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    ankounabeuktk

    @ankounabeuktk

    あんこうです。オル相を投げて行く場所

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    風邪はうつした方が早く治るらしいよ、ためしてみる?→ばか!の診断結果より

    部分点にも救済を【オル相】 最近急に寒くなりましたねえ、なんて声が聞こえる。
     本当この季節は着る物の調整が大変なのよと言うミッドナイトはいつもの格好をしていたので、マイクはそれに触れず、いつもならとうに来ていてもおかしくない時間なのに未だ昨日の退勤時のままの同僚の机を眺めていた。
    「オールマイトさん、なんか聞いてます?」
    「何を?」
    「いや、これ」
     指で机を示すとオールマイトも壁の時計を見上げ気づいたようだ。意識していなかったということは、彼は相澤が遅れている原因を知らないということだろう。
     ここの二人がどうも仲が良いことにマイクは気付いている。不躾に言うならばお互い腹を探り合いながら更に仲良くなろうとしている、それとももう完成してしまっているのかの進展度は不明だったが、職員室でも誰も言葉には出さないが見守る空気が出ていることは間違いない。
    「何も聞いてないね。確かにいつもなら来ているし電話をしてみようか?」
    「あー、じゃあお願いします」
     慌ただしい朝の寮の玄関でもその姿を今朝は見ていない。昨夜はいつものように残業して、相澤が最後職員室に一人残っていたことをマイクは覚えている。具合が悪そうだったかと言われれば機嫌は悪そうだったという記憶しかない。それともあれは具合の悪さを隠すための不機嫌だったのだろうか。
    「あ、相澤くん?」
     オールマイトの席から声がする。電話は通じたらしい。話しながらも職員室のドアが開くかと眺めていたが、それは聞こえてきた会話の片方で「ない」とわかった。
    「熱? 風邪かどうかは自己判断しちゃ駄目だよ。一限終わったら様子を見にいくから寝てなさい」
    「どうしたの、イレイザー風邪でも引いたの?」
     話に首を突っ込んだミッドナイトが『やあねえ、急に寒くなったのに裸で寝てたんじゃないの』などと言ったところでちらりとマイクは電話を切ったオールマイトの反応を横目で窺う。
     疚しいことはないのかむせて血を吐くような素振りはない。ミッドナイトの揶揄より相澤の熱という展開に頭の処理速度が目一杯なのだろう。
     途端にテンパり始めたオールマイトの授業の支度を見兼ねてマイクがぽんと膝を打つ。
    「じゃあ今日はイレイザー体調不良でお休みってことで、皆さんフォロー全力で宜しくお願いシャースOK?」
     よく通る声にその場にいた全員が返事をした。
    「マイクくん、ありがとう」
    「礼なら治ったイレイザーに言わせますんでオールマイトさんは教室へどうぞ」
     あっあっそうだね! などと慌てるオールマイトの墓穴を温い視線でスルーしてやったところでチャイムが鳴る。



    「と言うわけでマイクくんがくれたゼリーとスポーツドリンク、食堂で作ってもらったおじやと」
     何もない相澤の部屋へオールマイトが持参したのは両手一杯の荷物だった。
     朝の電話の時点では声は掠れていたが喋ることはできていた。電話で起きた相澤が時間を見て漁って出勤しようとするのを、寝てなさいと言う言葉がベッドに縫い付けることができたのは僥倖でしかない。フラフラで職員室にやってきたところを強制退場させられる未来が見えて、それならば回復に時間を費やした方がマシだという合理的判断ができたなら熱に浮かされながらも相澤の頭は正常だったと言うことだ。
     だが今の状態は確実にそれより悪化している。
     ピ、と体温計が鳴った。
    「貸して」
     オールマイトが差し伸べた手を無視して相澤は自分の左脇に挟んだそれを掴んで持ち上げ、数字を見て舌打ちだけをした。オールマイトは触れなくてもそばに寄せるだけで熱い相澤の手から体温計を取り上げる。
    「三十八度。保健室には連れて行けないか……」
     抱き上げて移動するにしても、例え大判のバスタオルやタオルケットで今の相澤をぐるぐる巻きにして連れ出すのが得策かどうかオールマイトには判断ができない。
    「薬飲んで寝てりゃ治ります」
    「声もひどいな」
    「差し入れ、ありがとうございます。うつしたくないのでどうぞお帰りください」
     ゴホ、と手で口を覆い相澤はベッドから無理やり体を起こした。
    「駄目だよ寝てなさい」
    「寝るための準備です」
     相澤はまずスポーツドリンクのペットボトルを半分飲み干し、次いで愛飲しているゼリーを秒で吸い上げ殻にした。呆気にとられるオールマイトの目の前でミッドナイトに持たされた鎮痛解熱剤の用法用量の欄をチラ見して白い粒を二錠口に含み残りのスポーツドリンクを顔が見えなくなるほど呷って一気に飲み干す。
    「ありがとうございます。あと寝るだけなんでとっとと学校戻ってもらって良いですか」
     ベッド横のゴミ箱にかこんと空のペットボトルが投げ入れられる。
    「あ、うん」
     もう少し手間のかかる対応を求められる気持ちでいたオールマイトは、優等生みたいに対処してさっさと背を向けて布団に潜り込む相澤にじゃあまた後で来るから……と言うのが精一杯だった。




