きみは太陽 花の下で子どもが眠っている。くるりとまるまって、ちいさな頭をかたわらのひとの膝にのせている。
尖った耳、黒髪がさらさらと風になびく。ファットガムはベンチに両腕をまわし、こどもの眠りを妨げないようにしていた。
足音に気がついたか、その目がこちらに向けられる。その姿はずいぶんと痩せて、戦の激しさをものがたっていた。
「よお」
短いひとことにも西の風情がある。そういえば数日前、会議のために方々からヒーローが集まるという話を聞いていた。返事のかわりに相澤は片手をあげる。ベンチに歩み寄れば、金属の義足がかしゃりと鈍い音を立てた。
昼の陽射しがきらきらと、ファットガムの髪を金色に透かす。秋海棠の花が背後にあって、ベンチのなかばほどを覆っていた。戦況は厳しく、いつであれ予断を許さない、そのなかにあって、ファットガムと眠る子どもの姿はまるで一幅の絵のようだと、そう思ったけれどもそれを口にするのはやめておいた。
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