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    甘味。/konpeito

    800文字チャレンジだったりssを投げる場所

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    甘味。/konpeito

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    本日の800文字チャレンジ
    クロリン/月夜の下でダンスを。
    創後の話

    マーテル公園内にあるクリスタルガーデンのなかから、ガラス張りの天井を眺めていた。星空の切り取られたそこから月光を取り込んだ庭は、クロウとリィン、ふたりしかいない。
     足元を照らすライトがぽつりぽつりと点灯しているだけで、風の吹かない屋内庭園は静寂を保っていた。
    「おい、なんかあったか」
     屋内庭園の奥まで見回りに行っていたクロウがリィンの元まで戻ってきていた。すぐさま首を横に振り、否定する。
    「ああ。いや、学院祭のときのことを思い出していたんだ」
    「確かにここ、ステラガルデンに少し雰囲気が似てるかもな。しっかし、あのときはお前もかわいこちゃんじゃなくてわざわざ俺を誘うなんてと驚かされたぜ」
    「仕方ないだろ。あの頃からクロウのこと……」
     顎を掴まれ、見上げさせられる。強引なそれとは裏腹に、降ってきた口付けは優しい。月明かりの下で見たクロウの瞳が赤く煌めいていた。
     背中に回された、抱き寄せる腕が熱い。
    「分かってるって」
     不意に、庭園の外からかすかに演奏が聞こえてくる。
    「ここ、音楽院が近いから生徒がよく練習しているって前にエリオットから聞いたんだ。夏至祭も近いし、たぶん」
    「そっか」
     クロウに導かれるまま、演奏に合わせてゆっくりステップを踏む。ときおり途切れる演奏に顔を見合わせては笑い合い、また足を動かした。
    「そういや、後夜祭でお前と踊ったんだったな」
    「言っておくが、あのときダンスに誘ってきたのはクロウだったんだからな」
    「人の冗談を本気にしやがって。なにが喜んで、だ」
    「でも、楽しかった。不恰好でもなんでも、クロウと踊れたあの瞬間はすごく、幸せだったんだ」
    「欲のないヤツめ」
    「そうでもないぞ。少なくとも、クロウのことに関しては」
     演奏がなくなっても、繋いだ手は離せなかった。逡巡ののち、離した手を絡め取られる。
    「さて、ここの見回りも終いだ。帰るぞ」
    「ああ」
     繋いだ手はそのまま、ふたり並んで庭園を後にした。
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    さらさ

    MOURNING遅刻大魔王によるすったもんだクロリンがバレンタインデーにくっついて分校全体に知られるまで。ポイピク練習も兼ねてる舌先の魅惑


    「え、え~!?クロウくんにチョコレートあげてないの!?」

     トワの素っ頓狂な声が、第Ⅱ分校の食堂に響き渡った。七耀歴1208年、2月。もうすぐバレンタインデーだ、食堂やら寮のキッチンを貸し切っての菓子作りに女子生徒たちが浮足立っている。去年の同時期と言えばクロスベル解放作戦当日だ、直接参加した訳ではないとは言えど親しみある教官と生徒が参加するともなればムードもそれどころではなかった。実質、今年が初めてのトールズ第Ⅱ分校バレンタインデーである。男子生徒も一部落ち着かない様子ではあるが、それも今更と言ってしまえばそれまでなのだが。ともあれ、青春では割とお約束のイベントが差し迫ったことを踏まえ、生徒たちの押しに負けて食堂にやってきたリィンなのだが。

    「えっと、俺はクロウとは何もないですしチョコレートもあげてませんよ?」

    という言葉で冒頭に戻る。指し手であるミュゼでさえ予想外だったその回答に、誰もが頭を抱えた。この朴念仁め、は共通の認識であるが故に誰も口には出さないが。

    「で、でもでも!リィン教官はクロウさんのこととても好きですよね!?」

    ここでもユウナから容赦ない一 4406

    さらさ

    MOURNING「何かあって不機嫌そうなクロリンが戦闘では息ピッタリな話」の続き。やっとくっつきます。
    付き合ってないのに痴話喧嘩は犬も食わない リィンとクロウの不仲騒動から数時間。第五階層の最奥まで回って《円庭》に戻ってきた面々は二人を除いて疲れ切った表情をしていた。余りにも不毛な痴話喧嘩、それでいて付き合っていないというのだから手に負えない。瞬く間にそれは広がり、新旧Ⅶ組は総出で溜息をつき、他の面々も事情を察したように苦笑いをしていた。一部生温かい目で見る者もいたようだが。

    「全く、本当にいいのかい?リィン君だって同じ気持ちを持っているのだろう?」
    「……あいつには悪いが、応えられるほど真っ直ぐじゃねぇんだ」

    テーブルを囲って、かつて試験班だった面々がクロウに詰め寄る。アンゼリカの言葉に彼は首を振った後、真剣に迫ってきたリィンの事を思い出す。構えば構う程、愛情と執着心そして独占欲が生まれ、その度にクロウは己を律してきた。果たしてそれは必要か、と。必要であるならばいくらでも利用できる。だと言うのに彼の場合はどうだ、根も真っ直ぐでたくさんの人から慕われている。そんな彼を利用するだなんて出来ないし、したくもなかった、これはフェイクでも何でもない本音であった。未だに《C》だったころの話も出してネタにするのは正直言ってやめて欲しいのだが。
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    さらさ

    DONEリクエストより「クロリンで指輪交換」でした。指輪を交換した勢いで誓ってもらいました。場所が場所だけどね!

    リクエストありがとうございました!
    誓いの環をその指に「買って、しまった……」

     十二月もまだ初旬、たまたま帝都に出たという理由だけで散策して見つけたシンプルな指環。ああ、あいつに似合いそうだと思ってうっかり買ってしまった物だったがこれを渡せる程の関係でもないという事は彼――リィンも分かり切っていた。一応、お付き合いしている関係ではある。だが余りにも空白の時間が長すぎた事、戦後の事後処理に追われて時間が取れない事が相まってしまい未だ実感が湧かないのが現実であった。だからこれは余りにも早すぎるというもので。そっとコートのポケットへと仕舞ったのだった。

    「やべぇ、買っちまった……」

     同時期、別の男もまた同じ事をしていた。たまたま見つけた最低限の装飾しか施されていない指輪。ああ、あいつの指にはめてしまいたいだなんて思っているうちに買ってしまった代物である。お付き合いを始めてそろそろ三か月、今度こそ手を離さないと誓ったものの状況がそれを許さなかった。彼らは別々の場所で必要とされ、帝国内を東奔西走するような日々である。言ってしまえば魔が差したようなものだと、彼――クロウは思う。なんせ相手は天性の朴念仁で人タラシ、所有痕の一つや二つ残しておかねば相手が近寄ってくる始末だ。その状況に頭を抱えていたのは事実だが、かといってここまでするつもりはまだ毛頭なかった。
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