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    れんこん

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    れんこん

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    第13回ベスティワンドロ用
    お題「祈り」「未来」
    未来捏造のベスティ(notカプ)のお話。

    #ベスティ
    besty

     まるで絵の具をこぼしたみたいな真っ青に塗り込められた雲ひとつない空に、正反対のオレンジ色が映える。
     そこそこ強い風にその髪の毛が煽られて、太陽の光を受けてきらりきらりと光った。


    「……いいの?」

     その相変わらず若干細っこい背中に声をかける。
     すると、その肩が少しだけぴくりと動いて、でもこちらを振り返らずに、ただ青い空を見つめたままだった。

    「いいの。」

     ふ、と一息ついたかと思うと、ビリーの手からぽんぽんといつもみたいに花が溢れ出る。赤、青、黄、白、紫、橙……色とりどりの花には共通点もなんにもなくて、ただ持っていた全ての花をそのまますべて出したというのが正しいのかもしれない。
     その花は強い風に吹かれて花弁になって散っていく。その様は、きれいで、そして寂しい。

     彼と出会って何年経ったろう。
    アカデミーの頃まで含めると、多分最早腐れ縁だねと言えてしまうくらいの年月。
     それなのに噂だけでしか知らなかった彼の父親の葬儀に呼ばれたのは少し意外だった。
     元々重病だったのに、余命宣告よりもずっとずっと長生きしてくれたんだヨ、とぽつりぽつりと聞いたことないトーンでビリーが喋る。
     父親のマジックは大人になってからもずっと驚かされてばかりだとか、お喋りで自分よりもずっと元気なオジサンだったとか、案外心配性だったんだとか、いつもお喋りなビリーが、いつものお喋りとは違うらしくないトーンで、空に向かって喋るみたいして俺に聞かせる。
    それに相槌も打たずに、ただその手のひらの花弁が舞っていくのを相変わらずきれいだと感じて眺めていた。


     葬儀に呼ばれたのはルーキー時代のかつてのイーストセクターの面々と、……そして、俺だけ。
     詳しい話も事情もしらないその葬儀は少し変な感じがして。対面したビリーの父親は、全くどこもビリーの面影に似ているとは感じなかった。
     簡単な葬儀のその後に、元イーストの面々に見えない所でビリーが腕を引いてきて。そのまま教会の裏手にあった小さな丘のてっぺんまで連れてこられた。
    元々山の上の方にある教会は、ロケーションがよく、遥か遠くにいつも暮らしているニューミリオンが見える。
     ……きっと、教会からいなくなったビリーを心配する友人が、仲間がいるだろうに、なんで俺をわざわざ選んだんだか。
     持っているすべての花弁を撒き散らしたビリーが、ゆっくりとこっちを向く。

     その瞳は、今背後にある青空と同じくらい、青くて青くて、まるでそのまま空を映したようだった。

    「……キミの友達、心配してるかもよ。」
    「そうかもネ。」

     そのまま柵を乗り越えて向こう側に行ってしまいそうなビリーの隣に歩いて行って、柵にもたれかかる。赦された隣の距離は、昔から変わらない。
     話題に出したのは彼の大事な友人の話。今はセクターこそ別れてしまったけれど、頻繁に逢瀬しては家にも行き来しているし、オフの日も一緒に過ごしているような、そんな「仲良し」な2人。
     今回誰よりも泣いていたのはそのグレイで、自分たちよりも6つも年上な彼は、もう結構な年齢になってきているのに、泣き方は子供みたいだった。

    「……グレイと居ると、貰い泣きしちゃいそうなんだモン。」
    「……そう。」

     泣いてはいけないと誰が言ったわけでもないのに、ビリーのその大きな目はただ青を映すのみで、今はまだたしかに過剰な水分の類は感じられない。
     その理由を問うのもなんだか違う感じがして、ただ隣でほんの少しだけの体温を感じる。
     ビリーの中での自分も、自分の中でのビリーも、契約だなんて謳っては少しはしゃいでいた頃の自分達とは少し違う。
     それでもこの物理的距離が変えられることはなかった。向かい側でなく、ほんのすこし隣側に。それが俺たちの暗黙のルール。

