飴のように甘い 雛森の誕生日を祝うために休憩時間を利用して五番隊舎の執務室を訪れた日番谷。そこに雛森の姿はなかったが、居場所は平子が揶揄うことなく教えてくれた。
「桃ならあっちの木陰や」
怠そうに指で示されたのは図書館の方角。執務室にいなければ図書館あたりと目星はつけていたからおおよその予想通りではある。教えてくれた平子へと軽い相槌と感謝の言葉を伝えればニヤニヤとした目線だけが追ってきた。それを無視し執務室を後にして日番谷は五番図書館の木陰を目指す。
平子が雛森を名前で呼ぶことが、初めは幾らか引っかかっていた。
桃、と与えられた愛らしいその名を呼ぶ者は、平子が現れるまで雛森の周りにはいなかった。かつては日番谷もそう呼んでいたはずのその呼び方は──懐かしいようで、少しばかり悔しいようで。羨ましいような気さえして。
3666