     とにかく不快な感触に魘されて相澤が目を覚ますと、全身からありえない量の汗が吹き出してそれを吸い込んだ服が恐ろしいほどに重く肌に張り付いている。
     外は明るい。
     まだ布団を出しておらず、夏のまま使っていたタオルケットまでしっとりと水分を吸って圧し掛かっている。
    「……あ」
     確認のために恐る恐る声を出してみる。見舞いに来たオールマイトに言葉をかけた時よりは少しマシになっていると思う。これだけ汗を掻いたなら熱は下がっていると思いたかったが、とにかく今はこの気持ち悪い服を脱ぎたい。
     相澤はベッドから降りると全裸になって新しい下着とシャツを羽織った。乾いた布を纏うだけで気持ちが落ち着く。見上げた時計は三時を回っていた。
     ぐしょぐしょの重たい服をランドリーボックスに無造作に投げ入れ、オールマイトが置いて行ったスポーツドリンクの二本目を開けた。そんなつもりはなかったがやはり一気に飲めてしまって、あの汗の量ならこれくらい補給しないと駄目だろうなと考える。すっかり汁気を飯に吸われたおじやを綺麗に平らげ体温計を脇に挟んでベッドにもたれてしばしぼんやりしていると突然ドアが開いた。
    「……相澤くん、起きてて大丈夫なの?」
    「オールマイトさん。何しに来たんです」
    「何って君の様子見に」
    「取り敢えず元気です。入らないでください」
    「なんで?!」
    「うつしたくない。喋らせんな」
     少し声を発しただけでいがらっぽくなってしまってコホ、と咳が出る。咳き込んだ相澤にあわあわと寄ってくるオールマイトを人の話聞いてたのかよと睨み上げるが、それには全く怯まない。
     ピ、と体温計が鳴った。
     取り出そうとする相澤の手の横をすり抜けてオールマイトが体温計を先に掴んだ。
    「七度二分」
    「平熱でしょう」
    「うーん」
     オールマイトの手が相澤の前髪を持ち上げるように額に触れた。額を覆っても余りある指の長さに熱で更に充血した目を見開いて硬直する相澤の心中など何ひとつ慮らないオールマイトの所作。
    「まだ熱いよ。寝なさい」
    「……バスタオル」
    「何に使うの?」
    「汗掻き過ぎてベッドが濡れて気持ち悪いんで」
    「じゃあ私の部屋で寝なさい。その間に乾燥機をかけてシーツの洗濯もしてしまうから」
    「いやおかしいですよね俺があんたの部屋で寝るの」
    「事情があるんだからいいじゃない。何か問題でも?」
    「……」
    「みんなまだ帰って来る時間じゃないから今のうちに移動しておけば大丈夫だよ。ほら早く」
     そういえばまだ終業時間でもないのに何故この人はここに居るのか。まさかクラスを放置してこちらに来たのではあるまいな。優先順位の相違で口論になるのはいつものことだが、くどくどと話をするにも喉の不調はよろしくない。
     相澤の腰を押して部屋の移動をエスコートするオールマイトに訝りの視線を投げれば、苦笑したような返事が降る。
    「私は午後はずっと空いてたからその時間で君の仕事できる限りやっておいたし、ホームルームならマイクくんが替わってくれたよ。早く君のところへ行ってやれって追い出されてしまったんだ」
    「なんで」
     オールマイトが相澤の元へ早く行く必要があるのか。風邪は自己管理のなさが招いたもので、オールマイトの貴重な時間を風邪引きの同僚の世話に当てさせるなど無駄遣いにも程がある。
     だがそんな文句を言う前に相澤はあれよあれよとオールマイトの部屋に連れて来られたし、シーツを取り替えようとするオールマイトをそんな無駄なことしなくて良いと手で制して説得される前にベッドに潜り込んでから一瞬で後悔した。
    「うぐ」
     滲み出た呻きを聞きつけたオールマイトが血相を変えて顔を覗き込んでくる。
    「どうしたの?! どこか痛い?!」
    「いえ」
    「でも相澤くんの顔」
    「なんでも、ないです」
    「えっ、ベッド臭かった? 私加齢臭してる?」
    「いえ。むしろ、いいにおいです」
     なんとかそれだけを搾り出して相澤はまたオールマイトに背を向けて体を丸めた。なるべく息を吸わないように浅く呼吸をすると、それが熱のある人のそれに思われたらしく背後で心配そうにしているオールマイトの気配が消えない。
