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    甘味。/konpeito

    800文字チャレンジだったりssを投げる場所

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    甘味。/konpeito

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    本日の800文字チャレンジ
    クロ+リン。旅立ちの日

    「リィンくん、本当に教官辞めちゃうの」
     もう何度目だろう。
     会う人会う人に同じ質問をされていたリィン・シュバルツァーは、ええそうなんですとこちらも同じ答えをトワに返した。三十三歳を迎えた今年、リィンはこのトールズ士官学院の教官を辞める。
     ひと通り、身の回り荷物を分別していく。捨てるもの。捨てないもの。捨てないもののなかから仲間に譲るもの、譲らないもの。譲らないもののなかから最後に、リィンが持っていくものを厳選した。
     持っていくものは、クロウから返してもらった五〇ミラ、家族の写真。それを何泊かの着替えとともに鞄に納める。仲間に譲り渡すものは全て、小包みに手紙を添えて送った。
     最後になる生徒たちの卒業式を終えて来期からの後任に引き継ぎを済ませたあと、リーヴス駅に向かう。行き先は決めていなかった。
    「おいおい、俺を置いていくつもりかよ」
    「クロウ……」
     駅構内に入るとすでに見知った顔がひとつあった。思わず他にも来ているのだろうかと探すが、あいにく俺ひとりだと笑われた。
    「さて、行きますか。死に場所探しの最期の旅へ」
    「ああ。そうだな」
     ふたり揃って列車に乗り込む。その後、ふたりの姿を見た者はいなかった。
     リィンが己の死期を悟ったのは、ちょうど一年前のことだった。
     元々父から譲り受けた心臓で、先が長くないことは自覚していた。死期が近いことが悟られたのはクロウくらいのものだが、すぐに誤魔化しが効かなくなるのは目に見えていた。だからこそ、この一年で後任探しや心残りのないよう努めてきたつもりだ。
     クロウはリィンの旅についていくと頑として譲らなかった。お互いに譲れない我を通して生きてきた自覚はある。早々に諦め、それなら一緒に死んでくれと冗談混じりに告げた。もちろんだと返され、ノリのよさに頬がゆるむ。
     最期に看取ってくれるのが唯一無二の相棒だなんて、なんて幸せな人生なんだろう。
     まだゆっくりと鼓動する心臓に手を添えて、クロウとともに死地を探しに旅立った。
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    さらさ

    MOURNING遅刻大魔王によるすったもんだクロリンがバレンタインデーにくっついて分校全体に知られるまで。ポイピク練習も兼ねてる舌先の魅惑


    「え、え~!?クロウくんにチョコレートあげてないの!?」

     トワの素っ頓狂な声が、第Ⅱ分校の食堂に響き渡った。七耀歴1208年、2月。もうすぐバレンタインデーだ、食堂やら寮のキッチンを貸し切っての菓子作りに女子生徒たちが浮足立っている。去年の同時期と言えばクロスベル解放作戦当日だ、直接参加した訳ではないとは言えど親しみある教官と生徒が参加するともなればムードもそれどころではなかった。実質、今年が初めてのトールズ第Ⅱ分校バレンタインデーである。男子生徒も一部落ち着かない様子ではあるが、それも今更と言ってしまえばそれまでなのだが。ともあれ、青春では割とお約束のイベントが差し迫ったことを踏まえ、生徒たちの押しに負けて食堂にやってきたリィンなのだが。

    「えっと、俺はクロウとは何もないですしチョコレートもあげてませんよ?」

    という言葉で冒頭に戻る。指し手であるミュゼでさえ予想外だったその回答に、誰もが頭を抱えた。この朴念仁め、は共通の認識であるが故に誰も口には出さないが。

    「で、でもでも!リィン教官はクロウさんのこととても好きですよね!?」

    ここでもユウナから容赦ない一 4406

    さらさ

    DONEエア小話 リクエストが指定なしとの事だったので
    「何かで互いに対して不機嫌そうにしてるクロリンが戦闘でも息ピッタリな話」
    です。リクエストありがとうございました。
    「……なんか、今日のクロウ機嫌悪くない?」
    「心なしか、リィンさんの機嫌も悪いような気がしますね」

     真・夢幻回廊、第五階層。最前線で戦うクロウとリィンを遠目に、後方支援役のエマとエリオットはそんな話をしていた。いつもだったらベタベタと言っていい程に距離が近いのが、二人ではありえないほどの常識的な距離だったし先程から二人で一度もリンクを繋いでいないのだ。一体何があったというのか、二人の様子を観察するにしても普段は砂糖を吐きたくなるほどドロドロに甘く見ていられないというのが新旧Ⅶ組どころか特務支援課他遊撃士等々の面子が出した結論だった。下手をしたら馬に蹴られかねない。そんな甘さを微塵も感じさせないまま、次から次へと魔獣を伸していく二人には最早感心せざるを得なかった。

    「なんというか、喧嘩したのか?」
    「それはあり得るかもしれないわね。でも……」

    サブメンバーとしてついてきているガイウスとエステルの視線は少し離れたところで戦闘を仕掛ける二人に向けられる。リンクはエマがリィンと繋ぎ、クロウはエリオットと繋いでいる。ダメージを受けることなく終わらせてしまうので、あまり意味がないのだが。
    1171

    さらさ

    DONEリクエストより「クロリンで指輪交換」でした。指輪を交換した勢いで誓ってもらいました。場所が場所だけどね!

    リクエストありがとうございました!
    誓いの環をその指に「買って、しまった……」

     十二月もまだ初旬、たまたま帝都に出たという理由だけで散策して見つけたシンプルな指環。ああ、あいつに似合いそうだと思ってうっかり買ってしまった物だったがこれを渡せる程の関係でもないという事は彼――リィンも分かり切っていた。一応、お付き合いしている関係ではある。だが余りにも空白の時間が長すぎた事、戦後の事後処理に追われて時間が取れない事が相まってしまい未だ実感が湧かないのが現実であった。だからこれは余りにも早すぎるというもので。そっとコートのポケットへと仕舞ったのだった。

    「やべぇ、買っちまった……」

     同時期、別の男もまた同じ事をしていた。たまたま見つけた最低限の装飾しか施されていない指輪。ああ、あいつの指にはめてしまいたいだなんて思っているうちに買ってしまった代物である。お付き合いを始めてそろそろ三か月、今度こそ手を離さないと誓ったものの状況がそれを許さなかった。彼らは別々の場所で必要とされ、帝国内を東奔西走するような日々である。言ってしまえば魔が差したようなものだと、彼――クロウは思う。なんせ相手は天性の朴念仁で人タラシ、所有痕の一つや二つ残しておかねば相手が近寄ってくる始末だ。その状況に頭を抱えていたのは事実だが、かといってここまでするつもりはまだ毛頭なかった。
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