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    さらさ

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    さらさ

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    「何かあって不機嫌そうなクロリンが戦闘では息ピッタリな話」の続き。やっとくっつきます。

    #クロリン
    chlorin

    付き合ってないのに痴話喧嘩は犬も食わない リィンとクロウの不仲騒動から数時間。第五階層の最奥まで回って《円庭》に戻ってきた面々は二人を除いて疲れ切った表情をしていた。余りにも不毛な痴話喧嘩、それでいて付き合っていないというのだから手に負えない。瞬く間にそれは広がり、新旧Ⅶ組は総出で溜息をつき、他の面々も事情を察したように苦笑いをしていた。一部生温かい目で見る者もいたようだが。

    「全く、本当にいいのかい?リィン君だって同じ気持ちを持っているのだろう?」
    「……あいつには悪いが、応えられるほど真っ直ぐじゃねぇんだ」

    テーブルを囲って、かつて試験班だった面々がクロウに詰め寄る。アンゼリカの言葉に彼は首を振った後、真剣に迫ってきたリィンの事を思い出す。構えば構う程、愛情と執着心そして独占欲が生まれ、その度にクロウは己を律してきた。果たしてそれは必要か、と。必要であるならばいくらでも利用できる。だと言うのに彼の場合はどうだ、根も真っ直ぐでたくさんの人から慕われている。そんな彼を利用するだなんて出来ないし、したくもなかった、これはフェイクでも何でもない本音であった。未だに《C》だったころの話も出してネタにするのは正直言ってやめて欲しいのだが。

    「嘘偽りない事が、リィン君への誠意だと僕は思うけどなぁ」
    「そうだよ、クロウ君はもっと素直になっていいんだよ」

    ジョルジュとトワの言葉に、クロウは俯く。分かっているのだ、そうである事は。偽らざる思いを伝えていいのならば溶かし尽くす程に思い知らせてやりたいのだ。どれだけ彼がリィンを好いているのかを。だが同時に理解しているのだ、自分がどれだけ傷付けてしまったのかを。だから戒めとして決めたのだ、遠くから幸せになっているのを見ているだけでいいのだと。

    「クロウ、君は案外生真面目だね」
    「おいおいゼリカ、自分で言うのもなんだがこんなに不真面目な奴世の中いねえぜ?」
    「アンちゃんの、言う通りだと思う」

    アンゼリカの言葉に、トワは賛同した。彼の本質はさり気無いフォローと気遣いにある。これ以上傷付かない事、それがクロウの望みだろう。それは三人とも分かっている。雁字搦めにされるまでに追い込まれるほど、そうしなければという意識が強いのだ。これを生真面目以上になんというのだろう。

    「まずはリィン君と話し合いなよ。君からの言葉を彼はずっと待っているんだろう?」

    ジョルジュの言う事は正論だ、だが出来ていたらとっくにやっているとさえクロウは思った。だからこれを曲げる訳には彼も行かないのだ。

    「今のままでいいんだよ。……最低な俺の事なんてそもそも忘れてりゃ良かったのに」

    そういったクロウの鳩尾にゼロインパクトが撃ち込まれる。彼は言葉で抵抗する事すら敵わないまま意識を失った。

     一方その頃、第六階層では。見兼ねた新旧Ⅶ組の女子たちがこぞって集まってパーティに入っては根掘り葉掘り聞く始末だ。リィンは隠すつもりなど毛頭なかった。自分の恋心を自覚していて、同じものをクロウが持っている。それだけで諦めない理由足りえるには十分だった。

    「寧ろ、貴方達なんでくっついてないのよ?」
    「クロウが頑ななのが悪い。寝てる間には告白できるくせに面と向かってはしてこないんだ。だからこちらから告白するなら起きている時にしろと言っただけだし」

    リィンは太刀を一薙ぎして壺を壊す。落としたアイテムを回収しながらラウラとフィーが話を続けた。

    「そなたら、もう学院にいた頃からべったりだったであろ」
    「ん。正直鬱陶しかった」

    言われてみれば、確かにそうかもしれない。Ⅶ組に入って来た後は特にクロウの行方を常に探していたような、そんな気さえする。だが第三者に指摘されるとそれはそれで気恥ずかしいものがリィンの中にはあった。

    「多分、クロウは自分が誰かの幸せに繋がるなんて想像もしていないんだ。立場とか含めると仕方ないのかもしれないけど。でも、それは違うんだってちゃんと知ってほしい」
    「あの、それならいっそクロウ先輩と距離を取ってみたらどうですか?」

