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    何話か進めばクロヒルかつロレマリになる予定です。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。

    #クロヒル
    blackHill
    #ロレマリ
    lloremali

    1.C-(side:L) ガルグ=マクにはフォドラ中の者が集まる。出身地別に学級は分かれるがそれでも一年間身分に関係なく共に同じ学び舎で学ぶ。礼服に身を包んだローレンツは級長になれなかったことで落胆していた。ただあの胡散臭いクロード=フォン=リーガンを見極める機会は得られたし生涯の伴侶をガルグ=マクで見つけることができるかもしれない。士官学校で見つけられなければ見合いをするようにと言われている。結婚した後で妻を愛せるようになるのだろうと思っていてもローレンツは最初から親を頼るのは嫌だった。

     職員の指示に従い壮麗な聖堂での長い式典の後それぞれの教室で待機することになった。こうして改めて学友たちを眺めてみると金鹿の学級は他の学級と比べて平民の学生の割合が多く逆にグロスタール家の嫡子であるローレンツが気を使わねばならないような名家の出の者は少ない。ゴネリル家、エドマンド家、コーデリア家のご令嬢くらいだろうか。ローレンツは彼女たちとは初対面だが失礼のないように名前と髪の色、瞳の色は先に覚えておいた。

      そのうちの一人であるリシテアは長い長い式典に参加中、人混みに酔ってしまったらしく教室までは何とか堪えたものの今は真っ青な顔をして椅子に座り込んでいる。

    「大丈夫かい?水か何か持ってこようか?医務室まで歩けないなら僕が抱えていくが」
    「少し休めば大丈夫です」

     本人は大丈夫と言っているが本当にその言葉を信じても良いのだろうか。今日は礼服なので身につけてはいないが明日からは級長の証である黄色の外套を身につける予定のクロードはリシテアの体調不良に気づいていないのか女子学生の中で小柄だが最も華やかで目立っていたゴネリル家のご令嬢ヒルダに話しかけている。

    「だから手伝って欲しいんだよ」
    「えぇ〜でもマヌエラ先生の方が話しやすいんじゃないかな」
    「おい、クロード!こちらに来てくれ」

     クロードとはほぼ初対面だが同じ五大諸侯の家柄でもあるので敬語は使ってやらない。ローレンツが呼ぶとクロードはすぐにやってきてリシテアの異変に気づいた。

    「リシテア、一体何枚着てるんだ?確かにここは山の中だから寒いが着込みすぎも身体が締まって良くないぞ」
    「ご婦人相手になんてことを聞くのだ!君は将来レスター諸侯同盟の盟主になるのだぞ!」
    「必要だから聞いただけだ!」

     ローレンツの剣幕に押されずクロードは言い返した。自分が身につけることのできない級長の証である黄色の外套はきっと少し浅黒い肌の彼によく似合うことだろう。

    「君は必要なことなら何でも聞き出すのか?!他人のいる場で!」
    「ローレンツ、お前はもういいよ。な、ヒルダ。言った通りになっただろう?」

     ヒルダはため息をつくと堪えきれずに机に突っ伏しているリシテアに優しく話しかけた。その口調はとても優しい。

    「クロードくんは男子だから言い出しにくいよね、これからはマヌエラ先生がいない場で体調のことで不安があったら私に言って欲しいの」

     士官学校では学級単位かつ男女共同で奉仕活動にあたる。クロードは具合が悪い女子に大変な仕事を割り振らずに済むよう内密に聞き取っておいて貰いたいようだ。

    「とりあえず制服の襟元と腰回りを緩めようね、少しは楽になるだろうから」

     青い顔をしているリシテアにヒルダが優しく話しかけたのがきっかけになったのかリシテアの周りに女子学生たちが集まっている。これ以上、淑女を凝視しては失礼なのでローレンツは目を逸らした。教卓と黒板が目に入る。ローレンツの父もこの教室で学んでいた。教室の内装は細かいところまで父から聞いた通りでその記憶力の良さに身内ながら舌を巻いてしまう。父と同じように鷲獅子戦で勝利を収めねばどんな叱言を言われるのか分かったものではない。その為にはまず当日、体調不良の者がいないことが大前提だ。ローレンツは水を汲む為にそっと席を離れた。黒鷲や青獅子の教室の前を通ったがどうやら特に体調を崩した者はいないらしい。

     リシテアの為に水を汲んで戻ってきたローレンツは女子学生の輪に入りそびれた水色の髪の女子学生がいることに気づいた。きっとエドマンド辺境伯の養女マリアンヌだろう。輪に入りそびれていてもリシテアのことが心配なのか壁際から小柄な彼女を水色の瞳でちらちらと見ている。マリアンヌは背が高いことを気にかけているのか少し猫背気味だがローレンツは長身だ。彼女は自分と並んで歩けば俯く必要はない。