     明確な喪失感を感じさせるその背中に、触れてやりもしない、それこそが俺だけがビリーにできるひとつのこと。

     しばらく2人でなんとなく空を眺めていたら、遠くから流されてきた雲が少しだけ日差しを遮って行く。
     ビリーは大きくふぅっと息を吐いて、まるでいつも適当に駄弁る時のようなテンションで声を発した。

    「ン〜〜。どうしよっカナ!オイラ、お金稼ぎの理由が無くなっちゃった。」

     けろりとした物言いに反して、その言葉の実態を推測すると、それはかなり重いものだ。
     ……詳しくわざわざ追求するまで聞いたこともなければ、聞かされたこともない事実。……でもようやく今聞かされた。ビリーらしく、ストレートでは無い言い方で。
     その事実に、過去の自分がビリーへ支払ってきたものや、その時のビリーの様子なんかがぽつぽつと浮かび上がってきて、あぁ、そうかと腑におちる。……切羽詰まっているという時もあったような。一瞬ですべてを理解したけれど、それについてわざわざ掘ることはしない。

    「どうしたらいいかな、……ベスティ。」

     少し笑うような、困ったような声色のその言葉がかけられて、いつものように「さぁね。」と返すと、ビリーがもう、とちゃんと答えてヨ〜!珍しく真剣なんだから!と袖を引っ張る。
     そんなの、わかるよ。その仕草や声で。
    ビリーなら「お金儲けは好きだし生き甲斐だから何も変わらない」とでも当たり前みたいに強がるのが本来であるだろうに。
     ……だから、ただ茶化すべきなんだろうなって思っただけだ。

    「……別に、どうもしないでしょ。今までと同じでイイんじゃない?」
    「同じ?……でも、違うでしょ。」
    「違ってもイイんじゃない?」
    「エ〜DJ適当!」
    「別に適当に話してるわけでも無いよ。」
    「ンン?」

     キミのかつての言葉を借りるような物言いを真似てみると、ビリーはなにか思い当たったのか、少し不思議な顔をした。
     2人の間を通り抜ける風はまだ少しだけ切なく寂しさを感じさせるけれど、ただそれだけだ。

    「……なら、また、誰かの為にお金を貯めれば良いんじゃない?」
    「誰かって。」
    「さぁ……将来の結婚相手、とか?」
    「あいにくオイラはずっとハニー♡だけが伴侶なんだよネ♡……DJは逆に未だに選択肢がありすぎだけど、DJもそんなこと考えたりするの!?たしかに昔よりは人数減ったけどサ?」
    「アハ、俺に限ってそれは無いかな。」

     冗談みたいに提案した事はほんの少しだけは本気。けれど、その答えはさらりとかわされる。
     けれど、ほんの少しだけいつもの皮肉めいた言いあいの空気が戻ってきて、俺は少し安堵する。
     隣の子は気付いてない。もっと大事な選択肢が存在することを。
    『誰か』……『キミ』のために。
    ま、わざわざ言わないけどね。

     普段はトレードマークのように隠された視線は、今日だけは朝から晒されて。空の青さを映したまま俺の姿をそこに透けさせた。
     相変わらず歳は自分と変わらないのに子供のような顔のまま変わらないビリーは、最早最近見た目はぐっと大人っぽく成長したおチビちゃんよりずっと幼く見える。
     ……「こども」の顔をしていた。
    知ってはいたけど、君も俺もどう足掻いても格好つけても、人間だった。その事実に気恥ずかしくなって、でも愛しくもあって、隣のよく手入れされた革靴を自分のそれで少しつんと突いた。
    それだけできっと、伝わる。


