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    れんこん

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    れんこん

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    アカデミー時代ベスティ
    出会い捏造のお話です。

    #ベスティ
    besty

    『こんなことも出来ないのか?お兄さんのブラッドはー…』

    『フェイスくん、カッコいい、全部好き!』

    『…ー兄弟なら、お前も優秀なはずじゃねーの?』

    『ねぇ、私と付き合ってよ、』



    頭の中に交互に響くのは自分への否定と肯定の言葉。いろんなものがごちゃ混ぜになった地面のない世界のど真ん中に放り出されたみたいな心地がして、びくりと体を震わせて目が覚める。
    ……うたた寝ってろくな夢を見ない。
    なんとなく蒸し暑くなってきたから、校舎の隅の木陰で横になっていたけれど、失敗した。
    陰で水分を含んだ芝が制服を湿っぽくして、まるで今の俺の状態を仲間と認めて誘ってくるような。……やだな。
    でもそれでもサボっていた授業に戻ろうなんて気も起きなくて。かといって自分と違ってやる気のあるヒーロー志望の子と同室の寮に戻る気だって起きない。
    好きと嫌いの感情のマーブルチョコは今は受け付けられなくて、女の子に会って気晴らしをしようという気にもならない。
    この無駄にただイライラと……いや、しゅんと落ち込んでいくような気持ちを抱いている時間が無駄だというのはわかっている。

    ……こういう時には音楽を聴くのが良い。

    いつも持ち歩いているヘッドフォンは、周りのそういう煩い雑音を全て掻き消してくれる。
    お気に入りの曲を選んで、少しだけ日当たりの良い場所で湿った制服を乾かそうと、その辺にあったベンチに腰掛ける。普段放課後や休み時間は大人気のこの場所は、なるほど確かに日差しがちょうどいい。時間的に半分には木陰がかかって、暑すぎるのも防いでくれる。
    ふぅ、とため息をついて、そこでまた一眠りして先程の夢なんて忘れてしまえれば…なんて目を閉じたら……突然ヘッドフォンに添えて居た手を引かれた。

    「は!?」

    目を開けるとそこにはマリーゴールドみたいな色味の眩しい橙色の髪の毛の同じ制服の子がいて。俺の手を引いて、そのまま走り出す。眠ろうとして居たところに不意をつかれて、振り払うことも何もできず、俺はただそれに引かれるままベンチから起こされて、一緒に走ることになってしまった。……まさか、俺のファンだという女の子でもここまで大胆な事はしない。……だいたい、その背格好は自分とさほど変わらず男のもので。その事実にも驚いた。嘲笑したり一緒になって女の子のおこぼれに預かろうとする有象無象くらいしか、同級生の同性には縁がない。ひたむきでお節介な同室相手を除いては。

    日差しを受けて、振り乱された目の前のオレンジ色がキラキラと光る。あぁ、綺麗だな、なんて呑気に思ってしまうのは、先程落っこちてしまっていた、動きようのない世界とは全く違う新しい刺激を欲していたからなのかもしれない。途中で手を振り解くことはできたけれど、敢えてそれをしようというつもりにはならなかった。
    ベンチを通り越して、校舎の裏手まで、ノンストップで走り続けて。
    その背中は迷いがなく、最終的に剪定がまだちゃんと済んでいない低木の後ろに引き込まれた。
    その仕草は少し慌てていて、手を強く引かれてその場に寝転がるようにして伏せたその子の上につい覆い被さってしまう。

    「っ、と、ちょっと」
    「Shhh…!ほんの少しだけ静かにしてて、」

    ぐ、と頭を押さえ込まれて、口元も塞がれる。
    ……と、そこで彼の手には真っ黒な薄手の手袋がされているのに気付いた。
    なんなんだ、さすがに危険じゃないかと少し抵抗した方がいいかも、と思ってきた所で、手を引かれた勢いで半分外れたヘッドフォンがついていない耳の方からなにやら怒声が聞こえた。

    「フェイス・ビームス!こっちの方に逃げただろう!今日で3連続で授業をエスケープして……。とっ捕まえて親御さんに言いつけるぞ!まったく、兄は優秀だったのに弟は……。」

    ……担任の教師だ。
    そう理解した時に、自分の頭を抑えていた黒い手袋が静かに動いてヘッドフォンを、取れていた片耳へ戻した。先程流していたお気に入りの曲はもう終盤で、1番の盛り上がりを響かせていた。



