hungryおそらく、ドクターが食べれば三分は余裕でかかりそうなウィンナーを挟んだパンが、瞬く間に大きな口に消えていく。
実際、五分ほどかけてゆっくり食べていたのだが、その間にこの男は二つ目を食べ終えるところだ。
夜食にと用意してあったのだが、それに手を出す前になんとか仕事を終えて、今は寝る前の小休憩。
そのまま私室へと戻り、寝支度をして眠ってしまえばいいのだけれど、なんとなく小腹が空いた気がして、先に寛いでいた男を誘って食べ始めたのだが。
「・・・・・・君、いつもはもっときれいに食べるのに」
「・・・・・・、昼から食ってないからな」
「えっ、ほんとうに?どうして?」
「・・・・・・」
僅かに寄せられた眉根。
横目で冷ややかに見つめてくる焔色の双眸に、わけがわからず首を傾げながらエンカクの口端に着いたケチャップを指で拭う。
そういえば、昼前に始めた仕事がなんとなくいい感じに進んで、そのまま流れで残りの仕事に手をつけていたのはドクター自身。
そして本日秘書兼護衛のエンカクもまた、巻き込まれた形でそのまま部屋に缶詰状態だったのを思い出す。
悪いことをしたなぁ、これならば何か摘まめるものを出してあげておくのだった、と。
少しの後悔に意識を沈めていれば、ケチャップを拭っていた手が大きく無骨な手に囚われた。
そのまま、拭ったケチャップの付いた指に、エンカクの舌が触れる。
触れて、なぞって、そのまま口内へ。
音を立てるように吸った指を、鋭い犬歯に甘く食まれる。
ぞくり、と腰を震わす鈍い感覚。
呼び起こされそうな情動を慌てて押し返そうとするが、エンカクは捕えた手を離そうとはしない。
指から手首へと、唇でなぞるように触れながら、そこは凶悪な笑みを浮かべている。
ダメだ、と。
そう振り払いたいのに、手首に触れる唇の感触が、熱が、ドクターの思考をじりじりと焦がしていく。
顔を逸らすことも、逃れることも出来ず、ただ焔色の双眸に射止められたかのように身動きがとれない。
成すがまま引き寄せられ。
「―――腹が、減ったな・・・・・・なぁ『ドクター』?」
艶のある声。
腹をすかせた悪魔は、ただ笑みを深めて、ドクターの身体を逃さぬとばかりに深く抱きよせた。
その大きな口を開けて。
※中途半端だけどここまで