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    れんこん

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    れんこん

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    第16回ベスティ♡ワンドロ用
    お題「部屋」
    グレイから見たベスティのお話
    ※ビリー出てきません

    #ベスティ
    besty

     ちいさく、キラキラ光るガラス瓶。
    複雑な形にカットされたそれは、ハートの形状を形作っていて、その表面は光が反射しやすくなるようにさらに細工が入っている。
    蓋は黒くシンプルで、根本には濃いピンク色のリボンが巻かれていた。
     中に入っている液体は何色なんだろう。ガラス瓶の色なのか中身の色なのか、隣のスペースからは判別できない。

     わりとナチュラルなテイストで纏められたビリーくんの部屋には少しだけ不釣り合いに思えるような……というか、まるで女の子の持ち物のようなそれが、つい目に入ってくる。
     きっちりと本が並べられたデスクの上にちょん、と置いてあるそれの隣にはなにか小さな音楽プレーヤーみたいなもの。これも、濃いピンク色。ハッキリと存在を主張するそれになんだか動揺して、見なければいいのに目がチラチラとデスクの方に向く。……ううん、友達って……、難しい。


    「ビリー、いる?」
    「ヒィッ!?」
    「……っ!?」

     突然ぱしゅんと音がして部屋の扉が開いて、突然の訪問者にびくっと背中を震わせてしまった。
     なんとなく気になって仕事で留守にしているビリーくんの部屋を勝手に覗いていたから、そのやましさもあって、驚きと同時にばくばく鳴る心臓はさらに跳ね回った。
     さらにその相手が相手だっただけにまた驚いてしまった。最近ずっとなんとなく脳裏で気にしている相手……その人だったから。

    「あ、あぁ……、フェイス、くん……。」
    「……あぁ、ごめんね、びっくりさせちゃった」
    「う、ううん、僕が勝手に驚きすぎただけだから……、ご、ごめんね……。」
    「アハ、謝り返さなくていいよ。今度からはノックするね。」

     歳下なのに大人っぽくて、顔はとっても綺麗でかっこよくて、常にみんなの中心に居てキラキラとして……別世界のひと。……だと思っていたけれど、この間のライブを経てほんの少しだけ以前よりも親しくなれた気がすると勝手に思っていたのだけれど。……それでも、こうして一対一になるのはまだ緊張して……そして複雑な心持ち。ビリーくんの『ベスティ』であるフェイスくん……。
     少しの間一緒に過ごしていてわかった事は……ただ容姿や自信から人気があるっていうだけじゃなくて、とにかくフェイスくんは良い人だってことで。……だからこそ、逆になんとなく拭えないモヤモヤした感情が膨らむ。
    ただの『友達』の僕より、……。

    「ビリー、居ないんだ。」
    「あっ……、う、うん、そうなんだ。今日ビリーくんはお仕事に行ってくるって……、」
    「……ふぅん。」
    「……?」

     ビリーくんが居ないと告げたらフェイスくんはすぐに帰るかと思っていたけれど、その均整の取れた身体は動かない。やっぱりまだ多少緊張して、ほんの少し汗をかく。前は演奏という名目があったけれど、何もない今はただただ何を話していいかわからない。音楽の話?それとも、ビリーくんの……、

    「えっと、……、」
    「……あ、あった。」
    「えっ……!?」

     しばらく僕の後ろ側をじっと見つめるようにしていたフェイスくんが突然動いてビリーくんの部屋に勝手に入る。慣れたように歩いて行って先程僕が見つめていたスペースからピンク色のプレーヤーを摘んだ。

    「……いつも使ってるやつ、ちょっと調子悪くなっちゃって。この間強請られたから昔使ってた予備をビリーに貸してたんだけど……外に持っていかれてなくてよかった。もらって行くからビリーが帰ってきたら伝えておいて貰える?」
    「えっ、あ、う、うん……。」