    ユウナの提案に一同は首を傾げる。そして女子だけ集まって内輪トークをし始めた。

    「どうしてそう繋がるのですか?」
    「だって、リィン教官ってクロウ先輩の有無で大分態度変わりますよね?」

    それは確かに、と旧Ⅶの女子たちは思った。クロウが亡くなった後の彼がそれを証明している。五十ミラコイン一つで思い出して動揺してしまうような状態でクロウ無しに過ごせば自ずと態度へ出てしまうのは分かり切っているのだから。

    「それでいざ接触した時にクロウさんがどう思うかを確かめるんですね?」
    「なるほど。触れられない時間ほど二人の思いを焦がすものはないでしょうし」

    楽しそうに語るミュゼにため息をついて、趣旨そのものは間違っていない為肯定する。そうしてリィンを見やって、このまま探索を続ける事となった。第六、第七階層と攻略して《円庭》へ戻って来たリィンは他の面々とまたダンジョンの方へと潜ってしまった。クロウに一切声を掛けることなく、だ。

    「リィン君、クロウ君探しすらしなかったね」
    「ああ、いつもなら探すくらいはするはずだ」

    実際、件の男はベンチの上で蹲っているのだが。余程ゼロインパクトが効いたらしい。

    「……ああ、なるほどそういう事か」

    にやり、とアンゼリカは笑った。発案が誰かは分からないが、考えている事は分かった。そうともなればこのまま気絶させておく方がいいか、とリィンの探索班に加わったのだった。

    「ったく、ゼリカの奴加減ってもんを知らねぇのかよ……」
    「まあ、全面的にクロウが悪いんだから反省しなさい」

    数時間後、何とか復活したクロウは元凶に悪態づいたものの通りがかったサラにそう言われた。どうやら探索から戻って来たらしく、左右見渡したもののどこにもリィンは見当たらなかった。

    「あいつは?」
    「さっきからずっとここと階層行き来してるわよ。今は特務支援課とブライト家が一緒に行ったみたいね」
    「ったく、さっきからずっとだろ?いい加減休めばいいってのによ」

    リィンを除いたメンバーは交代で、行ったり来たり。そこにクロウが呼び止められる事がないのは、彼自身も不思議に思っていた。何かしただろうかと思ったものの思い当たる節しかなく、どれなのかがはっきりとしなかった。

    「あら、心配ならアンタがずっと一緒にいればいいじゃないの?」
    「……それとこれとは話が別だろ」

    確かに、片時も離れずにリィンといたい。それは本音だ。心配から来るものもあるが、一番は自分の中にある独占欲。例え同じ気持ちであろうと、リィンの持つものの方が純粋で綺麗なのだろう。クロウにはそれを穢す勇気は生憎持ち合わせていなかった。

    「リィンなら、もうとっくに大人よ。アンタが思っている以上にリィンには覚悟も度胸も据わってる。……嫌って程思い知ったんじゃないの?」

    ああ、そうだ。彼は心の中で肯定した。かつて、自分が《帝国解放戦線》のリーダーであった頃。いくら突き放しても追いかけてくる彼がどれほどの覚悟を持ち合わせたのか、《煌魔城》での戦いで嫌という程。そして未来を託そうとしても共に手を取る事を譲らなかった《第一相克》ではなおの事。

    「正面からぶつかってみなさい。フラれた時にはアタシが奢ってあげるから」
    「ったく、わーったよ!フラれたら絶対奢れよ!?」
    「はいはい」

    そう言って手を振ってるサラがなんと言ったか気付いていないのだ。――絶対あり得ないから安心なさい、と。

     何度目かの探索の後、リィンはまた戻って来た。さて次は誰と、と考えているとふとクロウと目が合った。そのまま目を反らそうとした瞬間、物凄い勢いで迫ってくる。逃げようと身を翻したものの、出遅れた為にそのまま腕を掴まれてしまった。

    「……どうしたんだ?クロウはカンストしてるから連れて行かないぞ?」
    「そう言う事が言いたいわけじゃねぇよ。ちょっと付き合え」

    そう言って腕を引くと、《円庭》の端の人気のないところまで来る。辺りを見回して、深呼吸するクロウに、リィンは首を傾げた。

    「リィン、面と言えば返事をくれるって言ったな?」
    「え?ああ。あの話か。もちろんそうだが」
    「好きだ、学院にいた時からずっと。だから付き合ってくれ」

