この先、猛犬注意!彼はカメラのフラッシュよりも眩い。
良くも悪くも目を引く彼を背に隠す。賑わう大衆の興味の矛先。無遠慮な多数のレンズとの間に入り壁になってみても、厚かましく下品な笑みの撮影者たちは身を乗り出して我先にと彼を追う。奴らにとって人気者の醜聞は金を生む甘美な餌だ。
「大丈夫だぜ」
肩を叩かれ振り向けばカラーレンズ越しの目が緩く弧を描いた。口元を覆うマスクの下でもそうなのか……どうだろう?
「今回の騒動について釈明は⁉︎ 謝罪するのが筋でしょ⁉︎」
興奮したのかニヤつく男がロープパーテーションを股越しカーペットに足を踏み入れ、進行方向に躍り出て目当ての人物にマイクを向ける。マナー知らずで明らかなルール違反。見覚えのある顔だった。ついこの間まで『オクタン』を絶賛し、強引に独占取材を通しおだてていた人間の手のひら返し。主人に視線を投げれば「平気だ」と小声で返されるが、俺が──
1046