僕の前に立たないで「侑さんのこと、好きになってもいいんですか……?」
顔をあげた翔陽の大きな瞳が、侑を写して光った。こぼれ落ちそうな瞼の雫を指でそっと拭って、侑は彼を抱き寄せる。
耳元で伝える愛の言葉で、翔陽の身体が震えるのを感じた──
「……よっしゃ、誤字脱字なし。ここでエンドマークや! 脱稿〜‼」
乗せっぱなしやった指をキーボードから離し、俺は拳を突き上げた。静まりかえっとった寮の自室に俺の声が響く。
使い込んでペイントのハゲも目立つ相棒のPCには、打ったばかりの大切な文字が並ぶ。それを大満足で眺めた。長く長く続いた翔陽くんと俺の物語。それをようやく今、書き終えることができたんや。
書き出しに悩み、起承転結で挫折しそうになり、感動的な展開に泣きそうになりながら書いた数日間が、走馬灯のように頭を巡る。それを思い出せば、ページの最後に置いたfinの三文字がますます愛おしく思えてくるわ。
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