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    せんぽー

    @Senpo122

    🦚🌟載せていくよ!!
    R18のアベ星を猛烈に書きたいっ!!

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    せんぽー

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    アベ星🦚🌟学パロ続き ルート1 第12話

    🌟の実家に挨拶に行く🦚🌟のお話

    #アベンチュリン・タクティックス
    #アベ星
    Avenstelle
    #星(崩壊スターレイル)
    Stelle (Honkai: Star Rail)
    #アベンチュリン(崩壊スターレイル)
    Aventurine (Honkai: Star Rail)

    アベンチュリン・タクティックス ルート1 第12話:娘さんをください! 後編「娘さんを僕にください————」

     イグサであろう自然の香りが広がる畳の大広間。大名が使っていそうな広い座敷の中央に、行儀よく正座する星とアベンチュリン。

    「断る」

     対する彼らの正面にはあぐらをかいて座る組長ヴェルト。その脇に控える丹恒と、にこにこ微笑む姉御姫子。男性陣は鬼のような形相で星たちを見下ろしていた。

    「断じて許可できない」

     威圧的な態度のヴェルト組長。一刀両断するような彼の声が響く。

     おかしい……なぜこんな話になったのだろうか。確か一緒に住んでもいいかと許可をもらいに来ただけだったんだが………。

    「ヴェルトおじちゃん、ごめん。今の話は違う。聞かなかったことにして………ねぇ、アベンチュリン、さっき話した内容と全然違うじゃん。2人で同居させてって言いに来たんだよ?」
    「ああ、そうだった。つい気持ちが早ってしまったよ」

     アベンチュリンはあははっと誤魔化す。この顔、絶対分かって言った顔だ……このまま止めなければ本気で進める気だったのかも。

     仕切り直して、アベンチュリンは頭を下げた。床に頭をつけてしまうぐらい深く深く。土下座のようだった。

    「ヴェルト組長、どうか娘さんと一緒に住まさせてください。家はもちろん僕が用意しますので」
    「断じて許可できない」
    「ええ、俺も組長に同意です。いくらお嬢のお願いであっても許可できません」
    「あら、私はアベンチュリンさんなら任せられると思うけど」

     十中八九反対される———アベンチュリンから同居の提案を受けた時から予想していた。

    「男と同居など許可できない」
    「………」

     分かっていた。組長が簡単には容認してもらえないことぐらい。

     同時に不思議に思う。兄弟である穹は二つ返事で彼女との同居と留学の許可を出していた。

     なぜ自分だけ出してくれないのだろうか。
     自分は穹以上にケンカには強いのに。

     腐ってもヤクザの子ども。もちろん、穹もケンカは一般人と比べて強いが、メンタル面で多少の問題はある。

    『俺ってこんなにかわいいのに、なんで……なんでみんな俺を襲うんだよ!』

     といつも相手を煽って、攻撃されて反撃。穹はいつだって自分が一番かわいいと思っている。可愛い彼女がいながらも、自分が世界一可愛いと思ってる残念な男だった。

     まぁ、彼女は彼女で、穹を可愛いと好いているようだが………。

    「組長、この男は危険です。お嬢がコイツと一緒に住めば、さらに襲われやすくなります」
    「丹恒!」

     アベンチュリンは危険などではない。彼が危機に晒されることはあっても、自分が彼によって危ない目に陥ったことはない。訂正しなければ。

     しかし、星が入り込む余地なく、反対理由を連ねていく丹恒。そして————。

    「襲われるっていうのは敵ではなく“この男に”です」
    「た、丹恒!」
    「………」
    「あら、大学生になるんだから、そういうのはあってもいいんじゃないかしら。同意の上なら、ね?」

     ヴェルト組長は姫子の一言に動揺したのか強く咳き込み、耳まで紅に染めて俯く星。その横でニコニコ笑顔のアベンチュリン。彼を睨みつける丹恒。

     仕切り直すように、ヴェルト組長はコホンと咳き込んだ。

    「姫子が言ったことはひとまず置いておいて………君のことだ。護衛をこちらよりも固くするつもりなのだろう」
    「もちろんです。今も影をつけてますよ」
    「えっ」

     そんなの知らない。影? 忍者?