    「……今度はDJに素敵なお嫁さんが出来ますよ〜にってお祈りしてあげようか。」

     悪戯な視線がダイレクトに届いて、無邪気な口元がいつも見慣れた角度を再現する。
     揶揄うような、そして同時に少しだけの淋しさも混ぜて。
    面倒な気配を察知して遠慮しときマースと返すと、ちぇ、貸しを作ろうかと思ったのにと、思ってもないだろうことについて文句を言われて、自分もいつもの角度に口元が緩んだ。

    「……そろそろ、戻らなきゃ。」
    「そうだね。」

     ビリーがいつも肌見放さないスマホを見て、たくさん届いていたらしいメッセージを確認する。
     よっ、と、と声を漏らしつつ、もたれかかっていた柵から身体を離し、少し前を歩き始めたベスティの背中に、ほんのちょっぴりだけの祈りを投げかけた。

    「……キミがキミでいられますように。」

     らしくないと思われそうなそんな言葉が風に攫われていく。ビリーが撒いた花弁のようにどこかの誰かがきれいだと感じたならそれはそれで面白い。

     自分も柵から離れて、その細身の背中についていこうと脚を踏み出すと、目の前の彼がこちらを向く。

    「……キミと居るとずっと俺は俺だったよ、フェイス。」

     だから、もう既にずっと前からそのお願いは叶っちゃってるネ。なんて、ひとりごとみたいな祈りを揶揄うような言葉に、アハ、と笑ってみせる。
     素直な瞳が曝け出されていると、彼はどうも言動も素直がすぎる。凄腕情報屋のプライベート情報……写真のように切り取って、今の風景を誰にも見せないアルバムに収めた。

    「なら、さよならするまでは居てあげる。」
    「俺も。いなくなっちゃうまでは、居るネ。」

     言葉にするのは珍しいけれど、お互い全くなにも約束になってない約束をして、それで良いよねといつもみたいに勝手に2人でしまい込んだ。

     先を行くオレンジ色から少しだけ見える肌がほんのりと先ほどより色づいて。
     触れない指先も掌も……きっと同じ体温だった。
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    バレンタインイベ、カドスト等を踏まえたお話。
    not カプ
    ハッピーバースデー&バレンタイン

     ここ数日で山のように贈られたその言葉と気持ちに、珍しくちょっと流されてうわついて。

    「……。」

     なんとなく目が覚めてふわふわと浮くような腹のあたりを触る。
    むず痒いような、でも嫌じゃない感覚に、なんとなく高揚させられているのも混じっている。
     ……いろんなことがあったから、かな。

     まだ、日付の変わる手前の時間。
    LOMからの外出続き、祝われ倒しのパーティ続きでさすがに疲れ果てて、帰り着いた途端眠っていたらしい。同室のおチビちゃんはもうおねむの時間だから、隣からすやすやと気持ちよさそうな寝息が聞こえてくる。

     ……いつもガミガミと口うるさいのは変わらないのに、なんだかんだパーティでは生演奏を披露してくれた。パーティのための準備もみんなで考え尽くしたらしい。その時のことを思い出すとまた胃のあたりがふわりとして、ふふ、と口元につい笑みが浮かぶ。……こんな感覚は初めてかも。らしくないけど、たまにはいいよね。
     自分が上機嫌なのを客観的に感じて面白くなっていく。

     ……でも、なんとなく何か変な感じがする。
    ふわふわの中にお腹が空いたような変な感 5277

    れんこん

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     そこそこ強い風にその髪の毛が煽られて、太陽の光を受けてきらりきらりと光った。


