という時間が過ぎた頃、あの時のように雨が降っていた。琥珀はしまったな、と店の軒下に立っていた。創が見つかるまで季節関係なく羽織っていた冬用のコートは着ていなかったが、気温が高いからか、少し暑かった。雨に少しあてられたからか、髪や服は少し濡れていた。そろそろ夏が来るのだろうか、なんて思いながら雨宿りをしていると、声をかけられた。
    「琥珀?」
    「あ、鈴鹿」
     そこにいたのは鈴鹿だった、あの頃と違うといえば、鈴鹿と恋人として付き合うようになった、だろう。鈴鹿は琥珀をじっと見た後、口を開く。
    「中入れよ」
    「……ありがと」
     琥珀は鈴鹿の申し出に甘えることにした。琥珀が隣にいくと、肩にそっと手を添えたかと思うと、自分の方へと引き寄せられる。
    「これなら濡れないから」
    「え、あ……うん」

     付き合うようになって顕著に現れたからか、付き合う前から薄々と思っていたが、こういった鈴鹿の公道が琥珀にとっては胸がつい、高鳴る。つまり、かっこいいのだ。トクン、トクン、と心臓の音がうるさい。鈴鹿に聞こえてないといいけれど、と思いながら雑談をする。すると、あの時のように鈴鹿の声が綺麗に聞こえた。綺麗で、心地よくて、好きな声。その時、鈴鹿がこちらを向いた。
    「……なんか琥珀の声、綺麗に聞こえる気がするけど」
    「奇遇だな、俺も」
    「……あの時も」
    「ん……?」
    「……あの時も琥珀の声、すごく綺麗だった」
     あの時、というと高校時代の事だろうか。鈴鹿もそう思っていたのか、なんて知ったからか頬が熱くなる感覚に襲われる。あぁ、自分は今顔が赤いのだろうな、なんて思いつつ手で自分の頬を触る。そんな様子を見てからか、鈴鹿は笑いつつ琥珀の名前を呼んだ。
    「琥珀」
    「鈴鹿……? んっ……」

     なんだろうか、と顔を向けると耳に口元を近づけられた。それだけで背中が甘く痺れる感覚に襲われていると、ぼそり、と囁かれる。
    「俺の家来て」
     そう言った後に離れる鈴鹿、反対に顔をさらに赤くさせつつ、琥珀はしどろもどろになりつつ口を開く。
    「……え、なん、で……?」
    「……その、服とか濡れてるし。俺の家近いからついでにお風呂入ればいいかなって。服とか乾かしておくから」
    「……」
     琥珀は少し考えたあと、きゅっ、と鈴鹿の服の裾を掴んだ。
    「……お邪魔します」
    「……決まりだな」
     そう言って機嫌の良さそうな鈴鹿を見つつ、琥珀は自ら引っ付くのであった。
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    ちょこ

    DONEダミアさんお誕生日小説
    ダミアさんお借りしました!お誕生日おめでとうございます!
    モンブラン「ダミア、お誕生日おめでとうございます」
    「おー! ありがとな!」
     レイフが借りている拠点と言っていい住まいにダミアを呼び、目の前にケーキを出す。ダミアと前もって連絡を取っていたため、こうして呼べたのだ。ケーキはレイフの手作りだ。本当なら、料理も出そうかと言ったのだが、間髪入れずに断られてしまった。今度こそ上手く作れるような気がしたのにな、とレイフは残念そうに思いながらも、ダミアを見た。
    「このケーキ……モンブランか?」
    「そうです、アマロンを使ってます」
    「へー! 王様って呼ばれてるやつじゃん!」
     ダミアは感心したようにケーキを眺めた。アマロン、様々な栗の中で特段に甘い栗の事だ。身も大きいのだが、育てるのが難しく、しかも、大きく育てようと魔力を使うと、すぐに枯れるという性質を持っていた。なので、完全な手作業、時間をかけてゆっくりと育てる。そのため、栗の中の王様、という意味で【アマロン】と呼ばれるのだ。一粒だけでも驚くほどの高額で取引される。その高額さに、一時期偽物のアマロンが出回るほどだった。偽物のアマロンと区別を測るための道具すら開発されるほどに。
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