離婚して再婚するやつ(仮)6 先日、ローレンツが警察署まで迎えに来た五年生の児童は簡単に引き返せる。ナイフを見せびらかしてしまうくらい幼かったので周りの大人も早めに彼の問題に気づくことができた。
だが小銭欲しさに運び屋をするような子供は自分が何に関わったのか、を自分自身からも隠してしまう。止めてくれる大人がいない環境で育った子供は肯定される体験が少ない。自分を褒めてくれる悪い大人のために中身に気付かないふりをして頑張ってしまう。麻薬も金も筒状で蓋がついているポテトチップの容器に隠されてしまうと自由に麻薬探知犬が使えないクロードたちからは声がかけにくい。
現在、クロードから疑いの目を向けられている制服姿の少年は背の高さから言っておそらく八年生か九年生だ。とにかく腹の減る年頃なので普通なら彼が持っている炭酸飲料とポテトチップは午前中には全て胃の中に消えてしまうだろう。
もし、彼が通学路にいたならばクロードもスーパーのロゴが入った袋の中身を疑いはしない。だがどこか顔立ちの幼い彼は午前中の授業も受けず、管理の行き届いていない公園の入り口に人待ち顔で佇んでいる。だが彼の待ち人は来ないだろう。公園を悪用させないため警察のロゴ入りジャケットを身につけたクロードたちが警邏している最中だからだ。
「怠いだろうけど今日は運が悪かったと思って学校に行きな!」
今日の午後に学校で持ち物検査が実施されるかされないか、はクロードの指先にかかっている。スーパーの袋を抱えた少年が渋々学校に向かって歩いて行く姿を確認するとクロードは私物のスマートフォンを取り出した。
「よお、ローレンツ」
「番号をお間違えのようだが?」
声が氷のように冷たい。クロードが電話をかけた先はローレンツが仕事用に使っているスマートフォンだ。保護者とのやりとりに齟齬が起きないよう会話が録音されるようになっている。
「この時間に西公園でフラフラしてるお前んとこの生徒を見かけたから登校するように説諭しといたぜ」
「そうか。残念ながら不登校の生徒が多いので君が声をかけた生徒の特徴を知りたい」
クロードが人相や体格それに持ち物について述べるとローレンツが息を呑んだ。取り越し苦労に終わるかもしれない。だがローレンツは感謝する、と言って電話を切った。