夜半のたずね人「ただいま」
エンデヴァーは人の気配の無い暗闇に向かって声をかけた。
返事があるわけが無い。
家人はもうここに居ない。
エンデヴァーがそうさせたのだ。
パチン
柱にある電気のスイッチを入れ、中にはいる。
ドサリと荷物を置いて、ドスンとソファに身体を預けた。
「ハァ…」
ため息と共に疲れを実感する。
今日の現場も悲惨だった。
泣き叫ぶ母親と、力なく横たわる子供。
どうにか助けた命と、浴びせられる罵声。
ひとつでも多くの人の助けになればと奔走すればするほど、擦り切れるのは靴の底か、己の心か。
ヒーローとは、何の為に在るのか。
エンデヴァーは埃と煤で汚れた手をじっと見た。
「目に見える汚れだけじゃない…俺は、汚い」
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