11月22日(いい夫婦の日) 包こりゅ11月22日世間一般では語呂合わせで「いい夫婦の日」ともいわれているらしい。
大般若が発した一言で、長船部屋で他愛の無い雑談がはじまる。
「へえ、そんな日があるのか」
「だから今日、婚姻届けを出す人たちも多いらしいな」
「あるじも、いつかだすならそのひがいいっていってたのだぞ」
「面白い事を考えるものだね」
夫婦、という形。
「何か、変わるのかな」
「人にとっては変わるだろうけどなあ」
「だよねぇ」
人のような家庭というものも自分たちには関係が無い。無いのだから夫婦という形にも大きな意味は無いように思える。
それでも共にある事を選んだ、と言う一つの区切りではあるのだろう。だから少しだけ、羨ましさもある。
「いいなぁ…」
「おじい様ならこりゅにいが言えばしてくれるとおもうんだぞ」
「ちょっといいなって思っただけだし、いいのいいの」
「小竜が言えば喜びそうなものだけどな」
「大般若!」
余計な事を言うなという気持ちを込めて呼ぶと、計ったかのように大包平が襖の外から声を掛けてくる。
「どうかしたのか?」
「な、なんでもないよ」
そう言っても大般若の口は止まることはない。そもそもちょっとした雑談を止めようという方が無理なのだ。少しだけ、本当に少しだけ思っただけなのだ。
いつか、君とそうなれたらいいな、なんて。
「それで?何を話していたんだ?」
「あぁ、今日の日付がいい夫婦の日って言われてて、婚姻届けを出される事が多いらしいって話をちょっとな」
「なるほど、わからん」
「はは、じい様らしいな」
「夫婦となったからには年中一緒にいるのだろう、わざわざその日に届を出さなければそうならないわけでもあるまい」
それに、と大包平が続ける。
「その日を過ぎたら1年後を待つのだろうか?」
「さすがにそれはないんじゃないかなぁ。まぁ、大安を選ぶような感じじゃないかな?」
「ふむ、まぁそれなら分かるかもしれん。吉日と言うのは大事だからな」
夫婦、か。
「大包平?」
声を掛けられ、小竜の方を向く。
「どうした?」
「うん、なんとなくね」
嬉しそうな笑みを浮かべながら大包平の隣にいる小竜を見て自分も笑みを浮かべる。
いい夫婦の日、とやらは分からない。
だがーーー
いつか、お前とそうなれたらいいな。その位は思っても良いだろうか。