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    一緒に虹を見る猗窩煉
    ■お題ガチャより「一緒に虹を見る猗/窩/座と煉/獄」

    「見てみろ、虹が出ている。」
     猗窩座の声が静かな室内に溶ける。声を掛けられた煉獄は「虹が出ている。」という事象よりも、猗窩座の声音がどこか少し弾むような軽い調子であったことが、ずっと珍しく貴重なもののように感じていた。鍛錬を積むこと以外にも、彼の心を震わせるものがあるのかと、猗窩座が指差した襖越しの空を見ながら考える。
    「雨が、降っていたのか。」
    「ああ、お前が寝転げている間、雨が降って、そしてもう晴れている。」
     煉獄が静かに目蓋を下ろす、再び眠りに落ちるような、もう二度と宝石の瞳を見ることが叶わないのではないかと思わせる緩慢な動きだ。
    「寝るな、杏寿郎。」
    「虹を、見ている。」
    「目を瞑ってい居るじゃないか。」
    「君と、…虹を。」
    「おい、寝るな。」
     起きろ、杏寿郎。と、再び静かな室内に猗窩座の声が溶ける。失望したような、懇願するような、まるで今にも泣きだしそうな声音が柔らかな布団に沈むように横臥した煉獄の体に染み入る。

     突然降り出した雨は、突然止んだ。周囲の草木を濡らし、湿った土の匂いが立つ。服も髪も濡らしたまま、青空にかかる大きな虹を見上げる。
    「虹の下には、宝物が埋まっているらしい。」
    「宝物が?」
    「ああ、一緒に確かめに行こう。」
    「虹は、随分遠くにあるように見える。」
    「平気だ、お前と一緒なら何処へだって行ける。」
    「何処へだって?」
    「そうだ。」
     そうか、何処へだって。好きなところに。

    「早く起きろ、杏寿郎。」
     虹を映した襖の隙間から、穏やかな陽光が差し込んでいる。自身の拳が潰した目元は歪に窪んで、これほどに明るい陽の光が当たっても眩しさを覚える事はない。
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