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    aoki_log

    @aoki_log 
    一呼吸で読み終わるぐらいの短い話しかかけません。🔥🎴とぱにぐれさん書いてます。
    今はアクナイの炎博が沼

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    雨に打たれる博。
    信頼度200%以上の炎博。博は一応♂だけどどっちでも見える??

    雨、降り注ぐどんよりと重い雲。
    雨足が鉄の床を打ち付け始め、どこかそれが音楽の様に聞こえてくる。
    早く艦内へ入らなければ。
    そう思いながらも足は動かず。
    バイザーに弾けた雫をドクターはぼんやりと見上げていた。
    記憶を失い、なにも覚えていない身。
    過去の己を知る者に出会えば畏怖、憎悪、嫌悪、尊敬、好意・・・・・・実に様々な感情を向けられていた。
    仕方がないと言えば仕方がない。
    仕方がないが、それに思うところが無いかと言えば嘘になる。
    いったい、この身は・・・・・・『過去の自分』は何をしたのか。
    人殺しの機会だと、揶揄られたかと思えば、高名な研究者だと讃えられる。
    一体何が真実で、本当の『私』なのだろうか。

    「・・・・・・」

    フードを払い落し、フェイスガードを取る。
    降り注ぐ雨は冷たく頬を濡らしていく。
    既にジャケットは降り注いだ雨水を含み、ずっしりと身に重くまとわりついている。
    ここで、すべて脱ぎ捨ててしまえば楽になるだろうか。
    出来やしないことを脳裏に浮かべては、直ぐに打ち消す。

    「・・・・・・、いつまでそうしているつもりだ?」

    音もなく。
    ただの作戦指揮ができるだけの脳を持ったヒトが気配など感じ取れるわけもなく。
    いつの間にか背後に佇んでいた黒い影が、空を見上げていた視界に入り込んだ。
    見下ろしてくる燈色の双眸。
    しっとりと濡れた長めの前髪がその顔に張り付いている。
    君こそ、いつから雨に打たれていたんだ。
    そう問いかけようとして開いた唇は、けれどうまく動かず、諦めてそのまま閉ざす。
    だから代わりに、僅かに口端を持ち上げてみせれば、落ちてきたのは苛立ったような舌打ち。
    だというのに、その長身が覗き込んできたことで降り注ぐ雨が少しだけ和らいでいるのは気付かないことにしておく。

    「もう良いだろう。行くぞ」

    半身後ろに下げたが、動く気配がないことに気づいたのか。
    もう一度舌打つと、その長身を屈めて雨に佇んだまま動かない体を片腕で抱き上げた。
    サルカズにとってみれば自分の重みなど片腕で抱えられるのか。
    そんなことを思いながら、抱き上げられた腕の中。
    どうせお互い濡れていないところなどないほどに濡れている。
    それでも、抱き上げられて触れた温もりが心地よく、求めるように身を寄せれば抱える腕が僅かに強張ったような気がした。
    そのまま互いに言葉なく。
    雨音響く艦内を歩いていく。
    体温と、触れ合った肌から聞こえる心音と。
    いつの間にか閉ざしていた瞼に、途中で「まだ寝るなよ」と釘がさされる。
    自ら望んだ行為だったとはいえ、雨に打たれて少し体力が奪われていたようだ。
    このまま、触れる心地よさに微睡みそのまま眠ってしまえたら。
    そんなことを思っていれば、感じていた歩みが止まったようだ。
    電子パネルを操作する音と、エアロックが解除される音が聞こえる。
    その音にゆっくりと閉ざしていた瞼を押し上げれば、ほとんどモノが置かれていない簡素な居住室。
    もっと言えば生活感がほとんど感じられない。
    けれど、ふわりと香る甘いにおいと血のようなさびた鉄のにおいはこの男が存在していることを示している。
    そんなことを考えていれば、靴と靴下はいつのまにか床に転がり、持っていたフェイスガードも奪われ常設されている入口の棚の上。
    重く濡れた音を立ててジャケットが脱がされた。
    あれだけ感じていた重みはなく、そのまま連れ込まれた狭いシャワー付きのバスルームであっという間に残りの衣服を剥ぎ取られる。
    次いで降り注ぎはじめた雨は、ただ優しくあたたかい。

    「エンカク・・・・・・」

    温められたことで冷えて動かなかった唇がようやく緩く動く。
    名を呼べば濡れて更に体に張り付いていたインナーを脱ぎ捨ているところだった。
    もう一度。
    『武器』の名を呼べば、ただ静かな声で「なんだ」と応えがあった。

    「いや・・・・・・うん」
    「用がないのなら呼ぶな」
    「ふふ、ごめん。でも・・・・・・」

    でもきっと、すべてから解き放たれるその瞬間は、この男の手によってもたらされるのだろうな、とそんな予感にただ笑みが漏れる。
    それは近い未来か、それとも遥か遠い時間の先か。
    なんの柵もなく、『ドクター』として終わりただの『ヒト』として解き放たれるその瞬間を。


    ―――その時君は、どんな顔をするのだろうね。


    じんわりと温まった手を伸ばし、エンカクの頬に触れる。
    溜息と共にゆっくりと下りてくる燈色の双眸。
    その双眸に映る自分の顔にまた小さく笑みを漏らせば、そのまま吐息ごとすべて飲み込まれた。


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