     入学式の日に起きた細やかな事件は初めての野営訓練の夜に起きた大事件によって上書きされてしまい皆すっかり忘れていたが後になって思い返してみるにあの時点で充分に帝国はその策謀をもってレスター諸侯同盟へ深く強く介入していた。クロードがリーガン家の嫡子になったのもリシテアの体調が悪いのも元を正せばこの時点で帝国の工作が成功していたからだ。ただその中途半端な成功ゆえに帝国によるフォドラ統一は失敗した、とも言える。
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    DONEクロヒル&ロレマリの話、ロレマリ後日談の話です。この話はこれでおしまいです。エドマンド辺境伯がらみの捏造が我ながら本当にヒッデェなと思います。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。
    19.sequel:L&M 紋章を持つ貴族同士の婚姻は動物の品種改良と似ている。好ましい形質が確実に顕になるよう交配していくからだ。逆に好ましくない形質を持つものは間引かれる。マリアンヌの実父は"おこり"を恐れていた。モーリスの紋章を持つ子供はそれはそれは美しく生まれてくるのだという。両親は美しい乳児を愛さずにはいられない。子供は自分の一族にかかった呪いを知らずに育つが子供の成長と時を同じくして呪いはゆっくりと親を侵蝕していく。

     "おこり"、いや"興り"が訪れると最初はぼんやりする時間が増える。言動に異常をきたしてしまえばもう死ぬまで止まらない。人格が崩れ獣性が剥き出しになっていく。人格が崩れ社会的に破綻し最後はヒトの形を保てなくなる。ヒトのまま尊厳を保ち周囲から愛されて生涯を終えたいなら早く死ぬしかない。モーリスの紋章を持つ一族は前線で武器を持たず治療に専念する修道士や消火隊など危険な仕事に従事するようになった。その結果かつて社会から根絶やしにされかけた一族は信頼を回復し地方で領主を務めるまでになった。それでもモーリスの紋章を持つ一族の生存戦略は変わらない。
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    MAIKING何話か進めばクロヒルかつロレマリになる予定です。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。
    2.C-(side:H) クロードは他人の喉元に入り込むのが上手い。ヒルダ自身も楽をするために他人の喉元に入り込む自覚があるのですぐに分かった。それにしても十代の男子が女子の体調を気遣うなんて珍しい。ディミトリもメルセデス辺りに頼んでいるのだろうか。そんな訳で不本意ながらヒルダは女子学生の意見をまとめクロードに伝える係をやっている。レオニーは臆さないが盟主の嫡子と言うだけで萎縮してしまう学生もいるのだ。

     一度役割を任されてしまえば期待に応えないわけにいかない。だからこそヒルダは期待をかけられることを嫌い責任というものから逃げ回っていたのだがそうなってみるとどうしても気になる同級生がいた。マリアンヌだ。とにかく何も話さずすぐに一人で厩舎へ行ってしまうので噂話だけが流れている。ダフネル家の代わりに五大諸侯に加わったやり手のエドマンド辺境伯は注目度が高い。おそらくヒルダの兄ホルストの次くらいに学生たちから注目されている。マリアンヌは彼のお眼鏡に叶って養女になったとか目ぼしい若者が彼女しかいなかったから仕方なく彼女を養女にしたとかそんな噂だ。クロードの耳にも当然入っている。
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    MAIKING何話か進めばクロヒルかつロレマリになる予定です。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。
    4.C(side:H) マリアンヌの鉄筆をすぐに拾ってやれたことからも分かる通りローレンツは気になることがあるとつい目で追ってしまう癖があるようだ。そして自分が見られていることには無頓着らしい。断りきれずに食事を共にした女子学生はさぞ居心地が悪かっただろう、とヒルダは思う。

    「マリアンヌちゃん、何か困っていることはない?」

     先日、マリアンヌに書庫整理の手伝いをしてもらった結果全て自分で作業をする羽目になったヒルダは本格的に彼女が心配になった。マリアンヌには何か根本的な欠落がある。

    「特にないつもりです……」

     養父であるエドマンド辺境伯はマリアンヌとの関係を良好たしたいと考えているのだろう。こまめに手紙や差し入れが届く。だがローレンツから託された手紙をヒルダが渡した時マリアンヌは戸惑っていた。きっと理由を聞いても教えてくれないのだろう。無駄なことはしないに限る。身内になれない他人が踏み込むべきではない領域があるのだ。そう思ってヒルダがマリアンヌに対して引いていた線を数日前、ローレンツはあっさり越えた。
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    MAIKINGロレマリに続きようやくクロヒルの方もちょっとそれっぽくなってきたかもしれません。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。
    7.B(side:L) ローレンツが厩舎の管理をマリアンヌと共に担当していた時に上空警備を担当していたクロードとヒルダが戻ってきた。金鹿の学級で軽業師の真似事が流行ったことがある。ナイフ投げも軽業もレオニーが飛び抜けて上手いのだがクロードも負けていない。下馬の際に左足を鎧から抜き忘れた人の真似、というのがクロードの得意技だ。羽ばたきやペガサスの嗎に混ざってヒルダが楽しそうに笑っている声が聞こえる。