    反らす事の許されない、意志の強い紅の瞳がリィンを射抜く。それに安堵して、花が咲くように微笑んだリィンは、ずっと待ってたという。

    「俺も、好きなんだ。クロウ、だから……よろしくお願いします。それから一発殴らせてくれ」

    余りにも遅すぎた告白に、リィンはとっくに限界だった。その後響いた打撃音は、痴話喧嘩として処理され後に『付き合ってもないのに犬も食わない事件』として語り継がれるのであった。

    END
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    さらさ

    CAN’T MAKE多分もう書かないと思われるオメガバースランロイの序章を見つけたので私のメンタル維持のためにあげておく

    バース性関係なく一緒にいたいαランディといつか来るだろう未来に諦めを抱いているβロイド


    このあとロイドくんがΩになっちゃっててんやわんやするんだろうなぁと思いつつも断念
     ずっと、思っている事がある。もしも自分がΩだったなら、この不毛な関係にも意味を持たせられたのではないかと。Ωとは第二の性にして産みの性。男女問わず妊娠し、出産する事が出来るのだ。そして対になる性、αと番関係を持つ事が出来る。俺には恋人がいる。ごく一般であるβの俺とは違う、約束された相手がいるはずのαの男だ。俺の心にどうしても惹かれたのだと言われるものの、俺には分かる。この関係にいつか終わりが来る事を。惹かれあう番に、俺が敵う筈もない。もし俺がΩだったとして、番になれるのなら。そんな叶いもしない願いを抱きながらいつか来る終わりに怯えながら今日も一日過ごすのだ。

     ずっと思っている事がある。もしも俺がβだったなら、愛している相手をこんなにも不安にさせなくていいのかと。言葉にはしてこないが、ずっと不安そうにしている事は気付いていた。恐らくそれは、俺の性に関係がある事だろう。俺が惹かれた相手はβだった。βというのは良くも悪くも普通で、実質第二の性がないようなものである。αやΩとは対極にいるような存在で、自分の意思で相手が決められる。俺達は結局フェロモンの匂いに充てられればいとも簡単に相手を変えてしまえるような最低な性だ、そんな相手と付き合っていられる精神性に最早脱帽だった。いつか運命やΩの匂いに充てられて今の恋人を捨ててしまったら。きっと俺は自分自身を殺したい程憎むだろう。仕方ないって笑うあいつの姿が目に浮かぶ。諦念を抱かせる位ならいっそ俺がβになるかあいつがΩになればいいのに。そんな叶いもしない願いを抱いて今日も一日人知れず怯えるあいつの背に歯噛みしながら過ごすのだ。
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    SPUR ME12月12日に出す予定の展示品を尻叩きとサンプルを兼ねて一章丸々アップ。こんな感じのクロリンの話が五感分連続していく感じです。シリアスが続きますがハピエン(にしてみせる!)

    ちなみにタイトルは全て「五感に関する部位のことわざ」を当てはめています。変わるかも。
    医者と味噌は古いほどよい リィンは《黒の工房》から救出されて以来、違和感に気付いた。《巨イナル黄昏》より前に感じ取れていた味が、分からなくなっていたのだ。一か月近く食事をしていなかったこともあり気付かなかったが、しばらく食べているうちにようやくその違和感に辿り着いた。原因は分からないが、相克に向かうこの状況で他の心配事を出来ればリィンは作りたくなかった。だから、黙っている事にした。――目に見えて減っている食事量を前に、既に全員が気が付いているだなんて思わないまま。

    「そういうワケでクロウ、よろしく」
    「いや待て、どうしてそうなる」

    セリーヌとデュバリィに足止めさせて始まる新旧Ⅶ組大会議。答えは出ているも同然だったが、それでも認識の擦り合わせが必要だと集まったのだが。驚く程分かりやすいリィンの事だ、擦り合わせる間でもなかったが。それが分かれば押し付ける先は一つしかない。フィーの直球な言葉にクロウは予想もしていなかった為狼狽えた。リィンは無自覚ではあるが彼に甘える。そしてクロウは彼が甘えてくる自覚はあれど甘えさせているという自覚はなかった。何も自分に持ってくることはないだろうに、それがクロウの言い分だがそれに呆れている様子もまた感じ取っている事もあって困っている。
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    さらさ

