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    takami180

    @takami180
    ご覧いただきありがとうございます。
    曦澄のみです。

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    takami180

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    曦澄ワンドロワンライ
    第三回お題「夢」

    本編終了後、付き合っている曦澄。
    現実での大事なものと、本当は大切にしたいもの。

    ムーンライト宗主→ごめんねすなおじゃなくて→夢、という連想結果が何故こんなことに。

    #曦澄

     その夜は金氏と合同の夜狩だった。そこで江宗主は大怪我を負った。
     邪祟から師弟を庇い、腹に穴をあけられた。
     江澄自身、これはまずいと感じた。血を吐き、体から力が抜ける。
    「宗主!」
     倒れたところを誰かに抱え起こされた。
     すかさず金凌が矢を射る。放たれた矢は狙い違わず邪祟を貫いた。
    「叔父上!」
    「金凌っ……」
     声にできたのはそれだけだった。怪我をせず、健やかに、生きてほしい。お前の生きていくこれからは、どうか穏やかな世界であるように。
     江澄は手を伸ばそうとしてかなわなかった。
     まぶたの裏に、白い装束の影が映る。心残りがあるとすれば、あの人にもう会えないことか。
    「誰か止血を!」
     怒号と悲鳴が遠ざかり、江澄の意識は闇に沈んだ。


     まばゆい光の中で、白い背中が振り返る。
    「江澄……」
     ああ、あなたは会いにきてくれたのか。
     江澄は笑った。これは現実ではない。彼は姑蘇にいるはずだ。
     体を起こそうとして、まったく力が入らなかった。夢の中くらい、自由にさせてくれてもいいのに。
    「気がつきましたか」
    「藍渙……」
     ほとんど呼んだことのない名を口に出す。これが最後の会話になるなら、彼が喜ぶことをしたい。いつもは気恥ずかしさが先に立ってできないことも、今ならできるだろう。
    「藍渙、会いたかった」
     藍曦臣は江澄をのぞきこんで目を細めた。
    「珍しいことを言いますね」
    「最後くらいいいだろう」
     不思議なことに痛みはない。気分も悪くない。
    「なあ、もっとかかんでくれないか」
     請えば、藍曦臣は膝をつき、顔を寄せてくれる。
    「もっとだ」
     今でさえ、藍曦臣とは五寸の距離もない。それでも、江澄には遠い。
    「ですが」
    「いいから」
     怪訝そうにしながら、彼は顔を近づけて、江澄はなんとか頭を浮かせた。
     唇が当たる。
    「はは、悪い」
    「突然どうしました」
    「俺からあなたに口付けたことはなかったからな。不恰好で悪いが」
     口をふさがれた。
     下唇をやわく食まれ、舌で舐められる。口を開けてやると、分厚い舌が入ってくる。
     いつものように口を吸われて、江澄は思わず短く息を吐いた。
    「藍渙」
    「まだです」
    「んっ」
     もう一度、合わせられた唇から、今度は仙気が送られた。ぶわりと四肢に熱さが戻る。
     同時に鈍い痛みも。
    「最後、とあなたは言いますが、私にそのつもりはありませんよ」
     藍曦臣は優雅に微笑み、江澄の唇をついばんだ。
    「必ず戻っていただく。あなたを手放す気はない」
     江澄は笑った。頬に触れる手のひらからもじわりと仙気がにじみ出ている。
    「それに、あなたはうなされながら、ずっと金宗主の名前を呼んでいました。彼を一人にするつもりですか」
    「金凌か」
     未練にはなっていない。できるかぎりのことはしてきた。だが、そう言われては気にかかる。
     そして、もうひとつ気がかりといえば、切なげに微笑むこの人のこと。
    「そんな顔をするな、藍渙」
     現実の自分が甥を案じるのは道理である。しかし、彼を蔑ろにしたいわけではない。
     藍曦臣は眉尻を下げた。
    「早く目覚めてください。私は、あなたが生きているだけでいいのです」
    「分かった」
     答えた途端、江澄は眠気に襲われた。光で満たされていたはずなのに、周囲が急速に暗くなる。
     一度はしかたないと、手放してもいいと思ったものだった。けれど、あんな顔をされたのでは手放しきれない。
     ちゃんと顔を見て、伝えたいことができた。
    「お待ちしてます」
     藍曦臣のささやき声が耳に残った。


     江澄がまぶたを持ち上げると、暗闇だった。さっきと違って、牀榻に寝かされているのがわかる。
     右手を動かそうとして、誰かに握りしめられていることに気づいた。
     視線を動かせば、白い抹額が闇に浮かび、江澄は小さく笑った。
    「ら、ん、ふぁ」
     夢と違ってうまく口が動かない。
     がばりと頭を持ち上げたその人は「江澄」と名を呼んだ。
     頬を涙が流れていった。
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    「あなたは怪我人なんだぞ、勝手に動くな」
     かくいう江澄もまだ左手を吊ったままだ。負傷した者は他にもいたが、大怪我を負ったのは藍曦臣と江澄だけである。
     魏無羨と藍忘機は、二人を宿の二階から動かさないことを決めた。各世家の総意でもある。
     今も、江澄がただ水を取りに行っただけで、早く戻れと追い立てられた。
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    1437

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     藍曦臣は眠っただろうか。
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     行儀は悪いが誰かが見ているわけではない。
     牀榻の支柱に頭を預けて耳をすませば、藍曦臣の気配を感じ取れた。
     明日別れれば、清談会が終わるまで会うことは叶わないだろう。藍宗主は多忙を極めるだろうし、そこまでとはいかずとも江宗主としての自分も、常よりは忙しくなる。
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