     確かに、その内容に聞き覚えがあった。
    ゲームのローディング中に耳に入ってきた隣の部屋の楽しそうな会話……。

    『あっ、コレ懐かしいネ〜!数年前にDJがずっと聴かせてくれた曲♪』
    『聴かせてた覚えはないけど?ビリーが勝手に人が気持ち良く音楽聴いてるところに、イヤホン片方奪って来てたんじゃん。』
    『HAHAHA〜⭐︎そのあとヘッドフォンに変えられちゃってこの曲もあまり聴く機会なかったんだよネ〜。』
    『その時にまとめて今使ってるプレーヤーに変えたんだよね。……だからこの古いやつに入ってるリストは昔のまんま。ちょっと懐かしくなって最近使ってたんだよね。』
    『ふぅ〜ん……。あっ、ねぇねぇ、DJこれちょっとオイラに貸してヨ〜!』
    『……何するつもり?』
    『何って!!何にもしないヨ〜!!ただゆっくり青春の曲♡を聴かせてもらいたいだけだモン!!ベスティ♡をまた疑うの〜!?』
    『はいはいっと……、まぁいいよ、俺も少しアカデミーの頃のこと思い出してわざわざ持ってきたのもあるし。』
    『ヒャッホウ!!ありがとベスティ♡』

     ……その後はゲームに集中し始めたし、ビリーくんたちもなんだか僕にはよくわからない話をずっとしていたようだったけど。
     あれからたまにビリーくんがその音楽プレーヤーを使っている時をチラホラ見かけた覚えもある。
     ……ちょっとだけ羨ましかった。僕も、ビリーくんと同じ年だったら、なんて考えて……あの時『6つ離れてたら友達になれナイ?』なんて言ってくれたビリーくんに申し訳なくなってぶんぶんと頭を振る。

    「……?」
    「あ、……ちゃ、ちゃんと伝えておくね……!」
    「うん、ありがとグレイ。邪魔しちゃったね」
    「ううん、全然………って、」

     部屋から出て行こうとしたフェイスくんに違和感を覚えてつい呼び止める。
    ……机の上にあったのは、そのプレーヤーだけじゃ無かったハズだ。

    「これも……フェイスくんのじゃ……?」
    「あぁ。」

     指さしたのはきらきらの小瓶。
    フェイスくんはそれに気づいて何気なく手に取る。僕が持っていてもきっと全然様にならないであろうそれを、フェイスくんが持つとまるで街に貼られているお洒落な広告のようになるから不思議だ。トレードマークみたいなその濃いピンク色のリボンが当たり前みたいにそこに馴染んだ。
    揺れた液体は薄いはちみつ色だった。
     フェイスくんは慣れた感じでその小瓶の蓋をかしゅ、と押して腕に吹きかけた。
    ……あ、香水。なんだろうと思ってた正体を知って、なんとなくドキドキとした心地を覚える。
    そして、フェイスくんはそれをふりかけた腕を少しこちらに近づけてきた。

    「……あ、」
    「……ビリーの匂いでしょ?アハ、クラブの仕事先で会った人がくれたんだけど、それ、基本的には女物なんだよね。俺にはちょっと……って思ってたけど、なんか似た匂いに覚えがあって。」
    「……!キャンディの……、」
    「そ。ソックリだよね、気づいたときは面白くて少し笑っちゃった。女の子と同じ匂いなんだ、ビリー……って思って。あんなに胡散臭いのにね。」

     特徴的な笑い方で目を細めるフェイスくんは、男の僕から見ても絵になるイケメンでどきっとする。でも、その顔は余裕というよりもなんとなく悪戯に笑っていた。

    「俺が持ってても困るし、捨てていいからって言ってなんとなく面白いからビリーにあげたんだよね。ビリーのことだからすぐに何かしら付加価値でも付けてお金にでも変えるかと思ってたんだけど……。」
    「……。」

     ビリーくんがその瓶の蓋をプッシュするところは見たことが無いけれど……日課の丹念な掃除の折にそのかわいらしすぎる瓶をとても綺麗に磨いているのを知っている。ぴかぴかにして、窓のない部屋だから、お日様の代わりに天井のライトに透かして鼻歌を歌うビリーくんの様子を思い出した。
     ……うぅ、なんとなく胸のあたりがむずむずとする。で、でもビリーくんは僕がプレゼントしたマフラーもずっと使ってくれているし、毎日のように綺麗に手入れしてくれているし、たまに僕の部屋の掃除だって……!

