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    rabimomo

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    rabimomo

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    エリート月と大学生鯉の続きです。
    前作読んでいないとまるで話が繋がらないと思いますので、お読みいただける方は1からお願い致します!

    以下の要素を含みます
    ・かっこいい月島の少しかっこ悪い話
    ・香りづけ程度のすれ違い(不穏な要素は0)
    ・最初から最後まで安心安全の両思い
    ・月鯉肉体関係ありが前提(性描写なし)

    #月鯉
    Tsukishima/Koito

    ②エリートリーマン月×大学生鯉 ――そこから、三月ほど。
     月島との交際は、順調だった。セックスも、数回に渡る触れ合いや指による慣らしを経て、交際ひと月を数える前に月島を受け入れることが出来た。一度身体を許せば冷たくなるということもなく、月島は相変わらず紳士な態度を一切崩すことがなかった。甲斐甲斐しいほどに、何もかもを完璧に手配する、理想の恋人そのものだ。女性誌の特集では、最上級の彼氏の振る舞いだとされるに違いない。
     そう、月島は完璧な恋人だった。百点満点中の二百点でもおかしくないほどに、何もかもが出来すぎていっそ現実味がないほどに完璧だった。愛されているというくすぐったさを感じると同時に、焦燥を覚えるほどに。
     月島の職場はいわゆるブラックではないが、大企業で相応の立場にある月島は責任を負う立場であり激務であることには変わりがない。その合間を縫って鯉登との時間を捻出してくれている。どれほど短い逢瀬であろうと、適当な場所で適当に過ごすことなど一切せず、食事はそれなりのクラスの場所に連れて行かれ、身体を重ねる時には必ず相応のホテルを押さえてくれ、遅い時間の帰宅になる場合にはタクシーを手配してくれた。鯉登とて裕福な家庭に育っているが、これは世の中の標準とは言い難いのだとは理解している。もっとも月島自身は、世の中の標準から随分と上に外れた収入を得ているのだとは知っていたが、それにしても過剰な扱いではないかと心配になるのだった。
     何よりも、月島はあまりにもスマートだった。常に余裕を持って鯉登に接しており、その成熟した大人としての態度にときめきを得ながらも、自分ばかりが心を動かされているのではないかと不安にもなる。鯉登以外の誰かと会っているような気配はないが、現実感がなさすぎれば不安にもなる。本当は既婚者なのではないか、もしくは一緒に暮らす本命がいるのではないか――馬鹿馬鹿しいとは思えども、どうしても心の片隅に引っかかる不安を取り除けないでいる。
     何より、月島は決して家に招いてくれないのだった。
     鯉登の家には来る、実家にも顔を出す、今度の長期休みには旅行に行く計画も立てている。けれど月島の家は「手狭なので」と頑なに来訪をさせて貰えずにいる。月島の謙遜は、いつも大袈裟であり実際にはそうではないのだから、口では手狭だと言いつつそうでもないに違いない。けれどもし、妻子や同棲相手や隠し子がいれば――それは鯉登に見つかるわけにはいかないと、遠ざけようとするのは自然だ。
     最寄駅はどうにか聞き出すことが出来たため、いっそ張り込みでもしてみようか。いや、さすがに鯉登が動けば見つかる可能性がある。誰か別の人に頼んでみようか。そんなことを思いついてしまうくらいには、不安を消せずにいたのだった。