    *****



    しばらく隠れて居たら教師も居なくなって、黒い手袋から解放された。ゆっくりと頭についた葉っぱを払いつつ、今まで下敷きにしてしまっていたオレンジ頭の子から身体を退かす。
    ……そして、顔を見ようとしたら、光の反射に阻まれてよく見えなかった。なにやら妙な形のゴーグルみたいな何かをして、その表情が全く窺えないのだ。なにコイツ。

    「……助けてくれたの?ありがと。」
    「んっふふ〜、どういたしマシテ♡」

    怪しさ抜群の見た目に少し警戒しながらも一応お礼を述べると、なんとなく癖のある、張りのある声が返ってくる。
    まじまじと見ていると、派手な髪色にゴーグルに手袋。本当に変な姿で、誰か熱烈なファンか……もしくは新手の手の込んだ揶揄いなのか……わからないけど。

    「俺っちの情報によると、あのベンチってただでさえサボりにも人気なスポットだからネ、教師も目をつけてるから、うまくサボるならあそこは避けた方がイイよ!」
    「……へぇ、そうだったんだ。っていうか、キミもサボり?ううん、……ていうか……。……そもそも誰?」

    聞いても居ないのに勝手に喋り出す怪しいその子は、今まで俺の出会ってきた中ではじめてのタイプ。掴めないような怪しさと、人懐っこさをひとまとめにして固めたみたいな……。
    とりあえず気になっていたことを聞いてみると、またその口は止まらず動き出す。先程静かにしてと言ったのがその口だと思うと笑ってしまいたくなるくらいに。

    「HEY!HEY!よくぞ聞いてくれました〜☆オイラはビリー・ワイズ!好物はキャンディとガム、特技はマジック!最近便利屋なんかもはじめてみたからご贔屓に〜♪よろしくネ、フェイス・ビームス!」
    「っ!?」

    よく動く口元を見ていて、あ、この子は猫みたいに八重歯?があるんだ、変わっている、なんて呑気に思っていたら、突如目の前にぽんぽんと音を立てて現れたのは色とりどりの花。赤に黄に、彼の髪色のオレンジ色に、ピンク色。いろんな色を頭からわさわさとぶっかけられて、さすがに呆気に取られた。これが、マジック…?

    「HAHAHA〜!さすが、イケメンには花が似合うよネ〜!」
    「ちょっと…、」
    「わ〜っ!?もしかして怒っちゃった?ソーリー!ソーリー!俺っち、ちょっとはしゃいじゃっていつもの5割増しでお花だしちゃった!あれっ、オーマイガッ!ストックのお花全部無くなっちゃったから買いに行かなきゃ〜!またお金が飛んじゃうヨ〜!!うぇ〜ん!」
    「…ぷ、」

    突然一人で目の前で大騒ぎしてぴぇえと泣き真似をするような素振りを見せてくる彼……ビリーだっけ。なかなか変な子で、ついつい久々に笑いが漏れ出た。ちらちらとなんとなくゴーグルの奥からの視線を感じるのはどういう意図か。
    まさか、お金がないから奢れとでも言ってるのか。……ま、助けてもらったんだからやぶさかでも無いけど。つくづく、変な子だ。

    「花屋、行く?」
    「え?」
    「買ってあげる。さっきのお礼にね。」
    「キャーッ♡女の子にモテモテのフェイス・ビームスにお花を貰うなんて、数多の彼女に嫉妬されちゃいそう…♪」
    「は?なんでそれ…、」

    確かに彼女になりたいと言ってきて許諾した子は複数人いるけれど、それを当たり前みたいに知っているのに驚く。女の子の間ならともかく、男の友人関係なんてほぼ築いてこなかった俺からしたら珍しく感じる。……まぁ、隠しても来なかったから、どこかで彼女経由で伝わっている可能性は充分にあるけれど。
    俺の反応を見て、ビリーはおや、と口元を押さえるようにしてくすりと笑った。

    「まぁまぁ、たまたまだけど人気者のフェイス・ビームスとこうしてお近付きになれて俺っち嬉しいヨ!ねぇ、花屋に行くついでに遊びに行こうよ!」
    「アハ、何が目的?女の子でも紹介して欲しいの?」
    「NO!NO!オイラがいっちばん大事で大好きなのはマネーだから♡ノーマネーノーライフ!」
    「ふふ、何ソレ、……まぁ良いよ。」

    発言すればする程に怪しさの増すビリー・ワイズという存在が、この時俺は結構楽しくなってきていた。普段は女の子といないなら一人で行動する事が多いけれど、この、マーブルチョコのどちらにも属さない、何味かわからないキャンディをたまには味わってあげようか。そんな気まぐれで俺とビリーは初対面で、当たり前のようにサボりを続行して、街へ出た。



