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    ankounabeuktk

    @ankounabeuktk

    あんこうです。オル相を投げて行く場所

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    関係を隠していたのに、ざわがマイトを好きすぎてばれちゃう話というリク。

    テンペスト【オル相】 周囲に知られると面倒臭い。色々な意味で。校長は何も言わないだろうが、同じクラスの担任と副担任の交際というのは生徒的にも保護者的にも絶対に一瞬の思考停止を生むだろう。
     万が一の批判は受け入れるつもりだし疾しいこともないから堂々としていればいい、の一言に尽きるけれど、大々的に交際を告知するなんていうのは相澤の主義にはあまりにも反する行為だ。
     めでたく思いが通じ合い、大人の割には初々しく辿々しい触れるだけのキスを一度した。なんとも言えない気恥ずかしさと嬉しさの中で相澤の懸念点だったそれを秘密にした方がいいかと申し出て来たのはオールマイトの方だった。
    「俺としては願ったりですが……」
     切り出す前に気を遣われ、行き先を失った強い意志が相澤の胸の辺りで漂っている。
    「私としては全世界に君との交際を知らせたいんだけど」
    「すみませんがお付き合いはなかったことにしてください」
     一瞬で真顔に戻り踵を返した相澤の肩をオールマイトがしっかりと掴む。
    「待って待って待って!しないから!しません!君が嫌がることはなるべくしない!誰にも言いません!」
    「そうですか」
     力を抜いた相澤をどさくさに紛れて抱き締めて来るオールマイトの温もりに、まだ素直に体に預けることはできない。それでも、回された腕にそっと手のひらを乗せて触れる。
    「……では、そのようにお願いします」
    「うん」
     とは言え、これまでの様子を観察するにオールマイトは己の感情面においてはわかりやすいタイプだ。少し振り返って見上げただけで花でも咲き誇りそうに微笑むだけで「相澤くん大好き」という幻聴が聞こえて来て、相澤は捕縛布を引き上げて顔を逸らす。
     面と向かって飛んでくる好意をどう受け止めて良いかわからない。しかしそんな様子すらときめきの眼差しで見つめて来るオールマイトの甘ったるい愛情が、嫌かと言われるとそうではないのが一番困る。
     惚気合うカップルの気持ちが今なら少しだけわかった気がして、相澤は緩んでいる自覚のある口元を引き締めようと必死だった。