    「ほ、ホントに……な、仲良し、だね……。」
    「……!」

     もやもやとする気持ちが顔を曇らせてしまっているのに気付いて慌ててそれを悟られないようにしようと、下手な作り笑いをする。
     ……一時期前よりはフェイスくんがこちらに来ることが少しだけ減ったような……気もしていたけれど……、ビリーくんが部屋に居ることも増えて……2人で楽しく過ごす時間も前よりさらに増えた……気がしていたけれど。……やっぱり「親友」への憧れまで出てきてしまうから、僕は強欲だ。

    「……別にそんな、ビリーとは仲良しこよしっていうような仲じゃないけど。持ちつ持たれつなカンジ?グレイの方がよっぽど仲良くしてるんじゃない、知らないけど。」
    「ひぇ!?そ、そんな……。そう、かな……。」

     ……前にビリーくんにも聞いたような言葉を聞いて、安心するような、でも全く同じような言葉にそのシンクロ率に首を傾げるような、複雑な心持ち。でも仲良くしてると言ってもらえた事に少し照れつつえへへ、と頬をかいていると、フェイスくんは手に持った小瓶を元の場所に戻して「じゃあ帰るからよろしくね」とドアを開けてさらりと部屋を出て行った。
     残るのは先程の甘くポップでフルーティな香りに混じった、大人っぽく深めの甘い香り……これはフェイスくんの香水の匂いなんだろうか。

     ……うん、でもビリーくんと仲良くしてるフェイスくんに「よっぽど仲良し」だなんて言ってもらえたんだから、ずっと鬱屈してばっかりじゃダメだよね、ビリーくんが言うみたいにポジティブシンキングで……。
     お仕事から帰ってきたビリーくんが気持ちよく居られるようにと、また届いてそのままになっているUNIZONの箱を片付けようと腰をかがめたところで、またドアがぱしゅんと開いた。

    「ふぇっ!?」
    「アハ、ごめん、またノック忘れちゃったね。」
    「フェイスくん……?」
    「忘れ物。これ引き取ってくれる?」
    「え……。」

     ドアの先に居たのはまたもやフェイスくんで、ビリーくんのスペースにどかどかと置かれたのは……。

    「……?」
    「テントなんか人の部屋に持ち込まないでほしいよね。ハンモックは100歩譲ったけど。置いてある部屋着も最近1着から2着に増えたし……、はぁ。……これもよろしくね。じゃあ。」

     要件だけ済ませて颯爽と出て行ったフェイスくん。そして取り残された僕はこのテントとビリーくんの部屋着を載せられたビリーくんのスペースをただ呆然と眺める。
     そして僕はまた思い出してしまった、イーストのリビングの食器棚の奥の方の棚に、ひとつだけ余分に仕舞い込まれていて、結構使用頻度の高いマグカップ……。

    「ベ、ベスティって……なんなんだろう……。」

     仲良しでは無いと言われるのに僕からみたそれは仲良しに思えて仕方がない。
     ……友達初心者には少し難しすぎる。
    複雑な気持ちになりながら、ただそれだけ呟いた。
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    れんこん

    DONEビリーが居なくなってしまった話。
    未来ごりごり捏造しています。
    すっかり慣れ親しんでしまったタワー。
    最早実家よりも馴染んでしまうくらいになったそこでの生活。
    パトロールが終わって、後は眠るだけの時間。
    ……今日は夜から出掛けるのはやめよう。

    昔程は毎日のように夜遊びという無茶はしない。
    まぁ頻度がほんの少し減っただけ。特に大きくも変わらない。相変わらず女の子からの連絡は沢山くるしね、むしろ昔よりさらに増えたくらい。
    理由と言えば、少しだけ明日のヒーロー活動のために睡眠を取らなきゃいけないかな、なんて思った時だけ眠るようにしている。
    今日の理由はほんのちょっと、違うけれど。


    最早見慣れてしまった街でパトロールをしていた。
    ただいつもと変わらないその日常で、今日は背景のひとつだったキャンディショップが目に入った。綺麗にまるで花束みたいにラッピングされたロリポップが明るいオレンジ色のリボンで纏められて。恐らく誰かへのプレゼント用か、ただのディスプレイなのか。わからないけど。
    あの時渡したそれにすごく似ていたな、なんて思ったらぽっかり空いていた穴みたいなものに久しぶりに引き摺り込まれてしまったような感覚に陥った。ずっと、その気持ちにわざと知らぬフリ 4821

