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    翠風の章の時の話なので……。

    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17484168
    この話の番外編です。なおこの話(pixivの方)はトータル八万文字弱のうち半分がロレマリなのでご注意下さい。

    #クロヒル
    blackHill

    クロヒルweek_day3テーマ「翠風」 学生時代が終われば男も女も大人扱いをされる。クロードにしても三つ編みを切って装いを改めたしヒルダだって装いが改まるのは当たり前だ。五年ぶりに会った女子の同級生たちは皆それぞれに美しくなっている。エドマンド辺境伯にするために彼の手元に引き取られたマリアンヌは例外だが皆胸元が大きく開いた服を着るようになった。フォドラの親たちは娘が大人としての責任を果たせるようになったと判断すれば胸元が大きく開いた服を着ることを許すし結婚すればまた服の胸元は閉じられる。夫の意向なのだろうか。

    「いくらなんでも露骨すぎないか?」
    「まあ分かりやすくてよろしいんじゃないですかね」

     パルミラ兵が国境を通過出来るように準備している家宰のナルデールが打ち合わせにやってきたのでクロードは母国との文化の違いについて聞いてもらおうとしたのだが彼はクロードが書いたホルスト卿への手紙の中身を確認しているので全ては生返事だ。生返事であることに視線で反論していると耳飾りがついていない方の耳を引っ張られた。

    「いたたたた!もう子供じゃないんだからやめてくれ!」

     ナルデールことナデルは大柄で逞しい体つきをしている。細かった学生時代よりは逞しくなった自覚はあるがそれでも彼と比べればクロードはまだ子供のようだ。

    「子供扱いされたくないなら大人の男らしく振る舞うことですな」

     解放してもらえた耳を涙目で撫でる。後に血の同窓会と呼ばれるようになるグロンダーズの戦いに勝利しても子供の頃から世話になっている彼には敵わない。

     季節は竪琴の節を迎え自然は人間の営みとは関係なく春を迎えていた。花が咲き乱れるのは花冠の節だが竪琴の節にも花は咲く。ガルグ=マクには温室もある。

    「壮行会?」
    「うん、次はメリセウス要塞に行くんでしょ?その前にちょっとだけね」

     三つ巴の戦いになんとか勝利したこともあり諸侯からの覚えもめでたく勝ち馬に乗りたい者たちからの援助物資が届いている。少し多めに飲み食いしても問題はない。

    「何か思いついたのか?ヒルダ」
    「女子は皆、髪に花を飾るの」
    「足りるか?」

     花が咲き乱れるような平原は遠いし温室に咲いている花だけで賄えるのだろうかとクロードが考え込んでいるとヒルダが言葉をつづけた。

    「今すごくいい感じに花が咲いてる紫丁香花の木があるの知ってる?」
    「それなら金もかからないし、ってことか」

     ヒルダに指摘されてクロードも思い出したが確かに紫色の花が咲いている木がある。香水の原料になるほど香りも良いので確かに良いかもしれない。

    「うん、私とリシテアちゃんで仕切ろうかなって」

     断る理由もないので勿論クロードは承諾した。

     食卓に置かれているものは代わり映えしないし皆が身につけているのも普段着だ。それでも細やかな工夫だけで随分と印象が変わる。紫色の小さな花の塊は皆の髪によく似合っていた。

     今日は昼に中庭で集まって飲んでいる。パルミラの者は気候の良い時期は外で飲み食いするのが好きなのでヒルダから今日は外で、と提案されて本当に嬉しかった。クロードは騒ぎの中心になっているベレトから少し距離をとって杯を傾けている。皆がはしゃぐ姿を眺めるのが好きだし誰が誰と話し誰を避けているのかを知るのにもちょうどいい。それに近寄ってしまえばクロードの視線がどう動くのか把握されてしまう。

     どうしても緑の瞳はヒルダを追ってしまう。桃色の髪に紫色の小さな花の塊がよく似合っていた。紫丁香花は良い香りがするのできっと今日は香水もつけていないのだろう。フォドラ人は肌の色が真っ白なので酒に酔っているかどうかもすぐに分かる。頭のてっぺんから爪先まで眺めるつもりだったがクロードの視線はある一点で止まった。

     当たり前だが生花の花びらは糊付が出来ない。風が吹きこぼれ落ちた紫丁香花の小さな花がヒルダの胸の谷間に挟まっている。大きく胸元が開いた服を着て髪に生花を飾っていれば自然なことなのかもしれないがクロードは杯を卓に置いて目を逸らした。なんだか見ていられない。ヒルダのすぐ向かいで呑んでいるレオニーは何故ヒルダに教えてやらないのか。

    「ヒルダ、花が挟まってるぞ」
    「あれっ!気がつかなかった!」

     レオニーがヒルダのほんのり赤く染まった胸元にくっついた小さな紫丁香花をそっと摘んだ。

    「ありがとね、レオニーちゃん」

     当たり前だが邪な心が全くないレオニーは平然としている。もし自分があの立ち場になったらきっと激しく動揺するはずだ。

     -花冠の節-
     ガルグ=マク修道院は自然豊かな山の中にある。山の恵みは豊かで蜂蜜を採ったり狩りをすることもできるがそれと引き換えに虫も多い。天気が良いので中庭で書類を眺めているとヒルダの金切り声がクロードの鼓膜を叩いた。