    「また同じことを繰り返して……ヒルダさんも飽きたと言ってやれば良いのに寛容なことだ」
    「最初拝見した時は心臓が止まりそうになりました……」

     それはそうだろう。普通の馬であったとしても肝が冷える光景だがクロードはなんとそれを上空でやっているのだ。何かひとつでも間違いがあれば死にかねない。好きな人に良いところを見せたいと言う気持ちは分からなくもないがレスター諸侯同盟の次期盟主として相応しくない振る舞いなのは言うまでもなかった。
    2092

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    5.初戦・上
     三学級対抗の模擬戦はクロード達の勝利に終わった。これもクロードの記憶とは異なっている。容赦のなかったベレスの記憶があるクロードは事前に何か工作するかベレトに探りを入れてみたが拒否された。こんな下らないことに全力を尽くすなという意味なのか気高い倫理観の持ち主なのかはまだクロードには分からない。腹下しの薬は冗談だったが賛同してもらえたら武器庫に忍び込んで他学級の使う武器の持ち手にひびを入れてしまうつもりだった。

     母国やデアドラと比べるとガルグ=マクは肌寒い。気に食わない異母兄が王宮で働く女官を寝室に引っ張り込むような寒さだ。それでも来たばかりの頃と比べればかなり暖かくなっている。過酷な太陽の光に慣れたクロードの目にも山の緑は目に眩しく映った。長時間、薄暗い書庫で本を物色していたからだろうか。廊下に差す光に緑の目を細めながら歩いていると大司教レアの補佐を務めるセテスに声をかけられた。クロードは規則違反に目を光らせている彼のことがあまり得意ではない。

    「ちょうど良かった。クロード、後でベレトと共にこちらに顔を出しなさい」
    「分かりました。セテスさんは先生が今どの辺りにいる 2100

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    MAIKING「説明できない」
    青ロレ赤クロの話です。
    6.初戦・下

     クロードから自分たちを襲った盗賊の討伐が今節の課題だと告げられた皆は初陣だと言って沸き立っていた。金鹿の学級は騎士を目指す平民が目立つ学級で入学以前に領主の嫡子として盗賊討伐を体験している者はクロードとローレンツしかいないらしい。クロードはローレンツの印象よりはるかに慎重で毎日先行したセイロス騎士団がどの方面へ展開していったのか細かく記録をつけ皆に知らせていた。セイロス騎士団に追い込んでもらえるとはいえどこで戦うのかが気になっていたらしい。

     出撃当日、支度を整え大広間で待つ皆のところへベレトがやってきた時にはローレンツたちはどこで戦うのか既に分かっていた。

    「騎士団が敵を追い詰めたそうだね。場所はザナド……赤き谷と呼ばれている」

     そう言えばクロードはザナドが候補に上がって以来やたら彼の地についた異名の由来を気にしていた。赤土の土地なのか赤い花でも咲き乱れているのか。土地の異名や古名にはかつてそこで何があったのかが表されていることが多い。土地の環境によっては毒消しが必要になる場合もある。だが先行した騎士団によると特殊な条件は何もない、とのことだった。初陣の者た 2081

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    17.惨劇・上
     南方教会を完全に無力化されてしまったことや西方教会対策やダスカーの幕引きでの手腕には疑わしいところがあったがルミール村においてまず疫学的な検査から実施されたことからもわかる通りセイロス騎士団は手練れの者たちの集まりだ。ベレトの父ジェラルドまで駆り出されている異変においてクロードやローレンツのような部外者が介入しても迷惑がられるだけだろう。

     クロードにしてもローレンツにしても記憶通りに進んでほしくない出来事は数多ある。ロナート卿の叛乱もコナン塔事件も起きない方がよかったしこの後の大乱も起きて欲しくない。だがこのルミール村の惨劇は起きてほしくなかった案件の筆頭にあげられる。他の案件の当事者には陰謀によって誘導されていたとはいえ意志があった。嵌められていたかもしれないが思惑や打算があった。だがルミール村の者たちは違う。一方的に理性や正気を奪われ実験の対象とされた。そこには稚拙な思惑や打算すら存在しない。事件を起こした側は村人など放っておけばまた増えると考えたらしいが二人にとって直接見聞していないにも関わらず最も後味が悪い事件と言える。
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