    れんこん

    DONEアカデミー時代ベスティ
    出会い捏造のお話です。
    『こんなことも出来ないのか?お兄さんのブラッドはー…』

    『フェイスくん、カッコいい、全部好き!』

    『…ー兄弟なら、お前も優秀なはずじゃねーの?』

    『ねぇ、私と付き合ってよ、』



    頭の中に交互に響くのは自分への否定と肯定の言葉。いろんなものがごちゃ混ぜになった地面のない世界のど真ん中に放り出されたみたいな心地がして、びくりと体を震わせて目が覚める。
    ……うたた寝ってろくな夢を見ない。
    なんとなく蒸し暑くなってきたから、校舎の隅の木陰で横になっていたけれど、失敗した。
    陰で水分を含んだ芝が制服を湿っぽくして、まるで今の俺の状態を仲間と認めて誘ってくるような。……やだな。
    でもそれでもサボっていた授業に戻ろうなんて気も起きなくて。かといって自分と違ってやる気のあるヒーロー志望の子と同室の寮に戻る気だって起きない。
    好きと嫌いの感情のマーブルチョコは今は受け付けられなくて、女の子に会って気晴らしをしようという気にもならない。
    この無駄にただイライラと……いや、しゅんと落ち込んでいくような気持ちを抱いている時間が無駄だというのはわかっている。

    ……こういう時には音楽を聴くのが良い。
    4895

    れんこん

    DONE第13回ベスティワンドロ用
    お題「祈り」「未来」
    未来捏造のベスティ(notカプ)のお話。
     まるで絵の具をこぼしたみたいな真っ青に塗り込められた雲ひとつない空に、正反対のオレンジ色が映える。
     そこそこ強い風にその髪の毛が煽られて、太陽の光を受けてきらりきらりと光った。


    「……いいの?」

     その相変わらず若干細っこい背中に声をかける。
     すると、その肩が少しだけぴくりと動いて、でもこちらを振り返らずに、ただ青い空を見つめたままだった。

    「いいの。」

     ふ、と一息ついたかと思うと、ビリーの手からぽんぽんといつもみたいに花が溢れ出る。赤、青、黄、白、紫、橙……色とりどりの花には共通点もなんにもなくて、ただ持っていた全ての花をそのまますべて出したというのが正しいのかもしれない。
     その花は強い風に吹かれて花弁になって散っていく。その様は、きれいで、そして寂しい。

     彼と出会って何年経ったろう。
    アカデミーの頃まで含めると、多分最早腐れ縁だねと言えてしまうくらいの年月。
     それなのに噂だけでしか知らなかった彼の父親の葬儀に呼ばれたのは少し意外だった。
     元々重病だったのに、余命宣告よりもずっとずっと長生きしてくれたんだヨ、とぽつりぽつりと聞いたことないトーンでビリーが喋 3822

    れんこん

    DONE第14回ベスティ♡ワンドロ用
    お題「契約」
    フェイビリ風味です
    こ難しく短い眉を寄せたり、緩く特徴的なカーブを描く唇に当てられた手袋越しの指がトントンとそこを叩いて、何かに悩むような考えてるような素振り。スマホを何度かスクロールして、なにかを見つけたのか、寄せられていた眉が緩んで、口角も緩んだ。
    同じような光景は今まで視界の隅で何度も見てきたような気がするけれど、改めてその様子をまじまじと見つめると、なるほど、ゴーグルをして謎めいてわからない印象を抱いていたけれど、案外その表情も、醸し出す空気すら、わりと豊か。

    「ふ〜……、って、なぁにDJ〜〜!?こないだからオイラの顔見過ぎじゃな〜い?……さては〜、今更俺っちに惚れちゃった!?」
    「まさか。……アハ、もしそうだったらどうするの。」
    「エ〜!?絶世のイケメンに言われちゃ考えちゃうナ〜♡」
    「はいはいっと。せめてゴーグル外してから言ったら?」
    「ンッフッフ、ゴーグルの下はベスティ♡にはトクベツ価格でご案内シマース♡」
    「……アハ。」

    ビリーは、変わった。
    今見ていたのもただただ金を巻き上げるためだけの情報でなく、誰かを喜ばせる為の下調べ。おおよそ……、前話していたジェイの子供のことだろうか。謎の胡 3408