    「……いいの?」

     その相変わらず若干細っこい背中に声をかける。
     すると、その肩が少しだけぴくりと動いて、でもこちらを振り返らずに、ただ青い空を見つめたままだった。

    「いいの。」

     ふ、と一息ついたかと思うと、ビリーの手からぽんぽんといつもみたいに花が溢れ出る。赤、青、黄、白、紫、橙……色とりどりの花には共通点もなんにもなくて、ただ持っていた全ての花をそのまますべて出したというのが正しいのかもしれない。
     その花は強い風に吹かれて花弁になって散っていく。その様は、きれいで、そして寂しい。

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    アカデミーの頃まで含めると、多分最早腐れ縁だねと言えてしまうくらいの年月。
     それなのに噂だけでしか知らなかった彼の父親の葬儀に呼ばれたのは少し意外だった。
     元々重病だったのに、余命宣告よりもずっとずっと長生きしてくれたんだヨ、とぽつりぽつりと聞いたことないトーンでビリーが喋 3822

    れんこん

    DONEアカデミー時代ベスティ
    出会い捏造のお話です。
    『こんなことも出来ないのか?お兄さんのブラッドはー…』

    『フェイスくん、カッコいい、全部好き!』

    『…ー兄弟なら、お前も優秀なはずじゃねーの?』

    『ねぇ、私と付き合ってよ、』



    頭の中に交互に響くのは自分への否定と肯定の言葉。いろんなものがごちゃ混ぜになった地面のない世界のど真ん中に放り出されたみたいな心地がして、びくりと体を震わせて目が覚める。
    ……うたた寝ってろくな夢を見ない。
    なんとなく蒸し暑くなってきたから、校舎の隅の木陰で横になっていたけれど、失敗した。
    陰で水分を含んだ芝が制服を湿っぽくして、まるで今の俺の状態を仲間と認めて誘ってくるような。……やだな。
    でもそれでもサボっていた授業に戻ろうなんて気も起きなくて。かといって自分と違ってやる気のあるヒーロー志望の子と同室の寮に戻る気だって起きない。
    好きと嫌いの感情のマーブルチョコは今は受け付けられなくて、女の子に会って気晴らしをしようという気にもならない。
    この無駄にただイライラと……いや、しゅんと落ち込んでいくような気持ちを抱いている時間が無駄だというのはわかっている。

    ……こういう時には音楽を聴くのが良い。
    4895

    れんこん

    DONE第14回ベスティ♡ワンドロ用
    お題「契約」
    フェイビリ風味です
    こ難しく短い眉を寄せたり、緩く特徴的なカーブを描く唇に当てられた手袋越しの指がトントンとそこを叩いて、何かに悩むような考えてるような素振り。スマホを何度かスクロールして、なにかを見つけたのか、寄せられていた眉が緩んで、口角も緩んだ。
    同じような光景は今まで視界の隅で何度も見てきたような気がするけれど、改めてその様子をまじまじと見つめると、なるほど、ゴーグルをして謎めいてわからない印象を抱いていたけれど、案外その表情も、醸し出す空気すら、わりと豊か。

    「ふ〜……、って、なぁにDJ〜〜!?こないだからオイラの顔見過ぎじゃな〜い?……さては〜、今更俺っちに惚れちゃった!?」
    「まさか。……アハ、もしそうだったらどうするの。」
    「エ〜!?絶世のイケメンに言われちゃ考えちゃうナ〜♡」
    「はいはいっと。せめてゴーグル外してから言ったら?」
    「ンッフッフ、ゴーグルの下はベスティ♡にはトクベツ価格でご案内シマース♡」
    「……アハ。」

    ビリーは、変わった。
    今見ていたのもただただ金を巻き上げるためだけの情報でなく、誰かを喜ばせる為の下調べ。おおよそ……、前話していたジェイの子供のことだろうか。謎の胡 3408

    れんこん

    DONEビリーが居なくなってしまった話。
    未来ごりごり捏造しています。
    すっかり慣れ親しんでしまったタワー。
    最早実家よりも馴染んでしまうくらいになったそこでの生活。
    パトロールが終わって、後は眠るだけの時間。
    ……今日は夜から出掛けるのはやめよう。

