㉑真夏の幽霊/狐の嫁入り「マニャンで飯を食いませんか」
イ・ドンシクさんからメールが届いたのは夏の始めの事だった。
聞けば来月彼の実家の取り壊しが決まったらしい。
それならば片付けを手伝います、と早めに向かえる様に日程を調整した。
未だに連絡を取り合っている僕らだが、あの日以来忠清道の彼の住まいへ行くのも泊りがけで会う事もやめている。
職場と彼の家の往復しかなかった生活をやめて、非番の日を時には一人で部屋で過ごしたり買い物をしたり、たまに彼と待ち合わせて外食をしたり。
クリニックも月に一度2人で通う事は継続している。
会った日の別れ際など、離れがたく触れたくてもどかしさを感じるけれど深呼吸をしてやり過ごす。
その代わり食べたものや見たものの写真を送りあったり特に意味のないメールを交わす事が増えた。
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