    「いやぁー!!蜘蛛!!レオニーちゃん!早く払って!!」
    「ええっ!蜘蛛!!蜘蛛は触れないんだよ!!」

     先日は全く躊躇することなくヒルダの胸元に手をやったレオニーだが蜘蛛は苦手なようで払ってやることができないらしい。

    「クロード!頼む!」

     急にレオニーが腕を引っ張ったのでクロードは書類を辺りに撒き散らしてしまった。

    「ヒルダ、取ってやるから動くなよ!」

     ヒルダは涙目で身動きするのを我慢している。もう自分がどんな顔をしているのかよくわからない。騒ぎを起こした蜘蛛は小さくて残念ながら手袋をしたままでは上手く払えなかった。

    「クロードくん!!なんでも良いから早く取ってよ!!」
    「あー!もう!!俺がこのことでホルスト卿やゴネリル公から殺されそうになったらきちんと証言してくれよ!!」

     そう叫んでからクロードは黒い手袋を外した。その後のことは細かく覚えていると命の危険があるような気がしたからかよく覚えていない。もったいない気もするが命より価値のあるものはないので仕方がない。

     ヒルダも息を荒げながら礼を言ってくれたしレオニーも涙目でよく頑張ったとクロードを労ってくれたのでどうやら女性目線で見ても不手際はなかったようだ。きっと怒り狂ったホルスト卿たちを前にしても二人はクロードを庇ってくれるだろう。散乱した書類を拾い集めたマリアンヌが腫れ上がって痛む褐色の指にライブをかけてくれたあたりからクロードの記憶は戻っている。

     クロード、いやカリードはフォドラに住んでもう何年も経つがある一定の期間だけ女性の胸元が開くのはやはりおかしな慣習だと思う。

     とりあえずヒルダは蜘蛛に咬まれなかった。
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    DONE翠風の章の時の話なので……。

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    この話の番外編です。なおこの話(pixivの方)はトータル八万文字弱のうち半分がロレマリなのでご注意下さい。
    クロヒルweek_day3テーマ「翠風」 学生時代が終われば男も女も大人扱いをされる。クロードにしても三つ編みを切って装いを改めたしヒルダだって装いが改まるのは当たり前だ。五年ぶりに会った女子の同級生たちは皆それぞれに美しくなっている。エドマンド辺境伯にするために彼の手元に引き取られたマリアンヌは例外だが皆胸元が大きく開いた服を着るようになった。フォドラの親たちは娘が大人としての責任を果たせるようになったと判断すれば胸元が大きく開いた服を着ることを許すし結婚すればまた服の胸元は閉じられる。夫の意向なのだろうか。

    「いくらなんでも露骨すぎないか?」
    「まあ分かりやすくてよろしいんじゃないですかね」

     パルミラ兵が国境を通過出来るように準備している家宰のナルデールが打ち合わせにやってきたのでクロードは母国との文化の違いについて聞いてもらおうとしたのだが彼はクロードが書いたホルスト卿への手紙の中身を確認しているので全ては生返事だ。生返事であることに視線で反論していると耳飾りがついていない方の耳を引っ張られた。
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    hk_krhr

    DONEシルイン(+クロヒル)位の小説になりますので、こちらはウィークタグの方は避けます。自分の書いた現パロ設定でシルイン(特に風紀委員してるグリットちゃん)を見たくなったが故に同時生成した産物です。
    グレン氏の話を拾おうと思ったのですがキャパ上拾い損ねてしまい、申し訳ない限りです。
    シルイン好きさんのお肌に合うかわかりませんが、どなたかにでも少しでも楽しんでいただければ幸いです。
    【現パロ】ぐりっとちゃん、恋心自覚の巻。【シルイン】【注意書き】
    1 書いている人の主生息地がクロヒルです。ですが、こちらはシルインがメインです。ただ、そちらも影響してクロヒル要素もそこそこ含んでいます。
    2 クロヒルweekに際してあげた小説の現パロ設定と合わせて書いたシルイン小説になります。(この設定でシルインを唐突に書きたくなったため。)こちらだけでも読める筈ですが、少し設定がわかりにくいかもしれません。
    3 でも謎のこだわりを発揮してしまい長いです。ご注意ください。
    4 その他 青獅子NLをメインに小説書くのはこちらが初なので気になることなどあるかと思います。どうしても気になる際はそっとご指摘いただけますと幸いです。
    5 主な登場人物 シルヴァン イングリット(後半の方が出番多いです。)
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    紅花ルートで戦死した記憶があるクロードと青獅子ルートで戦死した記憶があるローレンツの話です。12月にクロロレオンリーイベントがあればそこで、実施されなければ11月のこくほこで本にするつもりで今からだらだら書いていきます。
    1.振り出し・上
     クロードが最後に見たのは天帝の剣を構える元傭兵の女教師だった。五年間行方不明だった彼女が見つかって膠着していた戦況が動き始めそれがクロードにとって望ましいものではなかったのは言うまでもない。

