cute【オル相】「えっ?!私の顔に見惚れてくれていたんじゃないの?!」
「見惚れるも何も、俺からあんたの顔はまともに見えませんが」
「まともに」
「造形が崩れているとかじゃなくて。ほぼ顎しか見えんです」
相澤くんはそこらへんの丸椅子を引っ張ってきて私の隣に置いてその上に立つ。
「ほら。見えないでしょ、俺の顔」
身長差を模した施策に見上げれば彼の言う通り、いつも見慣れているものとは違うアングルが新鮮だった。
「でも君の顎のラインも素敵だよ。お髭がキュートだ」
「……なんでも褒めりゃいいってもんじゃないですよ」
何言ってんだって顔しながら、最近はその裏に嬉しさを感じてくれているのを私は知ってるよ。
そう思ったらたまらなくなって、椅子から降りかけた相澤くんに抱きついた。危ねえなって怒る体をそのまま肩に担いで持ち上げる。
「何してんすか」
「君が本当に一番好きな私の顔見せてあげようと思って」
「はァ?!」
私の足がどこに向かうのか進行方向を確認して相澤くんがジタバタと暴れる。
「違ってたら下ろすよ」
私は特定のことを言ったわけじゃない。暴れていた足はぴたりと止まり、運ばれるままになる君の顔はきっととても赤くて不貞腐れていて可愛い。
この格好じゃ見えないのが勿体無かったけど、何を想像したのか一刻も早く答え合わせがしたくてうずうずした。