    *****


    「ハロー、ベスティ♡」
    「……。」
    「ベスティ!無視しないでヨ〜!!」
    「なに?それって俺のこと?」

    あの出会った校舎脇で、YES!と楽しげに追いかけてくるのは、最近よく連んでいる、相変わらず怪しい見た目のビリー。
    なにかと夜の街にも詳しくて、俺がクラブに通い詰めなのも咎めず、むしろそれをネタにして『DJ』と呼んでくる始末。ビリーと学校の外でふたり遊んで、少しだけの悪さをして、逃げ回ったり走り回ったり。
    はじめこそ変な子だけど、助けてくれたんだからまぁ良い子かもしれないし、なんて思っていても、俺の情報を売ってお金を儲けてるんだと平然と言われた時ははぁ、と溜息をついた。
    ……でも今やその距離感は心地よいもので。
    便利屋の仕事を依頼することもあれば、その対価に協力することもあって。それは仕事のやりとりというよりは、いつものじゃれあいの延長線上にあるような気がしていた。

    「ベスティ…親友なんて言えるような仲だっけ。」
    「ヒドイ!仲良しでしょ〜!?昨日も一緒に熱い夜♡を過ごしたじゃ〜ん!!」
    「はいはいっと、ただクラブでビリーはバイト、オレはDJの手伝いをしていただけでしょ。同じ場所にはいたけどさ。」
    「俺っちが口聞いて未成年でも少し長くやらせてもらえるよう頼んだんだヨ〜?ね、ベスティ♡のために♡」
    「それには感謝してるけど。……でもそういう事言って、今度は何の情報が欲しいの?」
    「ほら、さっすが〜!ベスティだからわかってるぅ☆」

    なにかとビリーの口車に丸め込まれて、でもまぁ特にこれについては害が無いので放っておく。
    まれに害を引き寄せてくる時もあるから、その時はちゃんと本人に後始末をつけてもらうし、それなりにうまくやっていた。
    アカデミーは相変わらず退屈だし、面倒な同級生や過剰に面倒をかけてくる女の子もいるし、未だにずっと比較対象にされ続けてもいるけれど。
    ビリーが外へ飛び出していくのにつられて出て行って、お綺麗でもない場所で馬鹿をやらかしている時はなんとなくそれをあの時みたいに考えたりはしない。無くなりはしないし、動けなくなる日もあるけれど、頻度は少しマシだった。
    ……あの時試しに舐めてみたキャンディの味はまだよくわからないけど、嫌いな味では無かった。


    「そういえば。…はじめてあった時、何で助けてくれたの。今のビリーを知ってると、理由があったとしか思えないんだけど。まさか最初から奢ってもらうつもりでいたの?」
    「んー、その答えは近いけどNO!かな。単純にその時、女の子にDJのコト調べてきて〜って依頼受けてたから観察してたらさぁ、ヘッドフォンしてわざわざ外の音遮断したせいで、センセー来ても全くDJ気付いてないんだもん!さすがにアレを見逃すのはサボり同士として…ネ。」

    ほんの少しだけ、日が陰ってゴーグルを通して予想外な大きな幼い目が透ける。
    ビリーは気付いていないけれど。
    気のせいかもしれないけれど、その目はほんの少しだけ優しく見えた。

    「アハ、ビリーにしては少しヒーローらしい理由に聞こえるね。」
    「んっふふ〜♡この調子で早くトライアウトに合格して、もっと稼がなきゃだからネ〜♪」
    「え、こんなにサボってたら無理じゃない?」
    「も〜、それはDJもデショ〜!?」

    いつもの軽口を繰り返して、その心地よさにアハ、と笑うとビリーもその八重歯を見せびらかして笑った。
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    れんこん

    DONE第16回ベスティ♡ワンドロ用
    お題「部屋」
    グレイから見たベスティのお話
    ※ビリー出てきません
     ちいさく、キラキラ光るガラス瓶。
    複雑な形にカットされたそれは、ハートの形状を形作っていて、その表面は光が反射しやすくなるようにさらに細工が入っている。
    蓋は黒くシンプルで、根本には濃いピンク色のリボンが巻かれていた。
     中に入っている液体は何色なんだろう。ガラス瓶の色なのか中身の色なのか、隣のスペースからは判別できない。

