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    野イタチ

    @itcnomaho
    成人済腐/いろんなジャンルを書きます/今書いてるのは兼堀・進京・ガエアイ·花憐·おおこりゅ(大こりゅ?包こりゅ?)

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    野イタチ

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    包こりゅ/おおこりゅのキス22箇所、三つ目の憧憬です。一応両片想い。付き合ってないのに、キスさせるの大変でした。

    #刀剣乱腐
    swordCorruption
    #包こりゅ
    envelope
    #おおこりゅ
    ##おおこりゅ
    ##キス22

    三、瞼(憧憬) 朝顔が目を覚ます。丸まった花弁が日の出に合わせるように、ゆっくりと開いていく。緑簾のために建てられた支柱には、もう屋根の方まで、蔓が伸びている。
    (切ればいいのか?)
    大包平は屋根を見上げて、そう思った。
     始めたのは短刀たちだった。暑さが本格的になる前に、簾をかけるはずが、いつの間にか朝顔にすりかわっていた。誰かがそうするとただの簾より綺麗だと言ったらしい。短刀たちは初めこそ世話をしていたものの、花が咲いたら飽きたらしく、部屋が近いという理由で、大包平が世話をしていた。今、短刀たちは向日葵に夢中らしい。
    (初志貫徹しないとは、どういうことだ)
    大包平は深く息をはいた。
     大包平はとくに植物が好きというわけでもないし、育て方も知らない。勝手に部屋の前にこんなものを作られた身になってほしい。
     しかし、それは建前で、大包平が、この花を枯らさないのは、紫と緑と青と、その彩りが小竜に似ているからだ。大包平には、それに小竜が気づいてほしい気持ちと、気づかないでいてほしいという気持ちが入り混じる。
    「大包平。」
    そんなことを考えていると、前触れもなく小竜が大包平のもとへやってくる。
    「桑名江に教えてもらったよ。蔓はそのまま切っても大丈夫みたい。水やりを忘れなければ、強い花だから枯れないって。」
    昨日、大包平が朝顔の話をしていたのを、小竜は聞いていたらしい。
    「わざわざ聞いてきてくれたのか?ありがたい。」
    「どういたしまして。」
    小竜が笑う。
    「結構、生えたね。」
    小竜が朝顔を見上げて言った。
    「これ以上は、屋根に絡まる。切っていいなら、さっさと切ろう。」
    背の高い彼らでも、さすがに屋根までは届かない。大包平は小竜に脚立を持ってくると言って、その場を離れた。
    「剪定用の鋏もだよ。」
    その背中に、小竜は持ち物を付け足す。
    (ずいぶんマメに世話をしているんだねえ)
    小竜は美しく咲いた朝顔を見て思った。夏と言えば向日葵だが、これほど多くの朝顔がが咲き誇っているのを見るのは、初めてだ。涼し気な紫の花も夏に悪くはないと思える。
     小竜が朝顔に見惚れているうちに、大包平が脚立を持って帰ってきた。
    「これは、屋根に上がった方が良さそうだな。」
    「それなら、俺の方が上がるほうがいいんじゃない?」
    小竜が申し出る。
    「なぜだ。」
    「俺の方が、キミより軽いし、そういう作業は慣れているからね。」
     その一言で、小竜が屋根に上ることになった。
    「どうなってる?」
    大包平が上の様子を尋ねる。
    「結構、屋根に食い込んでる。これ柱のところから切った方がいいよね。また生えてくるそうだし。」
    「そうしてくれ。」
    「わかった。」
    小竜は答えると、端の支柱から、順番に蔓を切っていく。実に単純な作業だ。朝顔の蔓もとくに頑丈ではない。鋏を入れれば簡単に切れる。その油断が災いした。小竜の足が、屋根の方に絡んだ蔓に引っかかる。
    「あぶな……っ」
    小竜はとっさに蔓が巻き付いた支柱を握るが、それが小竜を支えられるわけもなく、小竜は屋根から滑り落ちる。その身体を大包平が受けとめた。
    「びっくりした。」
    「驚いたのはこっちだ。それより怪我はないか?」
    「手もひねってないし、怪我はないよ。」
    よかったと大包平が言った。
    「ごめん。朝顔をダメにしてしまった。」
    「強い花なのだろう?支柱をいくつか折っても、花は生えてくる。」
    ぐちゃぐちゃになった、朝顔の緑簾には、無残にちぎれた花が絡まっている。とてももとには戻りそうにない。
     小竜は大包平をじっと見つめる。
    「なんだ?」
    その視線を感じて、大包平が問う。
    「いや。大包平のそういうところだって、思って。」
    大包平は首を傾げる。
     たぶん、小竜の今の気持ちに、大包平がなることは絶対ないだろう。
    (もし逆の立場だったら、俺はたぶんそんなことは言えない。)
    抱いていた小竜を下ろして、大包平は朝顔の方を見ている。どうやって、元に戻すか考えているようだった。その強さに小竜はどうしても、憧れてしまう。たとえ、それが手に入らないものでも。
    「大包平、すこし目を瞑っててくれないか?」
    大包平は、疑問に思いつつも、言われたとおりに、目を瞑る。大包平の顔を見て、小竜は胸が締め付けられる。彼はいつだって前しか向かない。
    (キミが眩しすぎるから、今だけは、目を閉じていて)
    小竜は大包平のまぶたに口付ける。
    「な!」
    大包平は、心底驚いたように、小竜を見た。小竜は気恥しげに、はにかむ。
    「ねえ、大包平。もし、この花が元に戻らなかったら、俺と新しい種を植えない?」
    彼のようにまっすぐではないかもしれないが、もう少し強くなってみようかと小竜は思った。
    「そうしよう。」
    小竜の言葉に、大包平は、力強く頷いた。
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