    MOURNING遅刻大魔王によるすったもんだクロリンがバレンタインデーにくっついて分校全体に知られるまで。ポイピク練習も兼ねてる舌先の魅惑


    「え、え~!?クロウくんにチョコレートあげてないの!?」

     トワの素っ頓狂な声が、第Ⅱ分校の食堂に響き渡った。七耀歴1208年、2月。もうすぐバレンタインデーだ、食堂やら寮のキッチンを貸し切っての菓子作りに女子生徒たちが浮足立っている。去年の同時期と言えばクロスベル解放作戦当日だ、直接参加した訳ではないとは言えど親しみある教官と生徒が参加するともなればムードもそれどころではなかった。実質、今年が初めてのトールズ第Ⅱ分校バレンタインデーである。男子生徒も一部落ち着かない様子ではあるが、それも今更と言ってしまえばそれまでなのだが。ともあれ、青春では割とお約束のイベントが差し迫ったことを踏まえ、生徒たちの押しに負けて食堂にやってきたリィンなのだが。

    「えっと、俺はクロウとは何もないですしチョコレートもあげてませんよ?」

    という言葉で冒頭に戻る。指し手であるミュゼでさえ予想外だったその回答に、誰もが頭を抱えた。この朴念仁め、は共通の認識であるが故に誰も口には出さないが。

    「で、でもでも!リィン教官はクロウさんのこととても好きですよね!?」

    ここでもユウナから容赦ない一 4406

    さらさ

    MOURNINGフォロワーさんのネタをサルベージした一品。二パターンのうちの一個。曰くフォロワーさん的にはこっちがお望みだったようなのでこちらを先にアップ。
    でも本当に様になるねこの男は。

    尚そんなに活躍していない偽名は、私の趣味です(特にローデリヒ)
    踊ってください、愛し君「あれが例のターゲットか」
    「そうみたいだな。さぁて、どうしてやろうか」

     帝国のとある貴族邸にて。一時期帝国とクロスベルを行き来していた偽ブランド商がこの屋敷にて開かれる夜会に紛れてどうやら密談を行うらしい。そこでクロウとリィンには穏便な形での取り押さえるという依頼が舞い込んできたのである。相談した結果、ターゲットが女性である事とクロウ曰く二人そろって見目もいい事から凝った変装は必要ないだろうという事になった。ただリィンの場合は顔と名前を知られすぎているので、一工夫必要だとクロウの手によって好き勝手され。ラウラやユーシス、時間が出来たからと顔を出したミュゼの審査を受けてようやく目的地に辿り着いたのだが。如何せん、そこまでの振り回されたこともあって少々疲弊していた。潜入捜査に男二人は流石に目立たないだろうかとは思ったものの、その手のプロから珍しい事ではないとのアドバイスをもらったので女装させられるよりはましかと腹を括った。
    1996

    さらさ

    MOURNING閃Ⅰでの8月の自由行動日、例のイベントで香水の匂いが移ってしまった後の話
    無自覚だった恋心を自覚してしまうクロ→(←)リン

    いつか続きは書きたい
    『ラベンダーの誘い』

     その日の夜、話題になったのはリィンがどこかの女性に迫られて香水の移り香をつけて帰ってきたという事だ。発端は委員長ちゃんだったが、それは瞬く間に第三学生寮へと広まっていった。女性陣から詰め寄られているのを遠目に、匂いはラベンダーだったと聞いたことを思い出す。この近郊で、ラベンダー。そして今日は日曜日。そのピースが揃ってしまうと嫌でもあの魔女の姿を思い出す。全く、純朴な青年に一体何をしているのやら。からかいついでにリィンに近付いてみれば、確かに思い浮かべた人物が使っている香水と同じ匂い。曰く、彼女の使う香水のラベンダーは特殊なものだそうで。俺で遊んでいるというのを嫌でも分かってしまう。

    「いやぁ、まさかリィンがそんな風に迫られちまうとはなぁ」
    「だから違うって言ってるじゃないですか」

    正直、腹が立つ。その反応さえも面白がられているのだから、余計に。そこでふと、どうして自分が腹立たしく思ったのかを考えてしまった。ただの後輩、今はクラスメイト。お人好しで他人優先、自由行動日や放課後に何もしない彼を見たことはない。危ういバランスの上で成り立ついたいけな青少年、それだ 904

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    MOURNING『瞳の交換』

    Q.何日遅れましたか?
    A.三日です(大遅刻)
    バレンタインデーの続編のつもりで書いたクロリン。ホワイトデーの昼から夜にかけた二人の話。
    「よっす、トワ。リィンいるか?」