    れんこん

    DONE第二回ベスティ♡ワンライ
    カプ無しベスティ小話
    お題「同級生」
    「はぁ……。」
    「んんん? DJどうしたの?なんだかお疲れじゃない?」

    いつもの談話室でいつも以上に気怠そうにしている色男と出会う。その装いは私服で、この深夜帯……多分つい先ほどまで遊び歩いていたんだろう。その点を揶揄うように指摘すると、自分も同じようなもんでしょ、とため息をつかれて、さすがベスティ!とお決まりのような合言葉を返す。
    今日は情報収集は少し早めに切り上げて帰ってきたつもりが、日付の変わる頃になってしまった。
    別に目の前のベスティと同じ時間帯に鉢合わせるように狙ったつもりは特に無かったけれど、こういう風にタイミングがかち合うのは実は結構昔からのこと。

    「うわ、なんだかお酒くさい?」
    「……やっぱり解る?目の前で女の子達が喧嘩しちゃって……。」
    「それでお酒ひっかけられちゃったの?災難だったネ〜。」

    本当に。迷惑だよね、なんて心底面倒そうに言う男は、実は自分がそのもっともな元凶になる行動や発言をしてしまっているというのに気づいてるのかいないのか。気怠げな風でいて、いつ見ても端正なその容姿と思わせぶりな態度はいつだって人を惹きつけてしまう。
    どうも、愚痴のようにこぼされる 2767

    れんこん

    DONE第7回ベスティワンドロ用
    バレンタインイベ、カドスト等を踏まえたお話。
    not カプ
    ハッピーバースデー&バレンタイン

     ここ数日で山のように贈られたその言葉と気持ちに、珍しくちょっと流されてうわついて。

    「……。」

     なんとなく目が覚めてふわふわと浮くような腹のあたりを触る。
    むず痒いような、でも嫌じゃない感覚に、なんとなく高揚させられているのも混じっている。
     ……いろんなことがあったから、かな。

     まだ、日付の変わる手前の時間。
    LOMからの外出続き、祝われ倒しのパーティ続きでさすがに疲れ果てて、帰り着いた途端眠っていたらしい。同室のおチビちゃんはもうおねむの時間だから、隣からすやすやと気持ちよさそうな寝息が聞こえてくる。

     ……いつもガミガミと口うるさいのは変わらないのに、なんだかんだパーティでは生演奏を披露してくれた。パーティのための準備もみんなで考え尽くしたらしい。その時のことを思い出すとまた胃のあたりがふわりとして、ふふ、と口元につい笑みが浮かぶ。……こんな感覚は初めてかも。らしくないけど、たまにはいいよね。
     自分が上機嫌なのを客観的に感じて面白くなっていく。

     ……でも、なんとなく何か変な感じがする。
    ふわふわの中にお腹が空いたような変な感 5277

    れんこん

    DONE第16回ベスティ♡ワンドロ用
    お題「部屋」
    グレイから見たベスティのお話
    ※ビリー出てきません
     ちいさく、キラキラ光るガラス瓶。
    複雑な形にカットされたそれは、ハートの形状を形作っていて、その表面は光が反射しやすくなるようにさらに細工が入っている。
    蓋は黒くシンプルで、根本には濃いピンク色のリボンが巻かれていた。
     中に入っている液体は何色なんだろう。ガラス瓶の色なのか中身の色なのか、隣のスペースからは判別できない。

     わりとナチュラルなテイストで纏められたビリーくんの部屋には少しだけ不釣り合いに思えるような……というか、まるで女の子の持ち物のようなそれが、つい目に入ってくる。
     きっちりと本が並べられたデスクの上にちょん、と置いてあるそれの隣にはなにか小さな音楽プレーヤーみたいなもの。これも、濃いピンク色。ハッキリと存在を主張するそれになんだか動揺して、見なければいいのに目がチラチラとデスクの方に向く。……ううん、友達って……、難しい。


    「ビリー、いる?」
    「ヒィッ!?」
    「……っ!?」

     突然ぱしゅんと音がして部屋の扉が開いて、突然の訪問者にびくっと背中を震わせてしまった。
     なんとなく気になって仕事で留守にしているビリーくんの部屋を勝手に覗いていたから、そのやまし 4368

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