Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    ankounabeuktk

    @ankounabeuktk

    あんこうです。オル相を投げて行く場所

    ☆quiet follow Yell with Emoji 🐐 🐈 ♨ 🏮
    POIPOI 230

    ankounabeuktk

    ☆quiet follow

    429話のカラーに脳が焼けた

     引き伸ばしてフォトフレームに飾られた写真を複雑な顔で見つめる相澤に八木はキッチンから声を掛けた。
    「眉間に皺寄ってるよ」
    「随分とだらしねえ顔してんなと思いまして」
    「私が?」
    「俺が」
     相澤の声が聞こえづらく、八木は水を止めて濡れた手を拭く。テレビの横に置かれた新品のフォトフレームは、先日クラス全員から贈られたものだ。
     文句のひとつも言い出しな口ぶりのくせに、写真を見つめる眼差しは愛情に満ち満ちていて八木は相澤に聞こえないようにひとり微笑んだ。
    「そう?私は好きだけどな。君の優しさが写ってる」
    「……それを言うならあなたもね」
     弟子の頭に手を乗せてねぎらう手。
     しかし八木の示した「優しさ」がそこにある笑顔だけを指しているわけではないことに気付き、よっこいしょ、と独りごちて相澤は気恥ずかしさを誤魔化すように立ち上がりしゃがんでいた膝を伸ばす。
    「大胆だよね、みんながいたのに」
    「転ばないように支えただけです。人前でベタベタする趣味はありませんし、写ってませんから他人にゃわかりませんよ」
     おどけた口調を嗜める声に鋭さはない。
     チン、とオーブンが時間を告げる。
    「さ、リクエストのグラタンが焼けたよ」
     テーブルに運んで向かい合わせに腰を下ろす。
     頂きますと手を合わせた。
     二人暮らしの引越し祝いは、あの日の幸福を切り取ってしばらく新居のリビングを彩るだろう。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works