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    甘い匂いの猗窩煉
    ■にょた百合現パロ

    #猗窩煉

    匂いを言葉で言い表すのは難しい。誕生日プレゼントに、と贈られたボディクリームの蓋を開けると、贈り主の女と同じ、まろい雰囲気の、甘く、ねむたい香りが広がる。ホイップクリームのような空気をたっぷり含んだテクスチャーで、肌に乗せてもベタ付かず、それでいて保湿は申し分ない。正直に言えば気に入っていて、貰ったその日の晩から毎日使っている。きっと、底が見えたら自分で買い足しもするだろう。
     唯一気になると言えば、風呂上りに塗布するのが日課になったこのクリームの香りで、必ず兄弟の彼女である贈り主の顔が浮かぶこと。それに連鎖して兄弟のことも脳裏に浮かび、今日もこの眠たい匂いがする女と一緒に過ごして、だらしなく鼻の下を長くしているのかと考えてしまうこと。クリームを指で掬って、ショート丈のルームウェアから伸びた足に塗り付ける。足首から脹脛を撫でて、膝頭の乾燥が目に付くとクリームを足す。兄弟は知っているんだろうか、お前が宝物のように大事に抱いて寝ている女と、血を分けた妹が同じ匂いだという事実を。

    「なあ、今日のお湯すごい色だったぞ。何か混ぜた?」
    「混ぜていない、もらいもんの入浴剤だ。」
    「ふうん…なんか、洗剤みたいな色だった。」
    「そう言うな、自称オーロラだぞ。」
    「オーロラかあ、見てみたいな。」
     着替えも半端に、ショーツと肩から下げたバスタオルだけの彼女が、ぽつぽつと濡れ髪から雫を垂らして隣に腰を下ろす。クリームをもう一度指に掬って、水気も拭いきれていない彼女の手に両手で丁寧に塗り伸ばす。血色の良い、健康的な肌、引き締まっているが筋肉の上にうっすらと乗っている脂肪は柔らかく、クリームが詰まっているようで、触れる指先に吸い付いてくる。手首から二の腕に向かってマッサージを兼ねて少し強めに握り撫で上げると、柔い肉に指が埋まってむにむにと逃げるように形を歪める。角のない甘い匂いが彼女にも移って、お揃いの眠たい匂いに包まれる。同じように反対の腕にもクリームを塗布し、しっとりと保湿された肌を確かめるように撫でてから、湯上りでほんのり上気した頬へキスをする。

     裸のままの体が冷えてしまわないように、お揃いで買ったルームウェアの上着を薄い肩に羽織らせる。上背はほとんど変わらないというのに、肉付きの良さに大きな相違があって、彼女はこの上着のチャックを閉めたがらない。胸が苦しいんだと、お揃いコーデがあべこべになってしまうことを残念そうに眉を下げていた。その時もこの甘い香りがしていて、マシュマロかシュークリームか、とにかくこの世の白くて柔らかくて、美味しいものが喋っているんじゃないかと錯覚を覚えた。
     バスタオルで濡れたままの金髪をゆるく包んでまとめると、長さのまばらな襟足の髪が一房うなじへ向かって垂れてくる。普段髪に隠されて、日に焼けていないうなじに、ひたりと張り付く金の糸が一筋、吸い寄せられるようにそこにもキスをする。甘い匂いが鼻腔に広がって、包まれる。

    「杏寿郎、お前また下着をゴミ箱に入れたな?」
    「ああ、ストラップが伸びてきて…もう着られないから。」
    「理由を聞いてるんじゃない、下着を処分するときは見えないように配慮しないと危ないだろう。紙袋にいれるとか、小さく切るとか…。」
    「……なんで君が下着を捨てたのを知っているんだ。もしかして君、また私のゴミ箱を漁ったのか?」
    「人を変態みたいに言うのはよせ!」 


    ──兄弟の恋人と、私の恋人は同じ匂い。
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