Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    111strokes111

    @111strokes111

    https://forms.gle/PNTT24wWkQi37D25A
    何かありましたら。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 323

    111strokes111

    ☆quiet follow

    女神の徒から孤独で冷酷と称された我が国の未来の民に我々は何を遺すことが出来るだろうか。神を汚し罵る趣味と全ての悪徳だろうか

    クロロレワンドロワンライ第46回「花畑」 ミルディン大橋のレスター諸侯同盟側にある砦近辺には花畑が広がっている。休耕地の花々は人間の都合など知らず咲き誇っていた。
    「この辺は休耕地が多いから少しだけ気が楽だ」
    「多いだけだ。一面でも二面でも収穫前の麦畑が荒らされれば一年間の苦労が水の泡となって消えその一家は破綻する。絶対に食い止めねば」
     ローレンツの発言はクロードに対する嫌味ではない。事実を指摘し己に気合を入れているだけだ。しかしローレンツの個性を受け入れていない者が聞けば単なる嫌味と受け取るだろう。
    「魔法や火薬で土壌が汚染されるのは分かってるさ。安心させてやれないこの身の非才さが歯痒いな」
     クロードたちは砦を出て橋の付近に陣を敷き帝国軍を待ち構えている。先ほど戻ってきた斥候によるとカスパルとリンハルトがいるらしい。
    「降伏させられるならさせたいな。こちらも名誉より命が優先だ。死ぬなよ、捕虜になって内情を探ってきてくれ」
     先程終わった軍議の際にローレンツは分かったような顔をしてクロードの意見に頷いていたが一番危ういのは彼だ。名誉のため他人を守るために死にかねない。だからぬけぬけと言わせて貰えばグロスタール伯はクロードの元に嫡子を寄越したのだ。価値観の相違が良い結果を生むと信じて貰ったからには期待に応えるしかない。
    「一刻も早く父の許へ行かねば」
     数えきれないほどの敵兵はまるで一つの塊のようになっている。ローレンツは囲まれることを恐れずシェズと共に突っ込んでいった。故郷にいた西の国境に駐屯している部隊からの報告書をクロードは読んだことがある。彼らは髪と瞳が薄紅色の者を恐れる。こちら側に来てみれば自国の兵が恐れるゴネリル家の者たちはひたすら感じが良かったのでクロードは自分の野望に更に自信を持った。ともかく今後、帝国の兵たちは髪と瞳が紫の者を嫌うようになるかもしれない。槍を振るう白い横顔は誇らしげだった。殺し合いの場に身を置いていようとローレンツは尊敬する父の役に立てることを心の底から喜んでいる。だがクロードたちはこの後、彼の喜びに冷水を浴びせるのだ。クロードはこれまで少々ローレンツと親睦を深めたが今後は公的な関係すら危うくなるかもしれない。
     このままこの場を凌ぐことはできる。だがそれは対処療法に過ぎず根本的な解決にはならない。クロードはローレンツたちが奪取してくれた砦で手綱を引き飛竜を上昇させた。誰も注目していない時でなければパルミラ式の遠眼鏡が使えない。見渡した先で自軍の兵士は善戦していた。人的損害を無視すればきっと今回は防衛できるだろう。だが国力の差から言っても善戦するだけではいずれすり潰される。クロードは自分と同じくそのことをきちんと理解していたグロスタール伯に作戦を開始するか否かも含めて委ねている。猜疑心の塊を自称する己らしくない振る舞いだった。
     伝令兵がクロードの元に駆け込んできた。際限なく枝分かれしていた未来が大きく刈り取られていく。
    「全軍、橋を放棄して撤退せよ!」
     自分は望ましい未来を掴み取ることが出来るのだろうか。飛竜に跨って時には囮を引き受けつつクロードは戦場中を飛び回った。
    「総大将がこんなところで何をやっている!!」
     シェズと共に父を助けるため敵陣の奥深くへ攻め込んでいたローレンツはクロードの姿を目にしてそう叫んだ。これは彼が本当に叫びたいことではない。何故、父の下へ援軍を送ってくれないのかと言いたい筈だ。ローレンツは必死で名誉と仲間の命を守ろうとしている。
    「その辺の話は全部後だ!俺たちは味方の撤退を支援する!」
     クロードは前哨基地に戻ったら絶対に彼と話し合わねばならない。話し合わねばならないのだが彼へ真実は伝えるわけにいかない。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭👏👏👏👏🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    111strokes111

    DONE #クロロレ春のこども祭り2021重力から自由になったと思った矢先、クロードは全身に強い痛みを感じた。跳ね起きようとしてマヌエラ先生から身体を押さえられる。押さえられた拍子に視界がぐるぐると回りやがて上下が定まった。

    「落ち着きなさいクロード!貴方は飛竜から落ちたの。下敷きになったローレンツも骨折したわ。二人とも信仰魔法で治したけれど大怪我だったから落ち着くまで時間がかかるわ」

     落ち着く、とはなんだろうか。信仰魔法の主な副作用は吐き気と眩暈だ。先程マヌエラが起きあがろうとしたクロードを止めたのはせっかく治したのに目眩を自覚せず歩こうとして転倒されては無意味になってしまうからだろう。

    「ああ、それで視界がぐるぐると……それとローレンツが下敷きって??」
    「ローレンツも無事だから落ち着きなさい。目眩を起こしたまま歩くのは本当に危ないの。人によって体質の違いがあるけれど一日か二日は絶対安静よ」