     三月十四日、世間ではホワイトデーと呼ばれる日。バレンタインデーのお返しをする日と言われる今日は、当然のごとくクロウは先月から晴れてお付き合いを始めた恋人の所に顔を出す――つもりでいた。しかし、尋ね人はどうやら不在らしく。

    「今日は自由行動日だし買いたいものがあるからって、帝都に行ったみたいだよ。珍しいよねぇ」

    トワの言葉にクロウは同意する。何せ、自由行動日ともなれば率先して依頼を引き受けては忙しなく動く性分なのだから。だからこそ、これは珍しい。

    「今日はホワイトデーだし、クロウ君が来るのは予想してると思うけど……。先月の事、まだ気にしてるのかなぁ?」
    「ああ、あの赤飯事件な……」

    東方に伝わるという不思議な風習に倣って、勘のいい生徒の一部が赤飯を炊いた事件があった。勿論、ある程度東方由来の文化に通じている当事者がその意味を知らない筈もなく。その場で倒れてしまい大騒ぎになってしまった。分校中に広まってしまったそれは彼にとっては勿論羞恥以外何もなく。主導者が彼の教え子だった事もあり、新Ⅶ組を中心にその話題は御法度となった。ただ、そうなる前にクロ 3650

    さらさ

    MOURNING「何かあって不機嫌そうなクロリンが戦闘では息ピッタリな話」の続き。やっとくっつきます。
    付き合ってないのに痴話喧嘩は犬も食わない リィンとクロウの不仲騒動から数時間。第五階層の最奥まで回って《円庭》に戻ってきた面々は二人を除いて疲れ切った表情をしていた。余りにも不毛な痴話喧嘩、それでいて付き合っていないというのだから手に負えない。瞬く間にそれは広がり、新旧Ⅶ組は総出で溜息をつき、他の面々も事情を察したように苦笑いをしていた。一部生温かい目で見る者もいたようだが。

    「全く、本当にいいのかい?リィン君だって同じ気持ちを持っているのだろう?」
    「……あいつには悪いが、応えられるほど真っ直ぐじゃねぇんだ」

    テーブルを囲って、かつて試験班だった面々がクロウに詰め寄る。アンゼリカの言葉に彼は首を振った後、真剣に迫ってきたリィンの事を思い出す。構えば構う程、愛情と執着心そして独占欲が生まれ、その度にクロウは己を律してきた。果たしてそれは必要か、と。必要であるならばいくらでも利用できる。だと言うのに彼の場合はどうだ、根も真っ直ぐでたくさんの人から慕われている。そんな彼を利用するだなんて出来ないし、したくもなかった、これはフェイクでも何でもない本音であった。未だに《C》だったころの話も出してネタにするのは正直言ってやめて欲しいのだが。
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    さらさ

    SPUR ME12月12日に出す予定の展示品を尻叩きとサンプルを兼ねて一章丸々アップ。こんな感じのクロリンの話が五感分連続していく感じです。シリアスが続きますがハピエン(にしてみせる!)

    ちなみにタイトルは全て「五感に関する部位のことわざ」を当てはめています。変わるかも。
    医者と味噌は古いほどよい リィンは《黒の工房》から救出されて以来、違和感に気付いた。《巨イナル黄昏》より前に感じ取れていた味が、分からなくなっていたのだ。一か月近く食事をしていなかったこともあり気付かなかったが、しばらく食べているうちにようやくその違和感に辿り着いた。原因は分からないが、相克に向かうこの状況で他の心配事を出来ればリィンは作りたくなかった。だから、黙っている事にした。――目に見えて減っている食事量を前に、既に全員が気が付いているだなんて思わないまま。

    「そういうワケでクロウ、よろしく」
    「いや待て、どうしてそうなる」

    セリーヌとデュバリィに足止めさせて始まる新旧Ⅶ組大会議。答えは出ているも同然だったが、それでも認識の擦り合わせが必要だと集まったのだが。驚く程分かりやすいリィンの事だ、擦り合わせる間でもなかったが。それが分かれば押し付ける先は一つしかない。フィーの直球な言葉にクロウは予想もしていなかった為狼狽えた。リィンは無自覚ではあるが彼に甘える。そしてクロウは彼が甘えてくる自覚はあれど甘えさせているという自覚はなかった。何も自分に持ってくることはないだろうに、それがクロウの言い分だがそれに呆れている様子もまた感じ取っている事もあって困っている。
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