離婚して再婚するやつ(仮)11 クロードにちょっかいを出されている間もローレンツの仕事用スマートフォンにはメッセージがひっきりなしに届いていた。供述を取りたいので後日、都合の良い時で構わないから署まで来て欲しいという警察からのものもあれば校長やアネットからのものある。元夫と違って真面目な警察官からローレンツの勤務校に連絡が入ったのだろう。
悔しい話だがローレンツは元夫が警察官なので捜査に理解があり逃亡の恐れなし、と判断された。だから今、自宅で誰からも邪魔されず食事しながら校長やアネットの生徒やローレンツを案じたメッセージを読むことができる。何かを食べながらスマートフォンを弄るなど実家にいた頃ならあり得なかった。これもクロードの影響で、どんなに足掻いても彼に灼かれた跡が消せない。
───他にも現場にお巡りさんは沢山いたんでしょ?どうしてクロードが送ってくれたんだろうね?───
私用のスマートフォンの煌々と光る画面がアネットからの最新メッセージを映し出している。
今もクロードは悔しいくらい変わっていない。彼と共にいるとローレンツは振り回されてしまう。皮肉と言う盾で身を守ろうとした結果があんなことになってしまった。先延ばしにしていたがマッチングアプリにアカウントを作る良い機会なのかもしれない。ローレンツはとりあえずビールを飲み干し、カメラのアプリを起動した。教え子たちのように上手く自撮りができるだろうか?
インカメラが映す自分は酷い顔をしていた。質問への回答はともかく明日、マッチングアプリ用の写真を撮って欲しい、アネットにはそれだけ頼もう。ローレンツはどれほど自分が混乱しているのかよく分かっていなかった。
「ローレンツ、こっちのスマホだもの。どんな話でも聞くよ?」
アネットはどうやら待ち構えていたらしい。呼び出し音はコンマ二秒で切れ、スピーカーは頼もしい友人の声を伝えてくる。アネットの声を聞いたローレンツは我に返った。いきなり本題だけ伝えて混乱に巻き込むわけにいかない。
「アネットさん、今の僕は結論から話すべきなのか事の発端から話すべきなのかもよく分からないのだ」
「明日は自習でも誰も責めないよ。だから最初から話して欲しいな」
ローレンツは素直にスマートフォンに充電コードを差し込んだ。