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    あんこうです。オル相を投げて行く場所

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    ジュンブラお疲れ様でした!

    オル相前夜祭、楽しかったなという気持ちでいよいよお式を翌日に控えた2人の話です。

    前夜祭【オル相】「いよいよ明日だね」
    「そうですね」
    「……睡眠不足はお肌に悪いぜ。そろそろ寝た方がいいんじゃないかな」
    「そんなにベッドに誘ってどうするんです。しませんよ。明日何の日だと思ってるんです」
     そこまで言ったところで、八木俊典は風呂上がりのドライヤーで乾かした髪をふわりと風を含んで振り乱し(正確には風に踊ったのはトレードマークの二房の前髪だけだけれど)顔を赤らめて目をギュッと細めた。いじけや不満を連想させる表情に相澤は椅子から立ち上がり息を吐く。
     腹の中で食べ過ぎた夕食が存在感を放っていた。
    「そうだよ。明日はいよいよ私達の結婚式なんだからベストコンディションで望まなきゃいけない。今夜衝動に任せて君を抱いて明日君が歩けないなんてことになったら大変だしね」
    「ええ。しかしながら明日の結婚式に来られない奴もいるからってまさか前日に更にパーティーを催されるとは思いませんでしたがね?」
    「ケーキ入刀の練習できて良かったよね!」
     そもそも人の多いところが好きではない相澤を、結婚式の準備だなんだかんだと連れ回していい加減辟易しているのは何も言わずとも伝わっている。それでも相澤が八木に面と向かって不平不満をずばりと切り出さない優しさがたまらなくて感極まり、八木はひしと抱き締めた。
    「ありがとう相澤くん!」
    「……はあ」
     また何か一人で考えて勝手に結論を出しているなと感じたので深く突っ込まずにおく。
    「…………」
     俊典さん?」
     腕を離す気配も歯の浮くような口説き文句もなく黙り込んで神妙な表情に変わっていた八木を見上げ、相澤はこちらを見ているようで見ていない顔の額に手を伸ばしてデコピンをする。勿論軽く。
    「今度は何ですか」
    「……その。本当に良いのかい」
     またその話ですか、と反射的に切り捨てかけて何とか踏みとどまった。良い機会だ。細切れで話していたことをまとめて振り返る時間が必要だったのになあなあで濁してここまで来た、その事実は否めない。
    「今更嫌だと言ったところで止めるんですか?」
    「本当に嫌ならね。君は優しい。私が結婚した事実を世間に公表することが次の平和への芽になるのなら喜んでそうしてもらって構わないけれど、そこに君の希望はあるのかい。手っ取り早い平和の象徴として合理的な判断で選んでくれたんだとしても私は嬉しいけれど」
     そこまで聞いたところで相澤は片手を挙げて八木の発言を制した。
    「俺はあなたと交際していて、生涯添い遂げるという覚悟を互いに持ったから結婚するんだと思っていましたが、今の発言だと俺の感情はまるっと無視ですか?」
    「君の愛を疑ってるわけじゃないよ!ただ」
    「これまでの自分の言動から、平和のアイコンを天秤にかけて打算が勝ったと思われてもしょうがないとは思いますがね」
    「……結婚する事実だけならともかく、結婚式も今日みたいなパーティーも決して乗り気じゃなくても参加してくれてるからさ」
    「世話になった人に挨拶くらいしますよ」
    「…………私が先に死んだら、若い子を見つけて幸せになってくれて構わないからね」
     がつ、と相澤は今度こそ反射的に八木の右足の甲を踏み付けた。裸足だからそこまで痛くはないだろうが八木は目を丸くして途端に怒り出した相澤を見つめている。
    「は?嫌ですが」
    「え」
    「俺は俺が先に死んでもあなたに若い嫁を貰えなんて口が裂けても言いたくありませんよ。社会的に、オールマイトというヒーローへイレイザーヘッドというヒーローがかける言葉としては間違ってるのかもしれませんがね。あなた前に言いましたよね?似合う女を見つけて結婚して子供を持つべきだけど、そういうステレオタイプの幸せってやつから一番離れた場所に二人でいることを許してほしいと。俺はずっとそのつもりで生きてます。あなたが死んだら代わりなんていません。だから俺が死んでも俺以外を愛さないでほしいっていう俺のエゴごと、明日あなたは愛すると誓えますか?」
     八木は何度か瞬きをした。
     その目の表面が潤み始めたのが見えた。
    「……私は、しあわせものだ」
    「世界一ね」
     背に回された腕に身を預け、相澤が合いの手を入れる。
    「宇宙一さ」
     ご機嫌な涙声がワルツのように触れ合わせた体を揺らす。
    「じゃあ寝ましょうか。起きてからも準備をしなきゃいけませんしね」
    「そうだね。明日の十時が待ち遠しいな」
    「すぐですよ」
     シャツを引いて屈ませた八木の頬に相澤が唇を寄せる。深いのはNGですよという小悪魔気味な微笑みに、人生で一番忍耐力を試される夜だろうなと八木は笑った。
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