ホテルマンのTさんの話宿泊人数を増やした入間一行を案内したホール。
その一角にはごく自然にパーテーションが仕切られている。
その席にも他の席と同じように料理や飲み物が用意されていた。
不思議と少しずつ量が減っていたが、主に入間の無尽蔵な食の進みと賑やかな団体客にかかりきりで支配人や従業員はその変化に気がつかない。
ただ、伝説の一流ホテルマンを除いて。
「お楽しみのところ失礼します。お客様、本日は入間様ご一行様との団体様とのことで、急きょこのようなお席を設けさせていただきましたがいかがでしょうか」
「……。……え、まさか、僕に話してるの?」
ホテルマンの田中はパーテーション内でお菓子が浮いている方へ話しかけた。
認識されている上に話しかけられるとは思わず動揺して取り落としそうになったお菓子は浮いたまま上下していた。
「はい。大変お恥ずかしながら当ホテルは支配人、従業員一同に至らない点がございまして、お客様に対しての配慮が至らず申し訳ございません」
「い、いや、気づかれないのは僕がこういう家なのと性分なので、放って置かれても別に落ち着くというか……」
「そうでございましたか」
ホテルマンから話しかけられたらそれに答えないわけにはいかず、プルソンは認識阻害を解いて姿を現した。
「むしろ、気づかれてると思わなかったんでこっちに居たんですけど」
「ホテルマンですから」
「……」
専用の魔具を使わずに認識阻害を見破れるなんてホテルマンってすごいんだなとプルソンは思った。