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    甘味。/konpeito

    800文字チャレンジだったりssを投げる場所

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    本日の800文字チャレンジ
    クロリン/過去捏造/異国で出会った初恋の人

    「んじゃ、俺はちょっとこの辺探索してるわ。十五時までには戻ってくるから」
     祖父と入った百貨店⦅プラザ・ビフロスト⦆からひとり飛び出したクロウは、初めて来た街に目を輝かせた。九歳の誕生日を迎えたばかりの目には、どれもこれも目新しく映る。
     エレボニア帝国の中心、帝都ヘイムダルは、故郷とは比べ物にならないほど巨大な都市だった。ヴァンクール通りを抜け、トラムに乗り、ドライケルス広場へ出る。そうして背の高い銅像をまじまじと見上げていたときだった。微かに鼻を啜る音が耳に入った。
    「お前、ここで何してんの」
     音を頼りに銅像の裏側を覗くと、膝を抱えた黒髪の子どもがいた。クロウが声をかけた途端、顔をあげる。こぼれそうな涙に怯んだ。
    「知らない人とは、話しちゃいけないんです」
     ぐぐぐ、と涙が競り上がっている。律儀な迷子だ。頬を掻いたクロウは膝を折り、迷子の頭を撫でた。
    「俺、クロウ。お前は」
    「リィン……」
    「リィン、俺の名前分かる?」
     リィンの眉根が不機嫌そうに寄る。
    「それくらい分かる。クロウだ」
    「そうだ。んじゃ、俺は知らないヤツじゃないな」
     固まったリィンが、あれそうだっけと戸惑いながら瞬いた。
     どこから来たのか、誰と来たのか。どの道を歩いたか。すっかり泣き止んだリィンと、アイス屋の屋台でひとつだけ買ったアイスをふたりで食べつつ情報収集した。
     途中から目を擦るリィンを背負って目的地に到着してみれば、女性がひとり右往左往していた。よくよく聞けばリィンの親だという。
     後から合流した父親らしき男性に具合の悪そうなリィンを託し、祖父の待つ百貨店へ急いだ。
     店の前には、腕組みしている祖父が立っていた。当然だ。もう戻る予定の時間は過ぎていた。
    「冒険は楽しかったか」
    「――まあまあ」
     ありがとうとクロウの手を握った、リィンの笑顔がよぎった。ぶわりと頬が熱くなる。
    「お、恋か。マセガキめ」
     いたずらに髪を乱す祖父の手を振り払った。
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