     それからしばらく、交際は順調だったと言える。
     毎日のように学校で顔を合わせ、会話をする。相澤が拍子抜けするほどオールマイトは態度を変化させることも、隙間に匂わせを捩じ込んでくることもなかった。色々なことに忙殺されて、交際をしている事実すら認識を失っていく。たまに交わすメッセージだけがあのキスが幻覚でなかったと教えてくれるけれど、何もできないまま感情だけがただ燻り続けた。
     職員室でパソコンに向かいエンターキーを押したまま数秒寝落ちる。恐ろしい量の改行をされた書類を前に、細切れ睡眠の限界を感じた相澤は夕刻の騒がしい職員室を避け仮眠室まで向かいアラームをセットしてベッドに倒れ込んだ。
     窓の外から校庭で活動している生徒たちの賑やかな声が聞こえて、それ以降の記憶がない。
     ピ、アラームの一音目が響いた瞬間右手が反射的にそれを止めようとするが、いつもの感覚で伸ばした手が掴んだのはスマートフォンではなかった。
    「……?」
     緩やかに覚醒した意識で目を開くとベッドの横にはオールマイトがいて、オールマイトの手もまたアラームを止めようと相澤のスマートフォンに伸びていたのだ。オールマイトの手を甲から包むように握っていたことに気付き、すみませんと手を離す。
     何の他意もないすみませんだったはずなのに、付き合っている事実も薄らぐ程に二人の間にはあれから何もないのに、触れた手が離れてしまったことが余りにも惜しい。
     名残惜しさを覚えるほどに焦がれていたことが信じ難く、しかし無視できないくらいに、それは其処に在った。
     相澤は黙って唇を噛む。
     出所もわからない衝動に耐えるために。
    「相澤くん?」
    「……いえ。何でも」
     オールマイトはベッドから降りようとした相澤を制するように軽く腕を回した。
    「キリのいいところまでやったら、うちにおいで。君はちゃんとご飯を食べて寝た方がいい」
    「遠慮します」
    「何故?」
    「……あなたの家になんか行ったら、余計寝られやしません」
     相澤の返答にきょとんとしたオールマイトを押しやり、相澤はベッドを降りた。馴染みのない動きをする表情筋を手のひらを当ててぐにぐにとマッサージする。このまま戻ったら察しのいいミッドナイトかマイク辺りに何かを悟られ兼ねない。
    「今日は流石に帰りますよ。これ以上の徹夜は効率が落ちます」
    「うん。だからあたたかい料理とほかほかのお風呂とふかふかのベッドで君を癒したいんだけど」
    「ですから、遠慮します」
    「理由の説明になってないよ」
     今日に限って追い縋るオールマイトを雛のように引き連れて相澤は廊下に出た。寝起きの肌に気温は冷たい。肩をすくめて足早に職員室に向かう校内は下校時刻を過ぎていて生徒の影はなかった。
    「察してください」
    「私は鈍いので察することができないんだ」
    「寝る時はひとりがいいんで」
    「寝室は別にするよ」
    「枕が変わると眠れません」
    「君どこでも寝てるだろ」
    「なんですか今日。随分と粘りますね」
    「君が心配なんだってば」
    「お心遣いは有り難いんですが」
    「……私のこと嫌いになった?」
     相澤より先にオールマイトの足音が消える。
     どんな表情をしているかなんて見られなかった。誤解を解くためには、ボタンを掛け違えているのだと教えるためには、此方の胸のうちを晒す必要がある。
     此処にある嵐に巻き込みたくなんかないのに。
     何もしていないからと言って、何もしたくない訳じゃない。
    「違います。あなたの家になんか行ったら、興奮して余計に寝られないから言ってるんです」
    「興奮して?」
     まだピンと来ていないオールマイトに今度こそ相澤は向き直って理解できるように繰り返した。
    「いい大人なんで交際相手の家に行って飯食って風呂入って寝るだけで済ませられる自信がねえって言ってるんです、よ……」
     理解させるために早口に吐き切ったセリフの最後が不意に揺れた。自分を見ていたはずの相澤の視線が自分を通り過ぎて宙を凝視しているのを感じ、オールマイトもまた不穏な空気に振り返る。
     明かりの届かない曲がり角の影からこちらを覗く、にたぁと浮き上がる笑み。
    「そうね、いい大人は交際相手の家に行ったらご飯食べてお風呂入って、他にもヤることあるわよねぇ」
    「行きましょうオールマイトさん」
     怨霊めいたミッドナイトと相澤を交互に見比べるオールマイトにさっと声を掛けて、相澤は恐るべき速さで歩き出した。
    「ねえイレイザーちょぉっとその話詳しく聞かせてくれなぁい?」
    「お疲れで幻聴でも聞こえたんでしょうミッドナイトさんも早く帰った方いいですよ」
     敢えての演出か、悪霊のような距離の詰め方をしてミッドナイトは相澤に迫り来る。
    「幻聴かしら?私の耳にはしっかりとイレイザーがオールマイト大好きって言ってるようにしか聞こえなかったんだけど」
    「オールマイトさん!何ニヤニヤしてんですか!」
    「ごめん」
    「ねえ、オールマイトにもそう聞こえたわよね」
    「ミッドナイトくん、その件に関しては私に発言権がないんだ」
    「沈黙は肯定よ?」
    「ミッドナイトさん。不毛な言い争いは時間の無駄です」
    「争ってなんかいないわよ。私の耳は事実を捉えただけだもの。それともイレイザー。あなた、オールマイトのことが嫌いなの?」
     聞き覚えのある言い回しに相澤がぐっと顔を歪ませる。
    「お約束だから明日の朝聞いてあげるわねえ。ゆうべはお楽しみでしたね、って」
     勝ちを確信したミッドナイトのウインクから飛び散るハートと陶酔の表情に、反論の余地はどこにもなかった。
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    江家の晩餐(含光君の恋文・番外編)江家の晩餐

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    「……」
    「……」
    「……」

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