    「そんなのついていたの?」
    「うん、今も周りを警戒してくれているよ」
    「へぇ、すごい……忍者っていたんだ。フィクションじゃなかったんだね」
    「忍者というより、ボディーガードに近いかもしれないけど、何かあった時に君を守ってくれるよ」
    「へぇ………私を守らなくてもいいけど、面白いから出てきて欲しいな。どんな人なのか見たい」

     アベンチュリンは常に近くにいてくれていると説明してくれたが、周りを探してみても見当たらない。気配を完全に消し去っている。これが忍者のプロか。

     自分を守護してくれるという忍者を見つけようとキョロキョロ。だが、見つけたのは淡い緑の瞳。こちらを真っすぐ見つめてくる丹恒と目が合った。

    「お嬢……同居って本気ですか」
    「うん。丹恒が心配なのは分かるけど、一緒に住みたい。護衛ならついてるみたいだし、アベンチュリンだって私以上に戦うことだってできる。大丈夫でしょ?」
    「それなら俺でもいいじゃないですか」
    「え」

     確かに護衛なら丹恒でも務まるだろう。組員である彼も星と同じぐらいのケンカには強いし、暴れた星を抑えることだって余裕だ。

     過去に姉弟でケンカした時に仲裁していたのも彼。今の今まで星の護衛をしてきた彼なら、組長からも文句はない。

     でも、でも………。

    「丹恒にもう迷惑はかけられない。あんたにだって自分の道があるんだから。もっと自分を大切にして。好きな人だっているでしょう?」

     自分のせいで彼が望む道を潰したくない。丹恒は星より年上でもう結婚してもおかしくない歳だ。

     彼が自分のために尽くしてくれたことに感謝している。今が恩返しの時だ。どうか丹恒にはこれからの自分の人生を考えて欲しい。

    「好きな人、だなんて………」
    「誤魔化さなくていい。何年一緒にいると思ってるの」

     丹恒に相手がいることぐらい分かっている。相手は知らないし、付き合っているのかも分からないが、買い物について来てくれた時には女の物をよくまじまじと見ていた。

    『お嬢………これって女子に人気なんですか? お嬢も好きなんですか?』

     星が持っていたリップを見てそう聞いてきたのをよく覚えている。きっと星の買い物の手伝いをしているふりして、相手のプレゼントでも探していたのだろう。

     でも、そんな遠回しなことはもうしなくていい。素直に相手に想いを伝えて欲しい。

    「今まで私の面倒を見てくれて、守ってくれてありがとう。どうかこれからは自分の人生のために生きて。もし相手がいないのなら、お見合いの調整をするから」
    「それは大丈夫です」

     小さく首を振る丹恒。やっぱり彼には相手がいる。想い人がいるのだ。
     
    「………お嬢、1つ聞いてもいいですか」
    「うん」
    「この男が好きですか」
    「うん、好き」
    「結婚したいほど?」
    「うん。正直、結婚はこの人しか考えられないと思う」
    「そうですか………」

     丹恒からのそれ以上の質問はなかった。黙ったままこちらを見つめる目は今にも泣きそうだった。

    「すみません、親父。俺は退出させてもらいます」
    「ああ、分かった」
    「ありがとうございます。では、姉御、お嬢……失礼します」

     いつもなら組長からの指示がなければ、微動だにせず部屋に居続ける丹恒。しかし、彼から退出を希望し、それを組長がすんなりと受け入れていた。

    「………」
    「丹恒?」

     丹恒は目を合わせてくれることなく、すたすたと歩き退出。組長ははぁと深い溜息をつき、姫子は少し悲し気な笑顔を浮かべていた。

    「星、君のお願いは変わらないか?」
    「うん、絶対に変わらない。許可してもらえないのなら、黙って家出するから」

     この思いがもう変わることはない。

    「分かった……仕方ないが、許可をしよう。だが、1度でも怪我をするようなことがあれば、家に戻ってもらう。星に限らず、アベンチュリンくん、君もだ」
    「僕もですか……自分も守れないやつには彼女を守る資格もないと?」
    「ああ、そうだ」

     アベンチュリンは自分を犠牲にしがちだ。組長からそう言ってもらえるとありがたかった。

    「それと……」
    「それと……?」

     ことんと首を傾げ、ヴェルトの言葉を待つ。そんな星を見てふっとヴェルトは笑みを漏らした。

    「たまにはこっちに帰ってきてくれ……2人ともな」
    「うん、分かった」

     そうして、組長から許可を貰うと、星とアベンチュリンは自室へと戻っていく。

    「嬉しいな………星と一緒に暮らせると思うと、夢じゃないのかって疑いそうになる」

     遠くを見ながらアベンチュリンは呟く。そんな彼の頬を星はつねった。

    「夢じゃないよ」
    「そうみたいだね」

     つねられた彼の顔はお餅のようにびよーんと伸びているが、その状態で笑っていても可愛い。卑怯だ。

    「星を毎日愛せると思うと幸せになれる」
    「愛せるって……あ、そういうこと。毎日はダメだよ。死んじゃう」
    「死にはしないよ。記憶が飛ばさせてしまうかもしれないけれど」