     わりとナチュラルなテイストで纏められたビリーくんの部屋には少しだけ不釣り合いに思えるような……というか、まるで女の子の持ち物のようなそれが、つい目に入ってくる。
     きっちりと本が並べられたデスクの上にちょん、と置いてあるそれの隣にはなにか小さな音楽プレーヤーみたいなもの。これも、濃いピンク色。ハッキリと存在を主張するそれになんだか動揺して、見なければいいのに目がチラチラとデスクの方に向く。……ううん、友達って……、難しい。


    「ビリー、いる?」
    「ヒィッ!?」
    「……っ!?」

     突然ぱしゅんと音がして部屋の扉が開いて、突然の訪問者にびくっと背中を震わせてしまった。
     なんとなく気になって仕事で留守にしているビリーくんの部屋を勝手に覗いていたから、そのやまし 4368

    れんこん

    DONE第14回ベスティ♡ワンドロ用
    お題「契約」
    フェイビリ風味です
    こ難しく短い眉を寄せたり、緩く特徴的なカーブを描く唇に当てられた手袋越しの指がトントンとそこを叩いて、何かに悩むような考えてるような素振り。スマホを何度かスクロールして、なにかを見つけたのか、寄せられていた眉が緩んで、口角も緩んだ。
    同じような光景は今まで視界の隅で何度も見てきたような気がするけれど、改めてその様子をまじまじと見つめると、なるほど、ゴーグルをして謎めいてわからない印象を抱いていたけれど、案外その表情も、醸し出す空気すら、わりと豊か。

    「ふ〜……、って、なぁにDJ〜〜!?こないだからオイラの顔見過ぎじゃな〜い?……さては〜、今更俺っちに惚れちゃった!?」
    「まさか。……アハ、もしそうだったらどうするの。」
    「エ〜!?絶世のイケメンに言われちゃ考えちゃうナ〜♡」
    「はいはいっと。せめてゴーグル外してから言ったら?」
    「ンッフッフ、ゴーグルの下はベスティ♡にはトクベツ価格でご案内シマース♡」
    「……アハ。」

    ビリーは、変わった。
    今見ていたのもただただ金を巻き上げるためだけの情報でなく、誰かを喜ばせる為の下調べ。おおよそ……、前話していたジェイの子供のことだろうか。謎の胡 3408

    れんこん

    DONE第7回ベスティワンドロ用
    バレンタインイベ、カドスト等を踏まえたお話。
    not カプ
    ハッピーバースデー&バレンタイン

     ここ数日で山のように贈られたその言葉と気持ちに、珍しくちょっと流されてうわついて。

    「……。」

     なんとなく目が覚めてふわふわと浮くような腹のあたりを触る。
    むず痒いような、でも嫌じゃない感覚に、なんとなく高揚させられているのも混じっている。
     ……いろんなことがあったから、かな。

     まだ、日付の変わる手前の時間。
    LOMからの外出続き、祝われ倒しのパーティ続きでさすがに疲れ果てて、帰り着いた途端眠っていたらしい。同室のおチビちゃんはもうおねむの時間だから、隣からすやすやと気持ちよさそうな寝息が聞こえてくる。

     ……いつもガミガミと口うるさいのは変わらないのに、なんだかんだパーティでは生演奏を披露してくれた。パーティのための準備もみんなで考え尽くしたらしい。その時のことを思い出すとまた胃のあたりがふわりとして、ふふ、と口元につい笑みが浮かぶ。……こんな感覚は初めてかも。らしくないけど、たまにはいいよね。
     自分が上機嫌なのを客観的に感じて面白くなっていく。

     ……でも、なんとなく何か変な感じがする。
    ふわふわの中にお腹が空いたような変な感 5277

    れんこん

    DONEビリーが居なくなってしまった話。
    未来ごりごり捏造しています。
    すっかり慣れ親しんでしまったタワー。
    最早実家よりも馴染んでしまうくらいになったそこでの生活。
    パトロールが終わって、後は眠るだけの時間。
    ……今日は夜から出掛けるのはやめよう。

    昔程は毎日のように夜遊びという無茶はしない。
    まぁ頻度がほんの少し減っただけ。特に大きくも変わらない。相変わらず女の子からの連絡は沢山くるしね、むしろ昔よりさらに増えたくらい。
    理由と言えば、少しだけ明日のヒーロー活動のために睡眠を取らなきゃいけないかな、なんて思った時だけ眠るようにしている。
    今日の理由はほんのちょっと、違うけれど。