    昔程は毎日のように夜遊びという無茶はしない。
    まぁ頻度がほんの少し減っただけ。特に大きくも変わらない。相変わらず女の子からの連絡は沢山くるしね、むしろ昔よりさらに増えたくらい。
    理由と言えば、少しだけ明日のヒーロー活動のために睡眠を取らなきゃいけないかな、なんて思った時だけ眠るようにしている。
    今日の理由はほんのちょっと、違うけれど。


    最早見慣れてしまった街でパトロールをしていた。
    ただいつもと変わらないその日常で、今日は背景のひとつだったキャンディショップが目に入った。綺麗にまるで花束みたいにラッピングされたロリポップが明るいオレンジ色のリボンで纏められて。恐らく誰かへのプレゼント用か、ただのディスプレイなのか。わからないけど。
    あの時渡したそれにすごく似ていたな、なんて思ったらぽっかり空いていた穴みたいなものに久しぶりに引き摺り込まれてしまったような感覚に陥った。ずっと、その気持ちにわざと知らぬフリ 4821

    れんこん

    DONE第二回ベスティ♡ワンライ
    カプ無しベスティ小話
    お題「同級生」
    「はぁ……。」
    「んんん? DJどうしたの?なんだかお疲れじゃない?」

    いつもの談話室でいつも以上に気怠そうにしている色男と出会う。その装いは私服で、この深夜帯……多分つい先ほどまで遊び歩いていたんだろう。その点を揶揄うように指摘すると、自分も同じようなもんでしょ、とため息をつかれて、さすがベスティ!とお決まりのような合言葉を返す。
    今日は情報収集は少し早めに切り上げて帰ってきたつもりが、日付の変わる頃になってしまった。
    別に目の前のベスティと同じ時間帯に鉢合わせるように狙ったつもりは特に無かったけれど、こういう風にタイミングがかち合うのは実は結構昔からのこと。

    「うわ、なんだかお酒くさい?」
    「……やっぱり解る?目の前で女の子達が喧嘩しちゃって……。」
    「それでお酒ひっかけられちゃったの?災難だったネ〜。」

    本当に。迷惑だよね、なんて心底面倒そうに言う男は、実は自分がそのもっともな元凶になる行動や発言をしてしまっているというのに気づいてるのかいないのか。気怠げな風でいて、いつ見ても端正なその容姿と思わせぶりな態度はいつだって人を惹きつけてしまう。
    どうも、愚痴のようにこぼされる 2767

    れんこん

    DONE第16回ベスティ♡ワンドロ用
    お題「部屋」
    グレイから見たベスティのお話
    ※ビリー出てきません
     ちいさく、キラキラ光るガラス瓶。
    複雑な形にカットされたそれは、ハートの形状を形作っていて、その表面は光が反射しやすくなるようにさらに細工が入っている。
    蓋は黒くシンプルで、根本には濃いピンク色のリボンが巻かれていた。
     中に入っている液体は何色なんだろう。ガラス瓶の色なのか中身の色なのか、隣のスペースからは判別できない。

     わりとナチュラルなテイストで纏められたビリーくんの部屋には少しだけ不釣り合いに思えるような……というか、まるで女の子の持ち物のようなそれが、つい目に入ってくる。
     きっちりと本が並べられたデスクの上にちょん、と置いてあるそれの隣にはなにか小さな音楽プレーヤーみたいなもの。これも、濃いピンク色。ハッキリと存在を主張するそれになんだか動揺して、見なければいいのに目がチラチラとデスクの方に向く。……ううん、友達って……、難しい。


    「ビリー、いる?」
    「ヒィッ!?」
    「……っ!?」

     突然ぱしゅんと音がして部屋の扉が開いて、突然の訪問者にびくっと背中を震わせてしまった。
     なんとなく気になって仕事で留守にしているビリーくんの部屋を勝手に覗いていたから、そのやまし 4368

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