ライハルでdom/sub(セーフワードの話)「ハルマ、……stay」
突然、動きを制限される。
どうしたんだろう。
「え…。な、何」
「嫌だったら、止めてくれ」
止める?
考えている間に、ライトの顔が近づく。
「う、ん?…ん…っ……!や…、本当に、何っしょ…」
急に、キスをされた。だいたいされる時はお伺いをたてられたのに。今日はなんだか…様子が変。口数も少ないように感じる。
「っ!」
そのままベッドに押し倒されてしまった。…プレイでもするの、かな。
……いつもより、少し、こわい。
何か……言ってほしい。
「…ら、ライト…何か、言え…しょ、」
「ハルマ」
「な、何?」
「…セーフワードは?」
(…セーフワード?)
「な、なんで…?」
「ハルマ」
(今、は…必要あるのか?)
「んんっ…!ん…っ……は…、ぁ……ちょ、ちょっと…。ぁ…。…んっ…!…や…っ、…ま……、!」
また、キスされる。いつもより何か…激しい。口を塞がれる勢いだ。それでも、いつもと変わらない優しさは、感じる。
でも、思わずセーフワードを口にするところだった。
「止めていいんだ。言ってくれ」
「…、…っ…!」
首を横に振って拒否を示す。いま…は、言う時じゃない。
それだけは何となくわかる。
「…どうして、言わないんだ? 」
「、どう……って…」
こいつは、ただ俺にセーフワードを言わせたい、だけ…?
「最近、上手くspaceに入れていないだろう?…心配なんだ」
確かに最近、spaceに入る頻度が少なくなってる気がする。…いや、原因は知ってる。spaceにうまく入れないのも事実だ。でもspaceに入れないから…といって、不調になるかと言ったらそういうわけじゃない。
ただ感情の行き場がなくなるだけで。嬉しくてふわふわするのを少しの間。ほんのちょっと苦しくなるけど、それを我慢するのだ。ライトにはコマンドを使ってほしいから。
でも………心配?
…俺のため?
「……お前、やっぱりムカつくっしょ」
「えぇっ」
「それに、……俺は…、お前にされて嫌なこと…は、多分ねぇっしょ…。お前がしたいなら、してやる」
「……っ!……お前…、それは俺に委ね過ぎだ。もう……」
だって、本当のことだから。
というより、今までで嫌なこと……は特にない。さっきセーフワードは言いかけたけど、事情が分からなかったから。
それに、恥ずかしいことではあったけど、脱がされておいて今更…なような気も。あれ以上に恥ずかしいことは、ないと思う。
それを指摘すれば、ライトは途端にしゅんとする。
「それは……………すまん…。」
stripのコマンドをさせたことは、こいつもかなり反省しているらしい。ある意味黒歴史的な扱いになっている。
あれでも俺も頑張ってやったつもりなので、まあまあ複雑な思いだが。でも、あれは確かに"やり遂げてできたこと"だ。恥ずかしい思いをしたけど……、嫌だったかどうか、と言われたら。それはノーだと思ってる。
「さっきは、その…ちょっと怖かった」
「わ、悪かった…。すまない…」
「…ん」
「?」
「な・で・て!」
うーん。
こいつの安定をはかるためにコマンドを使って欲しかった。だけど、俺がセーフワードを口にすることは 、ライトにもダメージがあるのだ。それは本末転倒というか。本意ではない。
spaceに入れないことを心配しているなら、俺もライトのためだから、と我慢をしてはいけないということだ。
セーフワードを言わせたいようだったけど、無理に口を割らせることはしない。そういうところが…こいつらしいというか。
自分の限界を見極めてdomに伝えることはsubとしての義務だと思う。声を上げなければ、伝わらない。俺からライトに伝えなくてはいけない事だ。それに、伝えないのはさすがに誠意がなかったかもしれない。
―――無理をしてほしくない
いつもそう言っていたな。
無理をしてるつもりはなかったけど。俺が不調になることは「ライトが心配する」ということを、正しく理解しないといけない。"無理をしない"とは、そういうことなんだ。
……俺がライトの事を、心配するのと同じ。
ライトは俺が嫌がるようなことはしない。というより、そもそもされたことがないから…。されて嫌なことが思いつかない。
まあ……、恥ずかしい、ということはさておき。ライトにだったら別に…。されても構わない気がする。
(あれ…、それが駄目なのか?)
……あ。強いて言うなら。
「お前にされて、嫌なことはねぇけど……。今日みたいなのは嫌っしょ。ちゃんと言えよ」
「え。……言ってなかったか?」
「!?………き、きいてねぇっしょ…!バカ!」
「!!…す…すまん……………」
言ったつもりだったのかよ!聞いてねぇよ、一言も!!
そんなに落ち込むなよ、もう!