     鯉登は白石というフリーターの男から受け取ったメモとスマートフォンのマップアプリを頼りに、馴染みのない街を彷徨っていた。
     白石は、高校時代の同級生である杉元がバイト先で仲良くなった相手だ。杉元も高校から柔道の特待生で入ってきたため、小学校や中学校から通っている連中とは少し毛色が違い、けれどそこが新鮮で付き合いは楽しい。杉元も含めて、食事や飲みを幾度か奢る約束で突き止めた月島の住処に、罪悪感を覚える。
     これではまるでストーカーだ。しかしもし、月島に本命がいたら。隠された婚姻関係の女性や子供がいたりしたら。不安に駆られる鯉登は、結局引き返すことも出来ずに見知らぬ街を彷徨っている。今日は日曜日で、お互い家でゆっくりする話になっている。月島は在宅しているはずだ。
     月島のことだから、てっきり駅近のマンションにでも住んでいるのかと思っていたが、意外に駅から離れた場所に住んでいるらしい。奥まった道は住宅街に入り込んでおり、一人暮らしに適した物件があるようにはとても見えない街並みに――やはり家族と住んでいるのではないかと、胸に冷たいものが流れ込む。兄と同世代の月島は、三十も半ばだ。結婚していたところで不思議ではないし、交際を始める前はただの家庭教師、元家庭教師に過ぎなかった。鯉登が月島の結婚式に呼ばれるはずもなく、プライベートを知らなかったのだとしても不思議はない。
    「あ……」
     けれどようやく、メモの建物に行き着いた鯉登は、短く息を飲んだ。そこに建つのは、小さなアパートのような建物だった。築何十年なのかも想像のつかないような建屋は、あまりにも普段の月島のイメージからはかけ離れている。けれど周りを見回してみても他にそれらしい建物はなく、鯉登は恐る恐る備え付けのドアベルを押してみた。
     はーい、と、奥から聞き覚えのある声がどこか間延びしたように響いて、心臓が跳ねた。息を殺す鯉登の眼前で、玄関扉が開け放たれ――出てきた男が一瞬固まった、次の瞬間バタンと大きな音を立てて扉が閉ざされた。
    「つ、つきしま!」
    「ちがっ、違います! 人違いです、帰って下さい!」
     間髪入れず、扉の向こう側から大きな声が響いた。その声を、聞き間違えるはずなどない。そもそも今し方視界に入ったその顔は、紛れもなく月島だった。その服装が、見たこともないくたびれたスウェットだったとしても、見間違えるはずもない。
    「開けろ、月島ぁ! 開けてくれ!」
     声を張り上げ、二度三度と扉を乱暴に叩けば、慌てたような顔の月島が顔を出した。入れますから、静かにして下さい。そう告げた月島は、目に見えて狼狽したような表情をしていた。
    「……すみません。引っ越します、今すぐ」
     鯉登を招き入れ、玄関扉を閉ざした月島は、開口一番に溜息と共に吐き捨てた。
    「な、ないごて?」
    「二、三週間くらいホテル暮らしでもなんとかなりますから。その間に部屋を探します、あなたがいても大丈夫そうな――そうですね、駅前の築浅のマンションの上階を探しますんで」
    「は、つきしま?」
    「あーさっさと引っ越しておけば良かった、せめて奨学金が終わった時にでも引っ越しておけば良かったんだ」
     月島は床に乱暴に腰を下ろすと、頭を抱え込みながら大きく息をついた。四畳半程度の空間には家具と呼べるようなものはほとんどなく、小さな座卓と本棚がある程度だ。ベッドもなく、おそらく布団と衣類は押し入れの中に収納されているのだろう。
     初めて見た月島のプライベートな空間は、けれど驚きが落ち着いてくればじわじわと愛おしさを感じ始めていた。一分の隙なく整えられた月島の、人には見えない脆さがここには存在していた。完璧ではないのかも知れないと、そんな部分に安堵と愛おしさを覚えるのだった。
    「すみません、俺、かっこ悪いですよね。あなたには、かっこいいと思っていて貰いたかったんですが……」
     小さく呟かれた月島の言葉に、じわりと胸へと暖かいものが走った。鯉登から見た月島は完璧だった、出来る大人の男だった、常にスマートで洗練されており鯉登の憧れた相手だった。けれどそれは、月島が意識してそうあろうと振る舞っていたのだ。好いた相手の、鯉登の、気を惹き喜ばせようと、ひたむきな愛情でそう振る舞っていた。
     気がつけば、鯉登はまるまった月島の背に腕を回し、力一杯に抱きしめていた。愛おしい、その感情ばかりが胸を満たす。
    「かっこ悪くなんてなかよ。どんな月島でも好いちょ、だから月島んこと、もっと教えて?」
     月島のたくましい身体に回した両腕に力を込めると、はあ、と、小さく溜息が漏れた。

