花の人 白い壁はところどころ割れて瓦礫となっている。
がらんとした部屋には窓もない。壁の一面にものものしい鉄扉があるきりの、室内には豪勢な椅子がやっつ並んでいた。玉座とでもいうつもりか、いっそ舞台じみたその光景をぼんやりと眺めていると、ふと肩のうしろあたりにあたたかいものが触れた。
指をとられて、握りかえさずにいると意趣返しのつもりか軽く手の甲をつねられる。
生きているはずもないのに、おたがいまだひとのふりをしている。面倒な性分だと頭の片隅でちらりとおもった。
ぐるりとめぐらされた玉座はどれも空っぽだった。それぞれの主たちは、いつか九つめの座をになうだろう少年の退去とともにどこかへと姿を消していた。
「俺は出してやっただろうが」
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