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    takami180

    @takami180
    ご覧いただきありがとうございます。
    曦澄のみです。

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    takami180

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    恋綴3-15
    曦澄してます。

    #曦澄

     夕食後、江澄は客坊に留め置かれた。
     藍曦臣がわざわざ足を運んでくれるという。
     今までであれば寒室に招かれたはずだ。
     江澄は己の腕をさすった。
     机上に置かれた茶をすする。
     寒々しく思うのは気のせいか。落ち着かない。
    「お待たせして申し訳ない」
     もう亥の刻になろうかという頃になって、ようやく藍曦臣は顔を見せた。
     江澄は腕を組み、むっつりと黙り込む。
     これは遠ざけられようとしているのか。
    「ご用をおうかがいしましょう」
     いつか聞いた言葉だ。
     江澄はこめかみのあたりを殴られたような気分だった。
     藍曦臣は穏やかな笑顔を顔面に張り付けて、あのときは感じられた切迫感もない。
     たとえ自分が悪かったのだとしても、こんなふうに、他人のように、扱われるいわれはない。
     もう他人とは言えない距離のはずだった。
     恋というのでは、と言ったのは藍曦臣のほうだったくせに。
    「江宗主?」
    「すまない、お疲れのところ」
     そちらがそのつもりなら、と江澄は立ち上がって拱手した。
    「ただ一言、礼を申し上げたくて」
    「礼……とおっしゃるのは白梅の」
    「ああ、彼女を助けていただいて、大変ありがたく、御礼を申し上げる」
     藍曦臣は思いのほかわかりやすい男だった。彼ははっきりと傷ついた顔をして、かすれた声でつづけた。
    「彼女の、呪痕を解いたのは魏無羨です。私は何も……」
    「こちらに彼女を受け入れていただかなければ、魏無羨の助けも借りられなかった。藍宗主のおかげです」
    「江宗主」
    「なんだ、言いたいことがあるならはっきり言え」
     しばし、にらみ合う。
     すると、藍曦臣が突然手を突き出して、江澄の両肩をつかんだ。
    「江澄、私は」
    「なんだ」
    「無理です、諦められない」
    「は?」
     気が付くと、思い切りの力で抱きしめられていた。
     みしり、と体が悲鳴を上げる。
    「あなたが選んだことであれば、致し方ないと思っていました。だから、あなたにはできるだけ会いたくなかった。無理だとわかっていたのです」
    「俺が、何を選んだと」
    「彼女を大切に思っているのでしょう」
     まさか、本当に。
     江澄は瞠目し、言葉をなくした。
     そんなことで藍宗主が自分を避けていたとは。
     しがみつくように抱きしめてくる腕と、ぴたりとくっついた胸に、体の奥が引き絞られるように痛む。
    「俺が大切なのは」
     江澄は両腕を藍曦臣の背中に回した。
    「あなただ」
     伝わっていなかったのだろうか。
     そうなのかもしれない。
     江澄としてはせいいっぱいの気持ちを伝えてきたつもりだった。
     たしかにすべてを渡してはいなかったが、拒否はしなかった。
     藍曦臣の力が弱まり、顔をのぞかれた。
     久しぶりだ、と感じた。
     もっと近くに行きたいと思った。抱きしめあって、これ以上近づくことなどかなわないのに、それでも足りない。
     唇を合わせる。すぐに深くなる。
     江澄は口を開けて舌を差し出す。からまる舌に誘い出されて、藍曦臣の口の中に入る。
     覚えている限りのことを真似して、上顎をなめて、歯列をなぞっていると、やんわりと歯でかまれた。
     ずいと押し入る舌に負ける。
     今度は江澄がしがみつく番だった。
     藍曦臣の舌に翻弄されながら、どうにか送られる唾液を飲み込む。ぞくぞくと腰が疼き、膝から力が抜けていく。
    「あなたが、ほしい」
     耳に吹き込まれるようにささやかれ、江澄は必死に藍曦臣の背にすがった。
    「ここでは……」
     隣の棟には白梅がいる。江澄の客坊に藍曦臣が泊まったとなれば、彼女の耳にも入るだろう。そんな気まずいことは嫌だった。
    「寒室に、参りましょう」
     藍曦臣に手を引かれ、客坊を出る。
     すでに亥の刻に入ったか、人影はない。
     空を仰ぐと、満天に星が瞬いている。
     月はまだ山の向こう。
     つないだ手の先、白い背中がかすむほどの闇だ。
     ふと、この闇の中でなら、さらけ出せる気がした。
     寒室の門をくぐり、屋内に入ったところで江澄は立ち止まった。
    「江澄?」
    「藍渙、聞いてほしい話がある」
     闇の中で、藍曦臣が息を飲む。
    「以前に言っていた、私に言えないこと、ですか」
     江澄はつないだ手を持ち上げて、己の胸に当てた。
     ここに、傷がある。
     口を開けても、その一言が出てこない。
     傷があって、それをあなたに見せるのがおそろしい。嫌ってくれないよな。大丈夫だよな。
    「江澄」
     頬に口付けを受けた。
     間近に黒い瞳がある。
     その瞬間に江澄は己の過ちに気がついた。
     信じられなかったのは藍曦臣ではない。自分だ。
     とっくに気持ちは明け渡していると思っていたが、そうではなかった。
     だから、彼は疑い、諦めようとさえしたのだ。
    「あなたに諦められなくてよかった」
    「それは……」
    「ぜんぶ、見てほしい」
     傷があろうと、それはすでに江澄の一部だ。
     白梅が残った呪痕を自分のものとして引き受けたように、温氏に捕まったあのときの行いは後悔するものではない。
     藍曦臣が、心を預けるに足ると信じた人が、その傷を受け入れてくれないはずがない。
     力強く腰をひかれた。
     抱きしめられた腕の中で、耳に口付けられる。
    「見せてください」
     低い声に全身が震えた。
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    PROGRESS長編曦澄17
    兄上、頑丈(いったん終わり)
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    「何をしている!」
     江澄は鋭い声を飛ばした。ずかずかと房室に入り、傍の小円卓に水差しを置いた。
    「晩吟……」
    「あなたは怪我人なんだぞ、勝手に動くな」
     かくいう江澄もまだ左手を吊ったままだ。負傷した者は他にもいたが、大怪我を負ったのは藍曦臣と江澄だけである。
     魏無羨と藍忘機は、二人を宿の二階から動かさないことを決めた。各世家の総意でもある。
     今も、江澄がただ水を取りに行っただけで、早く戻れと追い立てられた。
    「とりあえず、水を」
     藍曦臣の手が江澄の腕をつかんだ。なにごとかと振り返ると、藍曦臣は涙を浮かべていた。
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    1437

