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    甘味。/konpeito

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    本日の800文字チャレンジ
    クロ→リン/一目惚れの末路

    「あれがリィン・シュバルツァーか」
     学生会館の前で右往左往している黒髪の青年がいた。おおかた、Ⅶ組の担当教官になったサラにいいように言いくるめられて生徒会室へ向かわされたに違いない。
     擦れていない、真面目そうな目が印象的な男だ。
    「さて、どの手でいくか。素直そうな顔してるからな。騙されてくれやすそうだ」
     手のなかのコインをいつものように弄ぶ。指の間を這っていくそれをポケットに入れ、彼に近づいた。
    「で? なんであのとき俺に声をかけたか思い出せたか」
     もう一度問われ、口に運びかけていたナッツを改めて口へ放り込む。
     追憶に浸っていたが、今はリィンが二十五歳を迎えた誕生祝いも含めた地酒飲み比べ会の真っ最中だ。クロウが旅先で見つけた酒をリィンへ送り、定期的に彼の元を訪れてふたりで貯まった酒瓶を空ける。なんとなくはじめたそれも、今年でもう五年目に突入していた。
    「なんだって、んなこと聞きたがるんだよ。まだまだ思い出話に花を咲かせるような歳でもないだろ」
     からかい交じりに肘で小突く。
     元々クロウの導き手であった深淵の魔女からある程度の助言を受けていたが、あの日彼に声をかけたのはほんの気まぐれだった。
     そもそも旧校舎に灰の騎神が眠っているのも、その起動者にリィンが選ばれることさえ知らなかった。もっとも、リィンの妹を探しに彼と旧校舎へ降りた瞬間、自身と同じように彼も選ばれた者なんだと確信はしたが。
    「いやあ。実は帝都に出て馬券を買おうと思ったんだが、所持金がすっからかんでな。ちょうどよくお前がいて助かったわ」
     言い終わるや否や、脇腹にリィンの重い拳がめり込んだ。受け身はとったものの、それなりに痛い。
     すまんすまんと謝りながら、こいつの顔がこの上ないほど好みだったからなんだよな。なんて言葉は飲み込んだ。
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