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    甘味。/konpeito

    800文字チャレンジだったりssを投げる場所

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    本日の800文字チャレンジ
    クロリン/Ⅳ後/兄貴分と教官と俺

    「今度はあの屋台の串焼きが食べたい」
    「おい待て。あの長蛇の列に並べってことか?」
     クロウの指差した先には長々とした列があった。最近ジュライで話題になっている屋台だ。串に刺さった肉にシーソルトがよく合う。
     スタークは笑みを深めて頷いた。
    「敗者は勝者の言うことを聞く、だよね。クロウ兄ちゃん」
     歯噛みしつつ屋台へ向かったクロウを心配そうに見送るリィンと近場のベンチに腰掛けた。遠くに見える港からの雑音や、カモメの声が聞こえる。
    「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ、リィン教官。それよりどうでした。ジュライは」
    「ああ。クロウの育った街に来ているんだと思うとなんだか不思議な感覚だよ」
    「今はもう、昔の面影なんてほとんどないですけどね」
     眉を下げた彼は何も言わなかった。
    「――今でも、あのときクロウ兄ちゃんを引き止めていたら何かが変わったんじゃないかって思うんです。教官が陽霊窟で引き留めたみたいに」
     分かりやすく驚いている彼に、兄貴分の絆されてしまった理由を見つけた。
    「ユウナたちから聞きました。俺もあの日行かないでって言っていたらなんて、今さらですけど」
    「どうだろうな」
     ゆったり言葉を吐き出した彼は目を細め、遠くを見ている。屋台へ並ぶ前、気遣うリィンを宥めるように頭を撫でたクロウの見せた、兄貴面ではない表情によく似ていた。
    「スタークも知っているだろう。クロウはこうと決めたら最後まで貫き通す男だってこと。きっと、なにも変わらなかったんじゃないかな。陽霊窟での一件は、クロウの気持ちもあったからできたことだと思うんだ」
    「それは、あれだけ熱烈に引き止められて揺れない男はいないと思いますよ?」
    「改めて言われると気恥ずかしいな。でも、こうしてクロウとスタークの三人でジュライにも来られたし、本当によかったよ」
    「俺、おふたりのデートの邪魔になっていますけどね」
    「三人で、そういう約束だろう」
     笑みを交わすふたりの元へ戻ってきたクロウとともに串焼きを味わうのだった。
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