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    PROGRESS恋綴3-2(旧続々長編曦澄)
    転んでもただでは起きない兄上
     その日は各々の牀榻で休んだ。
     締め切った帳子の向こう、衝立のさらに向こう側で藍曦臣は眠っている。
     暗闇の中で江澄は何度も寝返りを打った。
     いつかの夜も、藍曦臣が隣にいてくれればいいのに、と思った。せっかく同じ部屋に泊まっているのに、今晩も同じことを思う。
     けれど彼を拒否した身で、一緒に寝てくれと願うことはできなかった。
     もう、一時は経っただろうか。
     藍曦臣は眠っただろうか。
     江澄はそろりと帳子を引いた。
    「藍渙」
     小声で呼ぶが返事はない。この分なら大丈夫そうだ。
     牀榻を抜け出して、衝立を越え、藍曦臣の休んでいる牀榻の前に立つ。さすがに帳子を開けることはできずに、その場に座り込む。
     行儀は悪いが誰かが見ているわけではない。
     牀榻の支柱に頭を預けて耳をすませば、藍曦臣の気配を感じ取れた。
     明日別れれば、清談会が終わるまで会うことは叶わないだろう。藍宗主は多忙を極めるだろうし、そこまでとはいかずとも江宗主としての自分も、常よりは忙しくなる。
     江澄は己の肩を両手で抱きしめた。
     夏の夜だ。寒いわけではない。
     藍渙、と声を出さずに呼ぶ。抱きしめられた感触を思い出す。 3050

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