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    たまちん

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    たまちん

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    留文ワンライ
    「墨」※転生記憶ありの現代パロ
    (書いててなんですが美味しいですよ。ピリ辛で)

    #留文
    leaveAMessage

    黒の紅も悪かない室町の世に生きた時代、それはまあ大概食べれるモンは食べてきた。が、流石に産まれて初めて現物を目にすれば「本当に食べ物か?」と疑う見た目に文次郎は冗談でもなく引いていた。
    そしてそれを席の向かいで美味そうに頬張る留三郎にも。

    「何だよテメェ、そのゲテモノ食いをみるような目は。ちゃんと食いモンだから店に出てるんだろうが」

    一方、せっかく美味い飯を食べに来ているのに、まるで不味い物を食べる様を非難するかの如き目線に留三郎は噛み付いた。心境としては「イカ墨パスタぐらいお前も知っているだろう文次郎め」である。

    そう、犬猿の仲と言われているクセに、何故か二人仲良く洋食屋で昼食をとっているのである。
    それもこれも残業のせいだった。皆で行こうと約束していたのに、結局他の4人に乗り遅れた2人が「本当にあの店の食事は美味かった」と煽る小平太と仙蔵にムキになり、このままでは引けぬと翌日にリベンジを決行したのが今のこの状況だった。
    なお完全に対抗心の勢いのまま来たので後々犬猿2人きりの食事をからかわれるであろう事は考慮していない。負けず嫌いも考えものである。


    話を戻すが、同期の4人絶賛の洋食屋で遅めの昼をボックス席でなぜか向かいあい食べているのが今現在。
    文次郎の皿にはオーソドックスなトマトソースのスパゲッティが盛られている。のに対し、留三郎の皿に盛られていたのは黒々とした墨に塗れた、今では珍しくとも何ともないメニュー「イカ墨パスタ」であった。

    確かに、確かに食べ物であることは文次郎とて理解している。してはいるが、いざ実物を見て受け入れられるかどうかはまた別の話なのである。

    「いや、な…。食いもんなのは知ってるんだ。知ってるんだが、どう見ても…墨汁……」

    この男にしては珍しく、目線を逸らせながらごにょごにょと口篭る。妙な所で真面目な性格をしているこいつの事だ、食材に対しての敬意に欠けると自覚している故だろう。だが、知識で理解出来ても精神が受け入れられない物は、どうしたって中々受け入れ難いものである。

    「あっ、あー…。そういやお前会計委員会だったもんな」

    思い返せば忍びの卵時代、この男は鬼と冠が付くほどのギンギンの会計委員長だった。
    他委員会を相手取り、予算案も生徒もちぎっては投げちぎっては投げの武闘派な印象が強いが、本来は収支計算をしまとめるバリバリのデスクワーク委員である。ましてやペンも鉛筆も無いあの時代、腐る程墨を見てきたであろう目だ。
    留三郎も前に一度、1年は組の委員の字の校正に、6徹目の夜明けで半泣きになっているのを見たことがあった。徹夜続きの疲労もあり正気で無かったことは伺えるが、それを踏まえても流石に気の毒だと思った覚えがあった。
    まあつまり、墨が食材でなく文具に見えるんだな。
    そうフォローを入れてやれば文字郎は珍しく頬を染め恥ずかしげに頷いた。

    「だが、これしきの理由で好き嫌いなど…」

    ぐぬぬと何時にも増して眉間に皺を寄せ唸る文次郎。三つ子の魂なんとやら。食堂のおばちゃんに叩き込まれた「おのこしは許しまへんで」は100どころか600までしっかりと刻まれている様子。
    コレに関しては、勿論他人事ではないのは言わずもがなである。

    遥か過去の後輩宜しく悩む姿に、留三郎の胸に少しばかりの出来心が芽生え始めていた。
    食わず嫌いの克服には勢いが肝心なのである。まあそもそも、文次郎でなく自分の食事であることはさて置いて、だ。