    最早見慣れてしまった街でパトロールをしていた。
    ただいつもと変わらないその日常で、今日は背景のひとつだったキャンディショップが目に入った。綺麗にまるで花束みたいにラッピングされたロリポップが明るいオレンジ色のリボンで纏められて。恐らく誰かへのプレゼント用か、ただのディスプレイなのか。わからないけど。
    あの時渡したそれにすごく似ていたな、なんて思ったらぽっかり空いていた穴みたいなものに久しぶりに引き摺り込まれてしまったような感覚に陥った。ずっと、その気持ちにわざと知らぬフリ 4821

    れんこん

    DONEアカデミー時代ベスティ
    出会い捏造のお話です。
    『こんなことも出来ないのか?お兄さんのブラッドはー…』

    『フェイスくん、カッコいい、全部好き!』

    『…ー兄弟なら、お前も優秀なはずじゃねーの?』

    『ねぇ、私と付き合ってよ、』



    頭の中に交互に響くのは自分への否定と肯定の言葉。いろんなものがごちゃ混ぜになった地面のない世界のど真ん中に放り出されたみたいな心地がして、びくりと体を震わせて目が覚める。
    ……うたた寝ってろくな夢を見ない。
    なんとなく蒸し暑くなってきたから、校舎の隅の木陰で横になっていたけれど、失敗した。
    陰で水分を含んだ芝が制服を湿っぽくして、まるで今の俺の状態を仲間と認めて誘ってくるような。……やだな。
    でもそれでもサボっていた授業に戻ろうなんて気も起きなくて。かといって自分と違ってやる気のあるヒーロー志望の子と同室の寮に戻る気だって起きない。
    好きと嫌いの感情のマーブルチョコは今は受け付けられなくて、女の子に会って気晴らしをしようという気にもならない。
    この無駄にただイライラと……いや、しゅんと落ち込んでいくような気持ちを抱いている時間が無駄だというのはわかっている。

    ……こういう時には音楽を聴くのが良い。
    4895

    れんこん

    DONE第二回ベスティ♡ワンライ
    カプ無しベスティ小話
    お題「同級生」
    「はぁ……。」
    「んんん? DJどうしたの?なんだかお疲れじゃない?」

    いつもの談話室でいつも以上に気怠そうにしている色男と出会う。その装いは私服で、この深夜帯……多分つい先ほどまで遊び歩いていたんだろう。その点を揶揄うように指摘すると、自分も同じようなもんでしょ、とため息をつかれて、さすがベスティ!とお決まりのような合言葉を返す。
    今日は情報収集は少し早めに切り上げて帰ってきたつもりが、日付の変わる頃になってしまった。
    別に目の前のベスティと同じ時間帯に鉢合わせるように狙ったつもりは特に無かったけれど、こういう風にタイミングがかち合うのは実は結構昔からのこと。

    「うわ、なんだかお酒くさい?」
    「……やっぱり解る?目の前で女の子達が喧嘩しちゃって……。」
    「それでお酒ひっかけられちゃったの?災難だったネ〜。」

    本当に。迷惑だよね、なんて心底面倒そうに言う男は、実は自分がそのもっともな元凶になる行動や発言をしてしまっているというのに気づいてるのかいないのか。気怠げな風でいて、いつ見ても端正なその容姿と思わせぶりな態度はいつだって人を惹きつけてしまう。
    どうも、愚痴のようにこぼされる 2767

    れんこん

    DONE第13回ベスティワンドロ用
    お題「祈り」「未来」
    未来捏造のベスティ(notカプ)のお話。
     まるで絵の具をこぼしたみたいな真っ青に塗り込められた雲ひとつない空に、正反対のオレンジ色が映える。
     そこそこ強い風にその髪の毛が煽られて、太陽の光を受けてきらりきらりと光った。


    「……いいの?」

     その相変わらず若干細っこい背中に声をかける。
     すると、その肩が少しだけぴくりと動いて、でもこちらを振り返らずに、ただ青い空を見つめたままだった。

    「いいの。」

     ふ、と一息ついたかと思うと、ビリーの手からぽんぽんといつもみたいに花が溢れ出る。赤、青、黄、白、紫、橙……色とりどりの花には共通点もなんにもなくて、ただ持っていた全ての花をそのまますべて出したというのが正しいのかもしれない。
     その花は強い風に吹かれて花弁になって散っていく。その様は、きれいで、そして寂しい。

     彼と出会って何年経ったろう。
    アカデミーの頃まで含めると、多分最早腐れ縁だねと言えてしまうくらいの年月。
     それなのに噂だけでしか知らなかった彼の父親の葬儀に呼ばれたのは少し意外だった。
     元々重病だったのに、余命宣告よりもずっとずっと長生きしてくれたんだヨ、とぽつりぽつりと聞いたことないトーンでビリーが喋 3822

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