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酒が飲みたいから酒場に行こうとリアンが言い出したとき、シーナは思わず言葉に詰まった。
都市同盟やハイランドでは成人は十五歳、旧赤月帝国、現トラン共和国を基準にすると十六歳。幼い印章を与える顔立ちとは裏腹にリアンはああ見えて大手を振って飲酒が出来る年齢だ。
既に半年近くこの城で過ごしているが、シーナは今までリアンが祝辞以外で酒を飲んでいるところを見たことがなかった。それはナナミが頑なに許していないのも理由の一つではあるが、リアンが誰よりも諦めが悪く頑固であるのを知っているのもまたナナミでもある。飲酒を強く望めば最終的に彼女は折れる。そういった姿を見ていないのは、元々リアンは酒を求めてはいないからだった。
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