     さぁーと風が吹き、中庭に竹葉が揺れ面する回廊を歩いていく。その途中でふと丹恒の部屋が見えた。

     やはり丹恒が気がかりだ。特に出ていく時のあの様子が引っかかる………。

    「アベンチュリン」
    「ああ、行っておいで」
    「ありがとう」

     アベンチュリンに見送られ、星は廊下を風を切るように駆け、丹恒の部屋へと走る。自分は必要ないと思ったのだろう、アベンチュリンがついてくることはなく、星は1人丹恒の部屋の襖をそっと開けた。

    「丹恒……?」

     彼の部屋は無人。布団が一枚敷いてあるだけ。人の気配はなかった。

     別の場所にいる……屋敷の中で自室以外に丹恒がいる場所といえば………。

     幼い頃から一緒に過ごしてきたんだ丹恒のことぐらい知っている。星はいつも彼がいる場所へと向かった。

     彼女が向かったのは道場。檜の香り、小さな窓から差し込む光芒———そして、袴を着て1人正座していた丹恒。彼の横には竹刀が置かれてあった。

    「お嬢、どうしたんですか。あの男と行くのではなかったのですか」
    「丹恒と少し話をしたくって」
    「………忙しいので後にしてください」

     星はそれでも動かない。ここで立ち去ったら、ダメなような気がする。

     彼がもう一生本音を話してくれない。
     そう思えて———。

    「幸せになってください、お嬢」
    「なんか私結婚するみたいだね」
    「…………同居ってそれ前提だと思うぞ」
    「ふふっ、いつもの丹恒に戻ってくれた。丹恒って敬語は似合わないね」
    「………」

     丹恒は顔を向けてくれない。大きな背中を見せたまま。2人の間に沈黙の時間が流れる。

    「お嬢………いや、星。俺が今引き留めたら、とどまってくれるか?」
    「………」

     もしかしたら、と思っていた。でも、丹恒の気持ちには答えられない。

    「………ごめん。できない」
    「ああ、分かってた」
    「ごめん」
    「お前が謝ることはない。変なことを言った俺が悪かった。忘れてくれ」
    「うん………」

     ちらりとこちらを見てくる丹恒。その瞳は笑っていた。

    「もしあの男が嫌になったら、俺がいるので。いつでも帰ってきてください」
    「うん、ありがとう」

     彼の口調が敬語に戻る。組長の孫娘と1人の組員の関係に戻る。
     星は背中を向ける丹恒に、もう一度「ありがとう」と残すと、道場を去っていった。



     ★★★★★★★★



     残された組長と姫子の間に一時沈黙が続く。先に口を開いたのは姫子だった。

    「ねぇ、ヴェルト。今日は丹恒とご飯に行ってらっしゃいな」
    「ああ」

     2人は気づいていた。丹恒があんなにも頑なに同居を反対する真意に。あれだけ星のことを大切に思っているのだ、気づかないはずがなかった。

     でも、今回のことで丹恒は落ち込んでいるだろう。強がっていても、そのくらいのことは分かる。

     いくらでも話を聞こう、いや話さなくてもいい、たくさん食べさせてあげようと組長は考えていた。

    「なぁ、姫子」
    「何かしら?」
    「星は立派になったな」

     どこぞの不良共とケンカをすることは多く、生活も不規則。もしかしたら、反抗的な不良娘になるのかもと心配していたが、あの男と付き合い始めてからはガラリと変わった。

     勉強に励み、大学に合格し、彼氏を連れて同居したいと強く主張。あの世界の全てがどうでもいいと思っていそうな星が、自分に主張してきたのだ。感動しないはずがない。

     正直あの男に星を渡すのは嫌だったが、これも星が選んだ道。ちょっと意地悪をしてしまったが、これからは彼女をそっと応援しよう。

     ヴェルト組長はそう決意し、そっと目を閉じた。

    「そうね………って、あら?」

     日の光が静かに差し込む畳の部屋に鼻をすする音が響く。組長の眼鏡は床に置かれていた。

    「やっぱり寂しいな………」

     消え入るような小さな声で呟くヴェルト。決して姫子に顔を見せない。背中だけを向けて肩を震わせていた。

    「………ちょっと花粉症の薬を飲み忘れてしまってな」
    「うふふっ……そうだったのね。薬持ってこようかしら」
    「いや、まだいい」

     ヴェルトと姫子は桜舞い散る中庭を静かに眺める。小鳥たちが戯れる声が聞こえてくる。

     枝上で恋人のように寄り添っていた2匹の小鳥たち。小さいながらも翼を大きく広げ、2匹ともに大きな空へと飛び立っていった。
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