泡沫の夢/永遠の歓 海の波間から覗く影は、洋くどこまでも続く水の塊の只中に、木の葉が落ちたように揺蕩っていた。
人間の姿が見える。船と呼ばれる木の建造物の上で、細々と働く様は滑稽だった。
目を引く人間が居た。夕暮れの太陽と同じ色をした髪が、曇り空に映えていたのだろう。周りの人間から頭一つ飛び出ていたというのもあったかもしれない。
ふと、目が合った──と思った瞬間、男が木の枠組みを超えて、海に飛び込んできた。鰭もないだろうに、存外速いスピードで、腕で波をかいてどんどんこちらに近付いてくる。
大方、人間が溺れているとでも思ったのだろう。 船上では何人もの人間が慌てた様子でこちらを伺っている。小舟を下ろしているのが見え、面倒になる前に、とおれは波間に頭を沈めた。海の中で、ぐんと男から距離を取る。
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