     好きな人の匂いは安心と興奮を同時に想起させる。
    「じゃあ私、君の部屋のもの洗濯して来るから」
     自分でやりますからと言っても聞かないなら黙って頼んでしまった方がいい。すみません、と謝意を告げるとオールマイトは任せてくれと明るく告げた。
    「いい子で寝てるんだよ。あっスポーツドリンクないんだった。後で買って来るから間に合わせだけどお水置いておくね」
     冷蔵庫から出されたミネラルウォーターのペットボトルが枕元にそっと置かれる。
    「ありがとうございます」
    「うん」
     ぱたんとドアを閉じた音は聞いた。まるまる午前中寝たのだから眠れるものかと思いながら目を閉じたが、オールマイトのベッドでオールマイトの匂いに包まれるという事実は弱っている相澤には穏やかな眠りを連れて来る。
     次に目を覚ました時、時間はわからなかったがもう日は暮れていると感じた。室内の明かりがついていたからだ。
     背中の方からぺらり、ぺらりとゆっくりページを繰る音がする。オールマイトが本を読んでいるらしい。
     横になったまま目を開けて相澤はじっと壁紙を見る。呼吸を繰り返して自分の状況を確認する。汗は先程のようなひどいものではない。目を閉じた時のじんわりと熱が伝わる実感もない。声は発してみないとわからないが体調は九割がた回復したと言っても良いだろう。
     オールマイトに礼を言って部屋に戻ろう。
     そう決めてむくりと体を起こした相澤に気付き読んでいた本を閉じてオールマイトが微笑んだ。
    「おはよう相澤くん。気分はどう?」
    「……あんたのベッドは緊張します」
    「爆睡してたよ?」
    「緊張してても眠れるタチなんで」
    「便利だなあ」
     言いながら伸ばして来る手を黙って目を閉じて受け入れる。額に触れ、頬を撫で首を確認するように包んだ手は満足そうな表情の元に戻って、それが平熱あることを相澤に伝えた。
     喉の調子も悪くはない。
    「治ったとは思うけど、今晩はまた何かお腹に入れたらすぐに寝るんだよ」
    「さすがに寝過ぎで眠くないです」
    「子守唄でも歌ってあげようか」
    「今はご長寿番組となった年末ヒーロー歌うま選手権を第一回からずっと番組出演を固辞し続けたあなたが?」
    「よく知ってるなあ。緑谷少年に聞いたのかい」
    「……一般常識でしょ」
    「そうかな?」
    「今何時ですか」
     深堀りを恐れて相澤は話を逸らした。
    「七時を回ったところ。君のスマホ持って来ておいたけど着信はなかったよ、大丈夫」
    「そうですか」
    「ご飯どうしよう。消化のいいものがいいよね。うどんとか」
    「ふた玉ください」
    「元気だね?」
     でも元気になってよかった、とオールマイトはくしゃりと相澤の頭を撫でて立ち上がる。
    「心配したもの。マイクくんに風邪はうつせば早く治るって教えてもらったからそうしようかと思ってたのに」
    「あんたそれ騙されてますよ」
    「え?」
    「常識で考えてください、自己免疫で治すモンを他人にうつしたからって早く治ると思います? そんなのただのキスしたいやつの言い訳」
     そこまで吐き捨てて相澤は分かりやすく言葉を切りしまった、という表情を浮かべてしまって慌てて手で隠す。しかしオールマイトには全部見下ろされていたから、気まずくて視線も上げられない。
    「……キスの言い訳」
     オールマイトがぽつりと呟き、マイクのアドバイスの裏の意味を知って相澤と同じポーズをする。
    「なるほど……」
    「マイクは明日俺がシメますんで」
    「いや」
     半殺しにしかねない凶悪な顔を浮かべた相澤を制してオールマイトはその場にすとんとしゃがみ込んだ。相澤と視線の高さを合わせる顔が仄かに赤い。
    「その。試してみたいと言ったら怒るかい」
    「何を?」
    「だから。うつしたら、治るかどうか」
     それはつまり。
    「病人の寝込みを襲う趣味がお有りで?」
    「そそそそうだよね、ごめん! 忘れて! 私はヒーローに相応しくない言動をした!」