     生かしておく限り揉めごとの種になる、と判断されたのは故郷でもフォドラでも同じだった。人生はなんと馬鹿馬鹿しいのだろうか。だが自分の人生の幕が降りる時、目の前にいるのが気に食わない異母兄弟ではなくベレス、エーデルガルト、ヒューベルトであることに気づいたクロードは笑った。
    >>
     もう重たくて二度と上がらない筈の瞼が上がり緑の瞳が現れる。その瞬間は何も捉えていなかったが部屋の窓から差す光に照準が合った瞬間クロードの動悸は激しく乱れた。戦場で意識を取り戻した時には呼吸が出来るかどうか、視野は失われていないか、音は聞こえるのかそれと体が動くかどうか、を周りの者に悟られぬように確かめねばならない。クロードは目に映ったものを今すぐにでも確認したかったが行動を観察されている可能性があるので再び目を瞑った。

     山鳥の囀りが聞こえ火薬や血の匂いを感じない。手足双方の指も動く。どうやら靴は履 2041

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     ラファエルと共に天幕を運ぶイグナーツ、ローレンツと共に武器を運ぶレオニーはクロードの見立てが甘かったせいでミルディンで戦死している。まだ髪を伸ばしていないレオニー、まだ髪が少し長めなイグナーツの幼気な姿を見てクロードの心は勝手に傷んだ。

    「もう一度皆に言っておくが一番乗りを競う訓練じゃあないからな」

     出発前クロードは念を押したが記憶通りそれぞれの班は持ち運ばねばならない荷の大きさが理由で進軍速度の違いが生じてしまった。身軽な歩兵がかなり先の地点まで到達し大荷物を抱える資材班との距離は開きつつある。

    「ヒルダさん、早すぎる!」
    「えー、でも 2073

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    「先に掴んで暴露してしまえば檄文自体無効になるかと思ったがそんな都合の良い案件は見当たらなかった。敢えて言うならダスカーがらみか?」
    「だがあれも機能不全に陥った王国の要請がなければ騎士団が担当することはなかっただろう」

     エーデルガルトが見つけたと称するセイロス教会がフォドラの全てを牛耳っている証拠とセイロス教会の秘密は同一なのだろうか、それとも違うのだろうか。探さねばならないものが増えてクロードは大変そうだ。大変そう、と言えばベレトも大変そうだ。彼は修道院内を丹念に探 2099

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    15.鷲獅子戦・上
     フレンが金鹿の学級に入った。クロードにとっては謎を探る機会が増えたことになる。彼女は教室の片隅に座ってにこにこと授業を聞いてはいるが盗賊と戦闘した際の身のこなしから察するに只者ではない。兄であるセテスから槍の手解きを受けたと話しているがそういう次元は超えていた。

    「鷲獅子戦にはフレンも出撃してもらう」

     やたら大きな紙を持ったベレトが箱を乗せた教壇でそう告げると教室は歓声に包まれた。これで別働隊にも回復役をつけられることになる。治療の手間を気にせず攻撃に回せるのは本当にありがたい。今まで金鹿の学級には回復役がマリアンヌしかいなかった。負担が減ったマリアンヌの様子をクロードが横目で伺うと後れ毛を必死で編み目に押し込んでいる。安心した拍子に髪の毛を思いっきり掻き上げて編み込みを崩してしまったらしい。彼女もまたクロードと同じく秘密を抱える者だ。二重の意味で仲間が増えたことになる。五年前のクロードは周りの学生に興味は持たず大きな謎だけに目を向けていたからマリアンヌのことも流していた。どこに世界の謎を解く手がかりがあるか分かりはしないのに勿体ない。
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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    17.惨劇・上
     南方教会を完全に無力化されてしまったことや西方教会対策やダスカーの幕引きでの手腕には疑わしいところがあったがルミール村においてまず疫学的な検査から実施されたことからもわかる通りセイロス騎士団は手練れの者たちの集まりだ。ベレトの父ジェラルドまで駆り出されている異変においてクロードやローレンツのような部外者が介入しても迷惑がられるだけだろう。

     クロードにしてもローレンツにしても記憶通りに進んでほしくない出来事は数多ある。ロナート卿の叛乱もコナン塔事件も起きない方がよかったしこの後の大乱も起きて欲しくない。だがこのルミール村の惨劇は起きてほしくなかった案件の筆頭にあげられる。他の案件の当事者には陰謀によって誘導されていたとはいえ意志があった。嵌められていたかもしれないが思惑や打算があった。だがルミール村の者たちは違う。一方的に理性や正気を奪われ実験の対象とされた。そこには稚拙な思惑や打算すら存在しない。事件を起こした側は村人など放っておけばまた増えると考えたらしいが二人にとって直接見聞していないにも関わらず最も後味が悪い事件と言える。
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