    「文次郎、ちょっと耳貸せ」
    「?おう…」

    人差し指でちょいちょいと手招くと素直に顔を寄せる文次郎。まるで猫でも呼ぶような仕草なのに、怒るどころかされるがままに従うのがどうしてかたまらなかった。余程イカ墨パスタが食えない事に気を取られているのだろう。昔から変わらない、ふとした拍子の無防備さに闘争心とは別の疼きが留三郎の胸に走った。
    ああほんと、愚かで可愛い男である。

    「んン、むぐっ!」

    逃さぬ様両手で頬を包み間髪入れずに唇を押し当てる。驚きのまま開いた亀裂に舌を捩じ込み、歯が閉じられる前にひとこすりして素早く離れた。
    ぽかんと呆気に取られた文次郎を尻目にぺろりと自分の唇を舐めあげる。うん、トマトソースの味も絶品である。

    『バカヤロウ!お前、昼間!外!!』

    きっちり3秒ほどして我に返った文次郎は、周りをキョロキョロ見渡したあと叫ぼうとし…ぐっと思い直して苛立ちげにコンコンとテーブルを人差し指で叩き始めた。
    勿論ただの騒音ではない、懐かしの暗号音だった。なるほど流石腐っても6年い組の男である。
    しかし気付いてないのか、それとも素なのか。口付けそのものに怒らない文次郎が留三郎にはどうしても可愛く思えてたまらなかった。

    「ほら、食えるだろうお前」

    クククと腹を押さえ笑いを噛み殺せば、顔を赤くしたまま「寄越せ!」とイカ墨パスタの皿を奪われた。そしてフォークを突き立てると同時に己の皿をこちらへ押しやる文次郎。どうやら2人の皿を分け合って食う事にしたらしい。
    未だ笑い収まらぬ留三郎の視線の先。厳つい癖に可愛らしい思考をする男の唇には、先ほどの口付けで墨が薄く履かれていた。


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    たまちん

    DONE大遅刻参加留文ワンライ
    お題「隠し事」
    ※特殊設定あり
    一万年と二千年前から潮江文次郎には奇妙な友人がいる。
    名を食満留三郎。自分含め、揃いも揃いに時代遅れの古臭い名をした友人たちの中でもとりわけ変わったやつである。
    この男、後輩の面倒みもよく、今時珍しい中小エスカレーター式の学校で小学校の後輩が泣きついてきた時には甲斐甲斐しく世話を焼いてやってるし、家が隣同士で生まれた時から付き合いのある共通の友人、伊作にも優しい姿を見て恋に落ちる同世代の女子は決して少なくなかった。が、引く手数多である筈なのにこの男、成人式すら終わり30を目前にした今でも恋人1人出来た試しがなかった。
    半分は「そりゃそうなるだろうな」と思うが、もう半分は全くもって分からない理由故だった。
    留三郎はこの俺が言うのもなんだが気立てはよく、男から見ても付き合いやすいいい奴である…いい奴なのだが何かと互いの癇に触る事多々あり。口を開けば口喧嘩、寄れば触れば小突き合いと自他ともに自覚するほど犬猿の仲なのである。不思議に思われるだろうが、普通に会話したり食事したり、幼馴染連中と宿題をやったりは日常茶飯事の事なのである。なのだが、互いに気付けば諍いに発展しともすれば殴り合いの喧嘩まで発展する。
    2780

    たまちん

    DONE留文ワンライ大遅刻参加
    お題「肉」
    非転生系現パロです(大学生か社会人かは特に決めてない)
    沢山食べる君を見たいじゅうじゅうと脂を滴らせ、網の上で焼かれながら若い胃袋を誘惑に誘うソレを見つめながら、文次郎は「何だかなぁ」と胸の内で独り言ちた。
    芳しい香りを放つ煙の向こう、艶々とした白米に焼き上がったソレをのせ、くわっと大口を開き食われる方も光栄だろうと思えるほどの食べっぷりを見せるのは不倶戴天の犬猿の仲、食満留三郎その人である。
    文次郎の視線に気付いた留三郎が訝しげな顔をしたので、溜息をつきながら目を伏せ食べ頃になった肉を箸でつまみ上げた。
    いや、やっぱり何なんだこの状況はと再度文次郎は頭を悩ませた。