    「俺の家は、貧乏な母子家庭だったんです」
     月島の父親は、ろくでもない男だったらしい。まだ月島がごく幼い頃に、母親は月島を連れて逃げ出しているため、あまり詳しいことはわからないらしいが。
     父親から逃れて、母一人子一人の生活だった。家は貧しく、周りの子供のように玩具やゲームを買ってもらえるわけではない。母親は一生懸命働いてくれたが、シングルマザーではたいした仕事に就けずに収入は低かった。仕方がないのだと、諦めるだけの分別は身についていた。玩具もゲームも余剰の金がなければ買うことが出来ないものだ。
     けれど義務教育だけは無償で受けることが出来たのだった。義務教育は教科書も無償配布され、裕福な家庭にも極貧の家庭にも教科書だけは平等に存在していた。電気代が不安で、テレビすらつけることを躊躇しても、教科書を開くのはタダだった。図書館に行けば、光熱費すら浮かせることが出来たのだった。
    「貧乏でしたが、母親は俺を懸命に育ててくれました。だから、勉強をして良い成績を取れば喜んでくれた。勉強することを止められることはなかった。父親と離婚をしていなければ、もう少し生活に余裕があったのかもしれないけれど、ろくでもない親は子供が勉強することすら邪魔をすると聞きましたから、そういう意味では別れていてくれていて良かったのだと思います」
     気がつけば、中学の成績は学年トップだった。教師と母親に勧められるがままに、地域で一番偏差値の高い公立高校を受験し、入学した。奨学金を借り、アルバイトをし、大学も国立ならばなんとかやっていけるからと受験をした。母親も、何とかするから大学に進学しなさいと後押ししてくれた。
    「卒業して、今の会社に就職するために上京しましたが、奨学金の返済もありましたし、敷金や保証料、引っ越し代を考えれば、あまりいい部屋に住めなくて――それで、ここを借りました。学生時代は、もっとひどいところに住んでいたので、ここでも充分だと思っていたのですが……」
     卒業して十年以上も経つのだから、引っ越しても良かったんですよね、と、こぼした月島に、鯉登は回した腕にさらに力を込めた。
    「月島が困っていないのなら、引っ越す必要はないだろう?」
    「困ってますよ、今!」
     間髪入れずの大声に、鯉登はぽかんと月島を見た。慌てたようにすみませんと口走る月島は、見たこともないほど感情を剥き出しにしており、思わず短く刈り込まれた月島の頭を撫で回していた。
    「俺は、あなたに相応しい男になりたかった。服も、あなたの家に出入りするようになった時に、部屋着と下着以外は全部買い替えた。下着だって、あなたが恋人になってくれた後で全部買い替えたのに。引っ越しを忘れていたのは盲点でした」
     月島の言葉に、家庭教師として二度目に鯉登の家を訪れた月島のことを思い出した。その前週、つまり初めて訪れた日には月島はスーツを身につけていた。家庭教師として訪問するのにそれでは堅苦しいからと私服にして貰ったが、その日は鯉登も気に入っているブランドの新作を綺麗に着こなしていたので、印象に残っていたのだが――つまりあの服は、初めて訪れたあの日から一週間足らずの間に買い揃えられたものだったのだろうか。
    「月島ぁ。私に相応しい男って、どんな男なんだ?」
    「そんなの、仕事が出来て収入があって、あなたの隣を歩くのに値するようないいものを身につけていて、あなたに恥をかかせないようなデートが出来て、こんなボロアパートではなく綺麗なタワーマンションとかに住んでいる男に決まってます」
     一度言葉を切る月島は、見たこともないほどに眉尻を下げながらも、真っ直ぐに鯉登の顔を見つめていた。
    「好きなんです、あなたのことが。どうしようもなく好きです。こんなに綺麗で育ちのいい人が、俺みたいな育ちの男の隣にいてくれるんですから、せめてきちんとしていたかったんです」
     いつも余裕のある振る舞いをしている月島の、あまりにも余裕を失した様が愛おしかった。衝動的に唇を重ねれば、月島の瞳が大きく見開かれた。
    「鯉登さん……幻滅してませんか?」
    「どうしてだ? どんな月島でも好きだと、言っただろう?」
     見た目や洗練された振る舞いは、確かに月島を構成する一つの要素ではあるが、そこだけに惹かれているわけではない。第一印象にはある程度は作用していただろうが、今では月島の優しさや誠実さ、物の見方や考え方の方がずっと鯉登の心を惹きつけている。古くて狭いアパートに住んでいるからとて、その価値は変わらないはずだ。
    「月島が嫌ではなければ、私は引っ越して欲しくないな……」
    「……は? 鯉登さん、なんで……」
    「だってこの部屋ならば、私以外の男や女を連れ込めそうもないだろう?」
     月島はかっこいいから、ずっと心配だった。
     封じ込めていた本音を漏らせば、月島の瞳は細められた。てのひらで頬を包まれ、額同士が触れ合った。
    「……なんですか、それ。俺はここ五年の間、ずっとあなたに夢中で、あなた以外の誰も視界に入ってませんでしたよ」
    「でもずっと不安だったんだ。月島は大人で、かっこ良くて、きちんとしているから。私みたいな子供のことは本気ではないかもしれない、他にもいい人がいるのかもしれないって、不安だったんだ」
     鯉登こそ、月島の持つ大人の男の魅力を前に、彼に相応しい相手ではないのかもしれないともう長いこと尻込みしていた。互いに斯様な不安を抱え持っていたのかと知れば、脱力すると同時に妙におかしく思えてきたのだった。
    「なあ月島、私は別に高級品以外は好きではないわけではないぞ? 杉元や白石とはファミリーレストランにも行くし、ハンバーガーや牛丼だって食べるし、居酒屋にも行く。そういうところで食べるのも楽しい。どこで過ごすかよりも、誰と過ごすかの方が大事だし、相手に楽しい時間を過ごして貰おうとする気持ちの方がもっと大事だと思っている」
    「……ですが。それは、俺がそうしたかっただけですので……」
     『恋人』とのデートには、一切手を抜きたくないのだと言わんばかりの月島の行いも、紛れもなく愛情なのだろう。遊び慣れているのかと思うほどに完璧すぎる振る舞いも、世間一般のイメージする模範的な彼氏の姿を頑なになぞろうとする月島のひたむきな愛情だったのだと知れば、疑念を抱いていたことすら恥ずかしく思えた。
     この男は、何事も器用に卒なくこなすように見えて、不器用なほどに真っ直ぐなのだろう。
    「私たちには、もう少しお互いに自然体で付き合うことも必要かもしれないな」
     数秒の間、月島は無言だった。逡巡するように視線を動かしたその後で、そうかもしれませんと小さく呟いた。
    「年下のあなたに教えられるまで気づかないなんて、情けないですが。俺はずっと、先走り過ぎていたのかもしれません」
     いちいち自虐めいた言葉を差し込む様に、鯉登はどこかくすぐったささえ覚えていた。学力も仕事も経済力も最上級の出来る男が、鍛え抜かれた筋肉質な身体もあわせて男としても雄としても誰にも引けを取らないであろう恋人が、いつでも背筋を伸ばし堂々と歩いている月島が、弱さや情けない面を見せてくれるのは嬉しい。そんな言い方するなと唇を尖らせてみたが、それはホテルの上階から見つめる綺麗な夜景よりもきらきらと鯉登の胸の内に降り積もっていった。
    「わかりました、ここでも不自由はないので、引っ越しはしばらくしないでおきます。その代わり、ここを引き払う時はあなたと一緒に暮らしたい。ダメですか?」
     月島の両手が、鯉登のそれに重ねられ、互いの吐息が触れる距離で見つめた瞳の真摯さに息が止まりそうになる。
     一番欲しい言葉を与えてくれる時の喜びに、場所など関係なかった。ホテルの最上階のバーであろうとも、狭く殺風景な部屋の中であろうとも、等しく嬉しいのだと――無我夢中に頷く鯉登は改めて思い知らされたのだった。
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    kyosato_23

