Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    111strokes111

    @111strokes111

    https://forms.gle/PNTT24wWkQi37D25A
    何かありましたら。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 308

    111strokes111

    ☆quiet follow

    翠風の章の時の話なので……。

    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17484168
    この話の番外編です。なおこの話(pixivの方)はトータル八万文字弱のうち半分がロレマリなのでご注意下さい。

    #クロヒル
    blackHill

    クロヒルweek_day3テーマ「翠風」 学生時代が終われば男も女も大人扱いをされる。クロードにしても三つ編みを切って装いを改めたしヒルダだって装いが改まるのは当たり前だ。五年ぶりに会った女子の同級生たちは皆それぞれに美しくなっている。エドマンド辺境伯にするために彼の手元に引き取られたマリアンヌは例外だが皆胸元が大きく開いた服を着るようになった。フォドラの親たちは娘が大人としての責任を果たせるようになったと判断すれば胸元が大きく開いた服を着ることを許すし結婚すればまた服の胸元は閉じられる。夫の意向なのだろうか。

    「いくらなんでも露骨すぎないか?」
    「まあ分かりやすくてよろしいんじゃないですかね」

     パルミラ兵が国境を通過出来るように準備している家宰のナルデールが打ち合わせにやってきたのでクロードは母国との文化の違いについて聞いてもらおうとしたのだが彼はクロードが書いたホルスト卿への手紙の中身を確認しているので全ては生返事だ。生返事であることに視線で反論していると耳飾りがついていない方の耳を引っ張られた。

    「いたたたた!もう子供じゃないんだからやめてくれ!」

     ナルデールことナデルは大柄で逞しい体つきをしている。細かった学生時代よりは逞しくなった自覚はあるがそれでも彼と比べればクロードはまだ子供のようだ。

    「子供扱いされたくないなら大人の男らしく振る舞うことですな」

     解放してもらえた耳を涙目で撫でる。後に血の同窓会と呼ばれるようになるグロンダーズの戦いに勝利しても子供の頃から世話になっている彼には敵わない。

     季節は竪琴の節を迎え自然は人間の営みとは関係なく春を迎えていた。花が咲き乱れるのは花冠の節だが竪琴の節にも花は咲く。ガルグ=マクには温室もある。

    「壮行会?」
    「うん、次はメリセウス要塞に行くんでしょ?その前にちょっとだけね」

     三つ巴の戦いになんとか勝利したこともあり諸侯からの覚えもめでたく勝ち馬に乗りたい者たちからの援助物資が届いている。少し多めに飲み食いしても問題はない。

    「何か思いついたのか?ヒルダ」
    「女子は皆、髪に花を飾るの」
    「足りるか?」

     花が咲き乱れるような平原は遠いし温室に咲いている花だけで賄えるのだろうかとクロードが考え込んでいるとヒルダが言葉をつづけた。

    「今すごくいい感じに花が咲いてる紫丁香花の木があるの知ってる?」
    「それなら金もかからないし、ってことか」

     ヒルダに指摘されてクロードも思い出したが確かに紫色の花が咲いている木がある。香水の原料になるほど香りも良いので確かに良いかもしれない。

    「うん、私とリシテアちゃんで仕切ろうかなって」

     断る理由もないので勿論クロードは承諾した。

     食卓に置かれているものは代わり映えしないし皆が身につけているのも普段着だ。それでも細やかな工夫だけで随分と印象が変わる。紫色の小さな花の塊は皆の髪によく似合っていた。

     今日は昼に中庭で集まって飲んでいる。パルミラの者は気候の良い時期は外で飲み食いするのが好きなのでヒルダから今日は外で、と提案されて本当に嬉しかった。クロードは騒ぎの中心になっているベレトから少し距離をとって杯を傾けている。皆がはしゃぐ姿を眺めるのが好きだし誰が誰と話し誰を避けているのかを知るのにもちょうどいい。それに近寄ってしまえばクロードの視線がどう動くのか把握されてしまう。

     どうしても緑の瞳はヒルダを追ってしまう。桃色の髪に紫色の小さな花の塊がよく似合っていた。紫丁香花は良い香りがするのできっと今日は香水もつけていないのだろう。フォドラ人は肌の色が真っ白なので酒に酔っているかどうかもすぐに分かる。頭のてっぺんから爪先まで眺めるつもりだったがクロードの視線はある一点で止まった。

     当たり前だが生花の花びらは糊付が出来ない。風が吹きこぼれ落ちた紫丁香花の小さな花がヒルダの胸の谷間に挟まっている。大きく胸元が開いた服を着て髪に生花を飾っていれば自然なことなのかもしれないがクロードは杯を卓に置いて目を逸らした。なんだか見ていられない。ヒルダのすぐ向かいで呑んでいるレオニーは何故ヒルダに教えてやらないのか。