    事の発端は1週間程前、たまには外食でもするかと思いつくまま街に出た日に遡る。
    外食と言っても何を食べるかは特に決めてなかったので、取り敢えず目について気になった店に入ろうと彷徨いていた所、同じ様に身軽な様子でいた留三郎と目が合ってしまった。そのまま予定調和の様に口喧嘩からの小競り合い…からの大食い勝負が始まる事となる。不運にも、偶々2人の側で大食いチャレンジを開催していたラーメンのチェーン店があった故に。
    1885

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    SHIZUKa_moji

    MEMO留文
    メモに残ってたのでどこかに載せた再掲かも
    ふと、思い立っただけだ。
    たまたま行列が出来る程の団子屋があって、気まぐれに並んでみて、並んだからと団子を買い、 持ち帰る途中で偶然お前を見付けたから、団子をやろうと思った。
    「それだけだ」
    「………………なるほど」
    「なんだその間は!?」
    「いや、お前も大概だと思ってな」
    鍛練帰りの鍛練馬鹿は秋風吹く中で汗を垂らしている。
    「素直に俺への土産だと言えよ。甘い物なんかそんな食わない癖に」
    「食わない事はない!一本くらい食う」
    「ならなんで包み三つもあんるんだ」
    「これは伊作達用。これは後輩達用」
    「もう一つは?」
    「あーもううるさい!食うのか!?食わねえのか!?」
    「食う」
    くつくつと笑い出されて気まずいが、まぁいい。包みを一つ押し付けて去ろうとすれば、何故か腕を捕まれた。
    「な……なんだよ」
    「実は、鍛練前にちょっといい茶葉を手に入れたんだ。団子の礼に飲みに来い」
    あまりしない子供っぽい笑みを浮かべながら、言葉に挑発を含んでいる。これは嬉しい誤算かもしれない。
    「ならちょっと遅い月見でもするか」
    「いいぜ。月見が出来ればの話しだが」
    「っ、なんだよ。珍しくやる気だな」
    「お前が誘った 801

    たまちん

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    非転生系現パロです(大学生か社会人かは特に決めてない)
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    芳しい香りを放つ煙の向こう、艶々とした白米に焼き上がったソレをのせ、くわっと大口を開き食われる方も光栄だろうと思えるほどの食べっぷりを見せるのは不倶戴天の犬猿の仲、食満留三郎その人である。
    文次郎の視線に気付いた留三郎が訝しげな顔をしたので、溜息をつきながら目を伏せ食べ頃になった肉を箸でつまみ上げた。
    いや、やっぱり何なんだこの状況はと再度文次郎は頭を悩ませた。


    事の発端は1週間程前、たまには外食でもするかと思いつくまま街に出た日に遡る。
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    「食わない事はない!一本くらい食う」
    「ならなんで包み三つもあんるんだ」
    「これは伊作達用。これは後輩達用」
    「もう一つは?」
    「あーもううるさい!食うのか!?食わねえのか!?」
    「食う」
    くつくつと笑い出されて気まずいが、まぁいい。包みを一つ押し付けて去ろうとすれば、何故か腕を捕まれた。
    「な……なんだよ」
    「実は、鍛練前にちょっといい茶葉を手に入れたんだ。団子の礼に飲みに来い」
    あまりしない子供っぽい笑みを浮かべながら、言葉に挑発を含んでいる。これは嬉しい誤算かもしれない。
    「ならちょっと遅い月見でもするか」
    「いいぜ。月見が出来ればの話しだが」
    「っ、なんだよ。珍しくやる気だな」
    「お前が誘った 801