    「せんせい、もうしわけないのだがおけをぼくのてもとにいただけないだろうか?」

     反対側の寝台から声変わり前の高くてかわいらしい子供の声がした。医務室の寝台には全て幕が掛かっていて互いが見えないようになっている。

    「ああ、 1753

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    紅花ルートで戦死した記憶があるクロードと青獅子ルートで戦死した記憶があるローレンツの話です。
    2.振り出し・下
     士官学校の朝は早い。日の出と同時に起きて身支度をし訓練をする者たちがいるからだ。金鹿の学級ではラファエル、青獅子の学級ではフェリクス、黒鷲の学級ではカスパルが皆勤賞だろうか。ローレンツも朝食前に身体を動かすようにしているがその3人のように日の出と同時には起きない。

     ローレンツは桶に汲んでおいた水で顔を洗い口を濯いだ。早く他の学生たちに紛れて外の様子を見にいかねばならない。前日の自分がきちんと用意していたのであろう制服を身につけるとローレンツは扉を開けた。私服の外套に身を包んだシルヴァンが訓練服姿のフェリクスに必死で取り繕っている所に出くわす。

    「おはよう、フェリクスくん。朝から何を揉めているのだ?」
    「煩くしてすまなかった。単にこいつに呆れていただけだ」

     そう言うと親指で赤毛の幼馴染を指差しながらフェリクスは舌打ちをした。シルヴァンは朝帰りをディミトリや先生に言わないで欲しいと頼んでいたのだろう。

    「情熱的な夜を過ごしたのかね」

     呆れたようにローレンツが言うとシルヴァンは照れ臭そうに笑った。

    「愚かすぎる。今日は初めての野営訓練だろう」

     フェリ 2066

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    3.遭遇・上
     三学級合同の野営訓練が始まった。全ての学生は必ず野営に使う天幕や毛布など資材を運ぶ班、食糧や武器等を運ぶ班、歩兵の班のどれかに入りまずは一人も脱落することなく全員が目的地まで指定された時間帯に到達することを目指す。担当する荷の種類によって進軍速度が変わっていくので編成次第では取り残される班が出てくる。

    「隊列が前後に伸びすぎないように注意しないといけないのか……」
    「レオニーさん、僕たちのこと置いていかないでくださいね」

     ラファエルと共に天幕を運ぶイグナーツ、ローレンツと共に武器を運ぶレオニーはクロードの見立てが甘かったせいでミルディンで戦死している。まだ髪を伸ばしていないレオニー、まだ髪が少し長めなイグナーツの幼気な姿を見てクロードの心は勝手に傷んだ。

    「もう一度皆に言っておくが一番乗りを競う訓練じゃあないからな」

     出発前クロードは念を押したが記憶通りそれぞれの班は持ち運ばねばならない荷の大きさが理由で進軍速度の違いが生じてしまった。身軽な歩兵がかなり先の地点まで到達し大荷物を抱える資材班との距離は開きつつある。

    「ヒルダさん、早すぎる!」
    「えー、でも 2073

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    8.背叛・下
     雷霆を振るうカトリーヌの名を聞いた者に多少なりとも英雄の遺産や紋章の知識があったならばそれがとんだ茶番だと判るだろう。だが無謬であるセイロス教会が彼女をカサンドラではなくカトリーヌと呼ぶのならそれに従うしかない。カロン家当主としても令嬢カサンドラに死なれるよりはガルグ=マクで生きていてくれた方が良いのだろう。

     ローレンツは霧深い街道をガスパール城に向けて黙々と進んでいた。前方ではクロードとベレトとカトリーヌが何やら話している。五年前、ローレンツは帝国軍が破竹の快進撃を見せた時に正直言ってファーガス神聖王国がほぼ崩壊したと思った。今の彼らの会話を耳にしてもファーガスが凋落しているという印象が深まっていく。青獅子の学級の学生たちは士官学校に入る前に初陣を済ませている者が多いのはダスカーの悲劇以降小規模な騒乱が後を立たずにいるからだ。

     だからあの時ローレンツはフェルディナントと共にミルディン大橋に立った。ファーガスは近々自壊するだろうしパルミラとの国境を守りながら強大な帝国に抗う力が同盟にはない。ならばせめて領地と領民を守りたいと思ったからだ。霧の立ちこめる行路は人生 2090

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    17.惨劇・上
     南方教会を完全に無力化されてしまったことや西方教会対策やダスカーの幕引きでの手腕には疑わしいところがあったがルミール村においてまず疫学的な検査から実施されたことからもわかる通りセイロス騎士団は手練れの者たちの集まりだ。ベレトの父ジェラルドまで駆り出されている異変においてクロードやローレンツのような部外者が介入しても迷惑がられるだけだろう。

     クロードにしてもローレンツにしても記憶通りに進んでほしくない出来事は数多ある。ロナート卿の叛乱もコナン塔事件も起きない方がよかったしこの後の大乱も起きて欲しくない。だがこのルミール村の惨劇は起きてほしくなかった案件の筆頭にあげられる。他の案件の当事者には陰謀によって誘導されていたとはいえ意志があった。嵌められていたかもしれないが思惑や打算があった。だがルミール村の者たちは違う。一方的に理性や正気を奪われ実験の対象とされた。そこには稚拙な思惑や打算すら存在しない。事件を起こした側は村人など放っておけばまた増えると考えたらしいが二人にとって直接見聞していないにも関わらず最も後味が悪い事件と言える。
    2123