    「ヒルダ、花が挟まってるぞ」
    「あれっ!気がつかなかった!」

     レオニーがヒルダのほんのり赤く染まった胸元にくっついた小さな紫丁香花をそっと摘んだ。

    「ありがとね、レオニーちゃん」

     当たり前だが邪な心が全くないレオニーは平然としている。もし自分があの立ち場になったらきっと激しく動揺するはずだ。

     -花冠の節-
     ガルグ=マク修道院は自然豊かな山の中にある。山の恵みは豊かで蜂蜜を採ったり狩りをすることもできるがそれと引き換えに虫も多い。天気が良いので中庭で書類を眺めているとヒルダの金切り声がクロードの鼓膜を叩いた。

    「いやぁー!!蜘蛛!!レオニーちゃん!早く払って!!」
    「ええっ!蜘蛛!!蜘蛛は触れないんだよ!!」

     先日は全く躊躇することなくヒルダの胸元に手をやったレオニーだが蜘蛛は苦手なようで払ってやることができないらしい。

    「クロード!頼む!」

     急にレオニーが腕を引っ張ったのでクロードは書類を辺りに撒き散らしてしまった。

    「ヒルダ、取ってやるから動くなよ!」

     ヒルダは涙目で身動きするのを我慢している。もう自分がどんな顔をしているのかよくわからない。騒ぎを起こした蜘蛛は小さくて残念ながら手袋をしたままでは上手く払えなかった。

    「クロードくん!!なんでも良いから早く取ってよ!!」
    「あー!もう!!俺がこのことでホルスト卿やゴネリル公から殺されそうになったらきちんと証言してくれよ!!」

     そう叫んでからクロードは黒い手袋を外した。その後のことは細かく覚えていると命の危険があるような気がしたからかよく覚えていない。もったいない気もするが命より価値のあるものはないので仕方がない。

     ヒルダも息を荒げながら礼を言ってくれたしレオニーも涙目でよく頑張ったとクロードを労ってくれたのでどうやら女性目線で見ても不手際はなかったようだ。きっと怒り狂ったホルスト卿たちを前にしても二人はクロードを庇ってくれるだろう。散乱した書類を拾い集めたマリアンヌが腫れ上がって痛む褐色の指にライブをかけてくれたあたりからクロードの記憶は戻っている。

     クロード、いやカリードはフォドラに住んでもう何年も経つがある一定の期間だけ女性の胸元が開くのはやはりおかしな慣習だと思う。

     とりあえずヒルダは蜘蛛に咬まれなかった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😂😂😂👍👍👍😍😍💞🙏🙏✨💞💞💞😍😍😍😂☺👍👍👍💗💖❤❤❤☺☺☺☺☺☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    111strokes111

    DONE翠風の章の時の話なので……。

    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17484168
    この話の番外編です。なおこの話(pixivの方)はトータル八万文字弱のうち半分がロレマリなのでご注意下さい。
    クロヒルweek_day3テーマ「翠風」 学生時代が終われば男も女も大人扱いをされる。クロードにしても三つ編みを切って装いを改めたしヒルダだって装いが改まるのは当たり前だ。五年ぶりに会った女子の同級生たちは皆それぞれに美しくなっている。エドマンド辺境伯にするために彼の手元に引き取られたマリアンヌは例外だが皆胸元が大きく開いた服を着るようになった。フォドラの親たちは娘が大人としての責任を果たせるようになったと判断すれば胸元が大きく開いた服を着ることを許すし結婚すればまた服の胸元は閉じられる。夫の意向なのだろうか。

    「いくらなんでも露骨すぎないか?」
    「まあ分かりやすくてよろしいんじゃないですかね」

     パルミラ兵が国境を通過出来るように準備している家宰のナルデールが打ち合わせにやってきたのでクロードは母国との文化の違いについて聞いてもらおうとしたのだが彼はクロードが書いたホルスト卿への手紙の中身を確認しているので全ては生返事だ。生返事であることに視線で反論していると耳飾りがついていない方の耳を引っ張られた。
    2701