    MAIKING子供の頃に女の子の服を着て近所の子の性癖をおかしくさせていた少尉の話です(書きかけ)
    推しが子供の頃に好奇心などで女の子の服を着て周囲の男の初恋泥棒になるのが性癖です
    月鯉ですが幼少時代モブから好かれている描写あり。
    金塊争奪戦後設定のある種生存ifですが、中尉や師団に関する話は出てきません(パパは原作の現状通り亡くなった前提で書いています)
    菫の花の君




    月島は函館の鯉登邸に足を踏み入れるのはこれが初めてだった。
    全てが終わってから初めて迎える年の瀬、故郷に帰らないのならば自分の家へ来いと鯉登に半ば引きずられるように連れて来られたのだ。
    月島は当初は遠慮したが、お前と私の仲なのだから家に来るくらいはいいだろうと拗ねられてしまうと弱かった。
    先の戦で夫を失った母親が心配なのも大きいのだろう。人数が多い方が賑やかで良いと白い息を吐く横顔に僅かな憂いが滲んでいた。
    鯉登邸で月島は歓迎された。服喪であるからと大々的な新年の祝いの料理はなかったが、それでも鯉登家のささやかな料理というのは月島にとっては大層立派な膳である。
    十分に礼を尽くして出された食事を平げ、鯉登やその母親と歓談したり近くを散策したりと緩やかに時間は過ぎた。
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