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    haruru36

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    haruru36

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    碇くんの恋人、とりあえず冒頭部分のみ。
    前編はまだ続きます!

    #貞シンレイ
    teishinRay

    碇くんの恋人 冒頭部分ザクッ ザクッ……

    辺り一面の、白銀の世界。
    誰も踏み込んだ形跡のない白い大地に、僕の足跡だけが残っていく。

    ———

    高校入試のための上京。
    試験自体はなんとか終えることができ、時間もあったので街を散策することにした。

    明城学院付属には寮がある。
    親戚の家を出てここで寮暮らしをする様子を想像しながら、雪の降る街を歩いた。

    この都市には、いつからあるのかもわからない遺跡がある。
    学者の研究でもその詳細は解明できていないらしい。

    都心からさほど離れていないところに、その遺跡はあった。
    地面に刺さっているようにも、地面から生えているようにも見える、十字型の不思議なオブジェ。
    何故か心がざわついた。

    遺跡を横切り少し歩くと、大きなクレーターのある場所に辿り着いた。
    この穴は地理の教科書で見たことがある。
    ただ街を抉るような形状をしており、はるか昔に形成されたものではないようで、その理由も解明されていないらしい。

    ――嫌な気分だ。
    僕はこの場所を知らない筈なのに。

    もう帰ろう、と思い最後にもう一度だけクレーターの方に目をやると、穴の手前に何かが落ちていることに気付いた。
    誰かが歩いてきて落とした形跡もないのに、どうしてあんなところに。

    近付いてその落とし物を確認する。

    「人形?」

    僕は小さな人型をしたそれを拾い上げた。
    人形にしては――柔らかい。

    「なんだこれ」

    どう見ても「ヒト」がそのまま小さくなったような、女の子の形をした何か。
    大きさは20cmくらいだろうか。
    青みのかかった銀の短い髪に、雪と同化してしまいそうな程に白い肌をしていた。
    身体には白い薄手のワンピースを纏っている。

    付いていた雪を払い、身につけていた手袋を外して直にその人形を手に取った。

    ――ほんのりあたたかい。
    僕の手よりは冷たいが、無機質な人形とは違うぬくもりを感じた。
    そして驚いたことに……息をしている。

    「生きてる……?」

    「ん……」

    「!」

    僕の言葉に反応したのか、その小さな存在が瞼を開けた。
    宝石のような、真っ赤な瞳。

    そして僕の方を見た瞬間、その双玉を更に大きく見開いた。

    「碇、くん……?」

    「えっ、なんで僕の名前……」

    「碇くん……!」

    「うわっ」

    突然掌の上からふわっと浮いたかと思うと、僕の顔に縋り付いてきた。

    「よかった……還ってきてくれた……」

    「えっ……?」

    先程はなかった、光る4枚の羽根が見える。
    状況が飲み込めないが、この子はヒトではない何か……妖精のような存在なのだろうか。
    そして、何故か僕の名前を知っている。

    「ごめん、あの……君は何? なんで僕のこと知ってるの?」

    その言葉を聞いて、妖精は僕の頬からバッと身を引き、少し離れたところに浮遊した。
    ……とても、悲しそうな表情で。

    「そう……私のこと、覚えてないのね」

    「……どこかで会ったことある?」

    「……」

    紅い瞳から、ぽろっと雫がこぼれ落ちた。

    ズキッ
    「っ……」

    突然、頭に痛みが走った。

    オレンジ色の水の中。血の匂い。身体に走る激痛。
    心を掻き乱される痛み。そして――白い光。

    脳内を流れる、断片的なイメージ。
    ――これは僕の記憶? 僕は何かを忘れている?

    「思い出して。私のこと……」

    妖精は僕の手を取ると、指先を両手で包んで額にすり寄せた。
    身体が光り出し、羽根が伸びて……6対の翼を形成する。

    この光景を僕はどこかで……

    「うわっ」

    僕の身体も光に包まれると同時に、何かが一気に流れ込んできた。

    「うわああああ!!」

    鮮明な記憶。
    視覚も、痛みも、感情も、全てを。

    ――そして、心を通わせた少女のことも。


    「……あや、なみ……?」

    「碇くん……よかっ、た……」

    「綾波!!」

    彼女の身体から光が消え、羽根が消滅すると同時に浮力を失う。
    地面に落ちるすんでのところで、両の掌に受け止めた。

    「綾波! 綾波ーッ!!」


    つづく
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