5月第3日曜【オル相】 拡声器を通したような人の声と発砲音。
天気の良い日曜の午前中、遅い朝飯のために近所のパン屋に歩いて向かっていた俺と俊典さんは、聞こえてきたそれに歩みを止め同じ方を向いた。
一瞬敵と悲鳴かと浮かんだ可能性は、一緒に流れてきたお決まりのBGMと子供達の歓声に掻き消える。
「運動会かな」
「そういう時期ですもんね」
最近俊典さんが気に入って通っているパン屋は住宅街の中にある。からからとベルの鳴るドアを開けると、広くない店内には先客が二組いた。片方はおんぶ紐にチューリップハットを被った赤ん坊を背負った女性と、もう一人はピクニック籠を持った年配の女性だ。胃袋と相談して、俺の持つトレイに俊典さんの選んだパンと俺が食べたいと思ったパンを乗せレジに並ぶ。
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