    hk_krhr

    DONEシルイン(+クロヒル)位の小説になりますので、こちらはウィークタグの方は避けます。自分の書いた現パロ設定でシルイン(特に風紀委員してるグリットちゃん)を見たくなったが故に同時生成した産物です。
    グレン氏の話を拾おうと思ったのですがキャパ上拾い損ねてしまい、申し訳ない限りです。
    シルイン好きさんのお肌に合うかわかりませんが、どなたかにでも少しでも楽しんでいただければ幸いです。
    【現パロ】ぐりっとちゃん、恋心自覚の巻。【シルイン】【注意書き】
    1 書いている人の主生息地がクロヒルです。ですが、こちらはシルインがメインです。ただ、そちらも影響してクロヒル要素もそこそこ含んでいます。
    2 クロヒルweekに際してあげた小説の現パロ設定と合わせて書いたシルイン小説になります。(この設定でシルインを唐突に書きたくなったため。)こちらだけでも読める筈ですが、少し設定がわかりにくいかもしれません。
    3 でも謎のこだわりを発揮してしまい長いです。ご注意ください。
    4 その他 青獅子NLをメインに小説書くのはこちらが初なので気になることなどあるかと思います。どうしても気になる際はそっとご指摘いただけますと幸いです。
    5 主な登場人物 シルヴァン イングリット(後半の方が出番多いです。)
    10447

    recommended works

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    3.遭遇・上
     三学級合同の野営訓練が始まった。全ての学生は必ず野営に使う天幕や毛布など資材を運ぶ班、食糧や武器等を運ぶ班、歩兵の班のどれかに入りまずは一人も脱落することなく全員が目的地まで指定された時間帯に到達することを目指す。担当する荷の種類によって進軍速度が変わっていくので編成次第では取り残される班が出てくる。

    「隊列が前後に伸びすぎないように注意しないといけないのか……」
    「レオニーさん、僕たちのこと置いていかないでくださいね」

     ラファエルと共に天幕を運ぶイグナーツ、ローレンツと共に武器を運ぶレオニーはクロードの見立てが甘かったせいでミルディンで戦死している。まだ髪を伸ばしていないレオニー、まだ髪が少し長めなイグナーツの幼気な姿を見てクロードの心は勝手に傷んだ。

    「もう一度皆に言っておくが一番乗りを競う訓練じゃあないからな」

     出発前クロードは念を押したが記憶通りそれぞれの班は持ち運ばねばならない荷の大きさが理由で進軍速度の違いが生じてしまった。身軽な歩兵がかなり先の地点まで到達し大荷物を抱える資材班との距離は開きつつある。

    「ヒルダさん、早すぎる!」
    「えー、でも 2073

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    5.初戦・上
     三学級対抗の模擬戦はクロード達の勝利に終わった。これもクロードの記憶とは異なっている。容赦のなかったベレスの記憶があるクロードは事前に何か工作するかベレトに探りを入れてみたが拒否された。こんな下らないことに全力を尽くすなという意味なのか気高い倫理観の持ち主なのかはまだクロードには分からない。腹下しの薬は冗談だったが賛同してもらえたら武器庫に忍び込んで他学級の使う武器の持ち手にひびを入れてしまうつもりだった。

     母国やデアドラと比べるとガルグ=マクは肌寒い。気に食わない異母兄が王宮で働く女官を寝室に引っ張り込むような寒さだ。それでも来たばかりの頃と比べればかなり暖かくなっている。過酷な太陽の光に慣れたクロードの目にも山の緑は目に眩しく映った。長時間、薄暗い書庫で本を物色していたからだろうか。廊下に差す光に緑の目を細めながら歩いていると大司教レアの補佐を務めるセテスに声をかけられた。クロードは規則違反に目を光らせている彼のことがあまり得意ではない。

    「ちょうど良かった。クロード、後でベレトと共にこちらに顔を出しなさい」
    「分かりました。セテスさんは先生が今どの辺りにいる 2100

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    9.典儀・上

     情報には出元と行き先がある。それを見極めずに判断を下すと間違いが起きる。前節、カトリーヌがロナート卿の所持品から見つけた大司教レアの暗殺計画に関する密書は様々な波紋を読んだ。真偽の程は定かではないが対応せねばならない。

     謁見の間に呼び出されたベレトから今節の課題を聞いたクロードは教会があの密書をどう判断したのか悟った。今回も彼の記憶と同じく何者かが教会を混乱させる為に作成した偽物であると判断したのだ。そうでなければ士官学校の学生に警備や見回りを担当させないだろう。だがクロードにとっては丁度良かった。賊の狙いが何処であるのか確かめる為という大義名分を得て修道院の敷地内を直接、自由に見て回れる。賊が聖廟の中で何かを探し、奪いに来たがそこでベレスが天帝の剣を手に取り賊を撃退したことをクロードは覚えているのだがだからといって日頃入れない聖廟を直接探る機会を逃したくはなかった。それにロナート卿の叛乱の時と同じくまたクロードたちが当事者になっている。詳しく調査しておいて損はないだろう。

     ガルグ=マクにはフォドラの外からやってきた住人がクロード以外にも存在する。自然と祖先を 2082