     赤らんだ頬を更に染めて全力で否定して再び立ち上がって逃げ出しそうなオールマイトの腕を掴む。
    「え」
    「あなたの今のそれ、ヒーローとしてはどうかと思いますが。恋人としてならまあ、わからなくもないです」
    「わからなくも」
    「……でも俺、あなたに風邪うつしたくないので、やっぱりやめときます」
    「そんな殺生な!!」
    「……したいんですか」
    「そりゃあ、君が許してくれるなら私はいつだって君に触れたい」
     ぐっと顔を寄せて来るオールマイトの熱の篭った視線を受け止めてしまって、自分がこの顔に弱いのだと何度でも思い知らされる。
     ああ、こんなことを言い合うなんてやはり自分はまだ本調子ではないのだ。
    「……ばかですね」
    「人は恋をすると馬鹿になるって言うじゃないか」
    「俺は馬鹿なオールマイトさん見たくないです」
    「それは無理な相談だ」
     頬に手が触れて。伸びた指先が耳で遊んでいる。
     唇が触れ合いそうになるほど近くにいるのに最後の一線は守られていて、求める視線を間近で覗き込むことができない。恥ずかしく、また、目が合ってしまったら拒否などできるわけがないのだから。
    「風邪、うつしたく、ないので」
    「私は風邪引かないから大丈夫」
     なんだその根拠のない理由と思うと同時にオールマイトは風邪引かなそうだという不思議な説得力が正常な思考を遮る。
    「相澤くん、キスだけ。だめ?」
    「……キスだけじゃ我慢できなくなるから嫌です。うどんふた玉煮てきてください。その間に俺シャワー浴びて来るんで」
    「待ってさすがに私でも今日の君抱くのは罪悪感がすごいぜ」
    「汗臭いから洗うだけですけど?」
    「早とちり!!」
     崩れ落ちるオールマイトを笑って見下ろし相澤はベッドから降りる。風に乗って自分の服からただようのは愛しいオールマイトの匂いだ。
    「前言撤回します。馬鹿なあなたも結構可愛いですね」
    「治ったら覚えておくんだよ……」
     恨み節の宣戦布告に手を伸ばしてオールマイトが立ち上がるのを手助けする。
    「たまご入れてください」
    「貰い物のかまぼこもあったはずだからそれも入れるね」
    「海老天」
    「残念ながらそれは期待に応えられないなあ」
     外に出ようとドアに近づいたところでふと目が合ってそのまま降りてきた唇を目を閉じて迎える。
    「……うつるかな」
    「飯食ったらもう一回試してみますか」
    「そうしよう」
     ワクワクが止まらない顔でドアノブを回すオールマイトは今夜、相澤を寝かせてくれるのか。
     全ての答えは明日の朝の結果発表待ちである。
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    ankounabeuktk

    DONEお肉さんとやっさんさんのピストロパロの感想文です。
    慣例打破【オル相ピストロパロ】 人の口ん中を散々に舐め回した舌がゆっくりと引き抜かれる。その海のような色をした目は俺を見ているようでいて、きっと自分の世界に入っている。
     テイスティングとはよく言ったもんだ。この人は俺にディープなキスをしてるつもりはないんだろう。俺の口の中に残ってるワインの風味を納得がいくまで探っているだけだ。
     酔った勢いで唇を触れ合わせて伝えた方法は向上心の塊のような人のお眼鏡に適ったらしい。再び求められれば断る理由はどこにもなかった。濡れた唇を重ねて微かに残る香りを味わうだけだったのに、最初に舌を差し込んだのは向こうからだった。
     あの時は求めていた手応えが得られなかったのか難しい顔をして眉が寄せられていたから、風味がわかりにくかったのだなと思った。入って来た舌は上右頬の内側と歯の間からゆっくりと左端まで動いた後、そのまま下に移って反対へ戻って行く。その後、気を散らすまいと身動きを止めた俺の上下の歯の間から奥へ滑り込んで来る。真ん中に平たく寝転んでいる俺の舌を一周、猫の挨拶みたいにさらりと流して舌は離れた。
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